第1章_3話
ーーグリティフィシアの世界史ーー
筆者・デボン•ホワイア
XX00年、世界がまだ形をなしていなかったころ、
生命の種にあたる7人の神々がうまれ、
それぞれの特性の力を用いて
現在の世界を創世した。
それぞれの神々が持つ特性を活かし
各種族を作り、寵愛を注ぎ、
特徴を持った姿と力を与え、
独自の種族をこの世界に生み出したと
今も伝わっている。
しかし、おおよそ世界創生と呼ばれる年から
300年後とされるX335年、
それぞれの恩恵を受けた種族等が
土地や生き方を巡って大戦が起きた。
種族同士の特性が優越を競う形となり、
虐げられた種族は声を上げ、
結論は大きな種族戦争という形になった。
グリティフィシアの目次録 第一章ニ節より
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「ノワール族」とは、
第七神のひとりである黒神ヴェノアノールから
恩恵を受けた種族であり
その恩恵の特徴とは黒い漆黒の髪、紅い目。
恩恵を受けているため
黒神が好む容姿で産まれ、
非常に高い戦闘能力•黒魔力を持ち、
黒魔を使役する能力を持つ。
ノワール族も土地を守るために闘い、
敗れつつも、黒神の恩恵による戦闘の惨さや
黒魔力による各地への甚大な被害により、
恐れられる種族と伝わっている。
その数は減少傾向にあり、筆者である私も
姿を目撃したことは1度しかない。
彼らは今でもどこかに潜んでいるのだろうか。
ーーグリティフィシアの種族たち 第7節より
「ーーーフゥ……」
クレナイは読みかけの本を閉じ、
目の疲れを感じ瞼を閉じた。
あれから俺は、あの日見えてしまった
ノアの背中の紋章ことを
ノアに直接尋ねることもできず、
2日間も経ってしまった。
ノアもあの夜から俺がここを去る話には触れず、
次の日にはいつもどうりの明るくニコニコとした
笑顔で料理や冬支度に勤しんでいた。
俺はといえばノアに自由に読んで良いとされた
南側本棚の中段から下部の間に歴史書を見付け、
暖炉の火の番と共にゆっくりと歴史書を
読み耽っていた。
ーーそうだ。ノワール族は俺が産まれた時から
同族に教えを受け育った通りの記憶と
情報が書いてあるままだ。
黒神ヴェノアノールから守護を受けたが、
下僕の黒魔達の使役・戦争能力以外に
世界に必要とされなかった種族。
あらゆる種族たちの希望で手助けにも向かったが
あまりのノワール族の力の被害の大きさに
どの種族も恐れ慄き、離れ、
迫害対象となったと聞いている。
ーーー種族大戦からおおよそ80年経つ今も。
しかしなぜノアの紋章の情報が
どの歴史書にもないのだろうか。
この2日間で関連のありそうな
歴史書は数冊読んだが、どこにも記述がない。
俺は一体どこであの紋章を?
見間違えなのか、単なる信仰などによる
刺魔刻印なのか?
ーーーーしかしなんだこのおかしな頭は。
前髪から後頭部にかけ三方向に編み込みをされ、
革紐によって後頭部の頭は団子のようにまとめられている。
「クレナイの髪長くて本当にいじりがいがある〜!」
「・・・おい、あまりやりすぎるな」
「いいじゃない、私しか見ないんだし!ふふっ」
たしかに、俺の髪は腰くらいまで長いし、
生き延びるためにも目立たないよう
全く手入れをせず隠し、汚したままだったが
ノアの厳しい指摘と洗浄によって
本来の濡れた黒鳥のような髪へと戻った。
漆黒の黒髪には黒魔力と言われる力が蓄積される
とされていて、俺は幼少の頃から
髪を必要最低限切ることは禁止されていた。
長いのは単なる染みついた教えからなのだが。
それが少女の何に火をつけたのか。
もっぱらノアの髪遊びの道具となっている。
ーーー何がそんなに楽しいのか謎だ。
しかしながら、ここでの生活にも慣れてきて
不覚にも居心地の良さを感じ始めていた。
この森奥深くの小屋の周りには
沢山の木々材料があるし、山菜や木の実は豊富で
狩猟を行えば最低限の食用肉と手に入る。
(なんとノアには弓の心得があり、これも師匠に
仕込まれたという)
ますます師匠の存在が気になるところだがーー
「クレナイ、ねぇねぇ、
今日は夜おそとで焚き火でもして、食事しながら
少し星空でも見ない?師匠とたまにそうしてたの」
「…あぁ、いいな。そうしよう。」
人懐っこく、ここでの
あらゆる過ごし方を教えてくれるノア。
このままではノアに情が移ってしまいそうだ。
救われた恩をもう少し返してから
離れても良いだろうかーーー
ーーいや、その前に、やはり一度ノアに聞こう。
師匠のことも、なぜここに1人で住んでいるのか。
そして背中の刻印のような紋章のことも。
間違いならそれで良い、
命の恩を返すとしたら、
このまま何も聞かないのはどこか違う、
知る必要がある気がすると何故か強く思う。
「そしたらお外で薪木を積み上げなくちゃ!
クレナイ、一緒にやろう!
あっ!でも身体が痛むほど無理はせずにね!
「…あぁ、今行くよ」
外へ続く扉のすぐ向こうに、
夕陽にあたっておだやかな笑みを浮かべる
ノアがこちらに手を振っていた。
ゆっくりと立ち上がり、
美しい紫と橙色のグラデーションとなった
暖かな夕陽の光へ向かって行った。




