↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノアの生贄  作者: 清田ココ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/9

第一章_4話


「星が降りそう、もう寒いもんね…

 空気が澄んでる感じがする」


「……そうだな」


簡易的に薪木を組み、

焚き火を挟みノアと俺は対面で

小屋から持ち出した木製の椅子に座っている。


ノアは夜空を見上げ、

湯気がゆらぐ温かいハーブ茶を飲んでいる。

珍しくおとなしい。


焚き火で焼いた木の実の粉から焼いた薄生地に、

干し肉と酸味のある実の汁に付けた野菜を挟み、

お互いに無言のまま食事を摂り始めた。


野菜や木の実、肉を食せるようになった俺は

この数日間でかなり健康になったように思う。

元来ノワール族の恩恵のため丈夫なつくりでは

あったが、衰弱していた身体は喜ぶように

栄養をとり、血肉を増やした。

それもこれも、ノアの常備食材や看病のおかげだ。


食事や洗濯、湯浴みにハーブを用いて

手作りの石鹸や薬油など、おおよそ10歳とは

思えない生活の知恵や知識量だった。




………ノアに聞きたいことが沢山あるが、

俺は元々人付き合いも、話すのも苦手な方だ。

もう少ししたら食べ終わってしまう。

どう切り出したらよいものかー…


「あのね、クレナイ」


心を読まれたように急にノアが話しかけてきて

手持ちの巻き料理を落としそうになった。



「私のお師匠… メリア師匠はね

 私の実のおばあちゃんだったの。


 色々なこと教えてくれたんだ。

 このご飯も、薬草や治療の知識も。」



「……親は、いるのか」



ノアは首を軽く横に振った。



「いない。お母さんは私を産んで亡くなったし、

 お父さんは旅に出てそのまま…って聞いてる。


 だから師匠が、私をずっと育ててくれてた。

 治らない病で亡くなるまで。

 厳しかったけどね!!すぐ怒るし怖いし。

 

 それでね、私の一族はあなた同様特殊だったの

 一族っていうか……私が、かな」



ーー俺の種族を知っていたのか。

見た目の特徴はあるし、あの本の数を見れば

それはそうか。俺は言葉が出てこないままだ。



「メリア師匠は沢山のことを教えてくれた。

 自分がいなくなった後ーー

 私が1人でも隠れて生きていけるようにね。


 私もクレナイと近しい…存在っていうのかな。」



「…どういうことだ?迫害されている種なのか?

 俺にはお前の種族はわからないがーーー」



「うん、そうだよね、数が少なすぎて

 もう私くらいしか居ないんだと思う。


 クレナイの…ノワール族は

 "黒魔"を使役して力を借りることが

 できるんだよね?」



ーーー驚きはない。知っているのだろう。



「ーそうだ。ただ俺自身にもっと

 黒魔力が戻らなければ力を借りることはできない。

 黒魔達は見返りを与えなければ力は貸さない。

 そう簡単に使えるものではない…しいていえば、

 種の恩恵で少し身体が丈夫なくらいか。」


「ふふっ、すごい治るの早かったものね

 めきめきーって!

 みるみる治るからびっくりしちゃった」


「…そうか」


ノアが笑うと、空気が柔らかくなるのがわかる。



「なぜ出会ったばかりの俺に

 師匠や種の話をする?」



「うーーん…

 正直言うとね、言うの怖かった。


 でも、このままクレナイが行ってしまって

 またひとりになるのが怖くて。

 わがままなんだ、私。

 

 …ノワール族の黒魔達の始祖

 "ヴェノメール"黒神様っているでしょう?」



「あぁ、ノワール族で黒神の使役はできないがな。

 俺たちが使役できるのは

 ヴェノメール神から産まれた下僕黒魔達だけだ」



ノアは知識を持った上で、

俺に話しているとわかった俺は

隠すことの必要性はないと思い、あるがまま伝えた。



「うん、メリア師匠から聞いてる。

 本当にそうなんだね。

 

 えっと、私ほら、身体小さいでしょ。

 冷静に考えればクレナイのこと、

 あの磔された場所からこの森奥に運ぶのって

 難しいのすぐにわかるだろうし…


 何も言わないのもヘンだろうと思って」



ーーー驚いた。この子は賢い。

 俺が思っているより先々を想定している。

 


「…それで、…ノア。

 お前は何が言いたいんだ」



「うー、ごめん周りくどいよね!

 師匠にも簡潔に言えって怒られてたなぁ…



 …あのね



 私は"ヴェノメール様"の依代なの。」



「……?……!? より…しろ?」

 ノワール族の俺でも初耳だ。

 そんな存在がいるのか?

 神の依代だと?



「私が危機的状況になったり、

 私が絶望して世界を恨んだら

 ヴェノメール様は世界を"ならす"んだって。


 …ごめん、意味がわからないよね。


 えっとね私を通して、

 断片的にこの世界を見ているらしいんだ。」



「……世界を作った始祖神の1人がお前を

 通して見ている…?」



「そう、だから、えーっとなんていうかな

 私が酷い目にあったり…

 この世界を恨むようなことがあれば

 周囲を"綺麗に"するって…


 綺麗……

 作った世界の負の要因を、周囲を、

 消しちゃうみたい」



「…それは、ノアに関連した負の生き物を

 全て消し去るということか?」



「……うん。だから1人で人と関わらず

 ただ平穏に過ごせるようにって師匠が」



まだ頭の理解が追いついていないが、

つまりこのノアがいち世界崩壊のトリガーと

いうことか?



「ーお前が死んだらどうなる」



「自死しようとすると沢山きちゃうの。助けに。

 ノワール族が使役してるコたちが。

 今回も、少しだけお願いして

 クレナイを運んでもらったんだ」


ー自死という言葉が10歳の少女から

出てくる事に驚いたが、


つまり試したのだ。きっと。

この幼い少女に何を言えばいいと言うのだ。



「自死するような世界はダメみたい。

 …ただ平穏に、私が生きて死ねば

 また誰か依代が産まれるらしいんだ。


…だけど、人と関わって、

 何かあったら、みんな、きちゃうから」



…人里から離れ、幼い身で1人生きていることに

納得がいった。


ーーノアの背中に見えた生贄の紋章は、

見間違いではなかった。

これが生贄と呼ばれる所以かーー


「……すまないが俺は言葉がうまくない。

 つまり、何を求めている?」



「ノワール族のみんなも隠れて生きてるって

 教わってるのと…

 あの状態のクレナイを、ほっとけなかったの。

 ごめんね、巻き込んでるかもしれない。


 ここなら、師匠がかけてくれた

 範囲呪文もかかっててね、えっとね、

 きっと隠れられるから


 同じような存在のクレナイに…


 行く先がなかったら…

 

 あのね、あのね…


 そばにいて欲しいの。



 もう、ひとりは…嫌だ…から…」



気づけばノアの目からは涙が流れ落ちていた。





「…俺はあそこで死ぬ運命だった。

 今生きているのはお前のおかげだ、ノア。




 …お前が望むなら、俺がそばにいよう」





そう言うと、ノアは急に俺に向かってかけより、

抱きついてきた。

その勢いでノアが座っていた木製の椅子は倒れ、

飲みかけのコップも地面にゴトリと落ちた。



少女とはいえ、誰かに抱きしめられるなど

慣れていない俺は驚き固まってしまい

どうしたらいいものかと考えていると





「ふ………ぅ……

 

 うわぁぁ…

 

 うぁあぁーーーー」




唸り声のような、しぼりだすような泣き声が

段々と大きくなった。




震える小さい肩を

おそるおそる抱き寄せた。




「……ノア、お前が救ってくれた命だ。

 


 俺は、お前のために使おう。」



泣き声は一段と大きくなったが

思いの外心地悪いものではなかった。



 












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
image
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。