第1章_1話
「・・・う・・・ぁ・・・」
痛みで目が覚めると、
薄暗い木目の天井が見えた。
・・・・・ここ・・・は?
何やら布地の布団の上に寝かされているようだ。
目覚めた少しの動きによってギシっと木製ベッドが音を立てる。
あたりを霞む眼でみると、小さな木製の家の中の様に見える。
ベッド左横の窓からはうっすらと
月明かりが差し込んでいた。
いつもの3つの月と赤い月が見える。
ーーこの世界の夜だ。
どうやら俺はまだ死んでいないようだー・•
「・・・?・・うっ」
もうどこが痛むかわからないくらい、
身体を動かせば痛みが鋭く身体を貫く。
「ーーーあっ!!起きた!?」
馬鹿みたいに明るく、鈴を鳴らした様な
高い女児の声が響く。
すぐ近くに居たのか・・・・頭が痛い。
「よかったぁ、もう3日間も起きないから
このまま死んじゃうかと思ってた」
ローブのフードを被った少女は、
水のはいった木桶を持ちながらベッドへ近寄り、
俺の身体を拭きだした。
身体中が痛むが、よくよく身体の方に目をやると
四肢やあらゆる怪我の場所に白い麻布の包帯が巻かれているようだ。
「当て布を取り替えないとね、ごめんね痛いかもだけど」
麻布を剥がし始める。血が乾燥しているのか
剥がすたびペリペリと音をたてる。
「ぅう・・・」
「痛いよね、ごめんね・・
これ、師匠から教えてもらった薬草の塗り薬だから
心配しないで、ちょっと我慢してね」
俺の身体が少し大きいためか、
手当ての作業で暑くなったようでフードを取り、
額の汗をぬぐいながら
身体の傷へ薬草を塗っている。
磔にされていた時は見間違いかと思ったが、
ランタンの灯りで柔らかく染まるその姿は、
やはりきらめく銀髪と深い翡翠のような
青緑の眼を持つ少女で間違いなかった。
その容貌の特徴は何か教えがあった様な気がする、
でもだめだ、頭も痛い、全身も痛い・・・・
考えがまとまらない。
何故俺はここにいる?
なぜこいつに介抱を受けている・・?
(お・・・まえ・・・な・・・に・・)
声が思った様にでない、相変わらず殴られた口内の鉄の味はするが
砂のように砂利はない、この小さい人間が潤してくれていたのか?
「よいしょっ!!ごめんね、痛いかもだけど後ろもね」
ごろりと横向きにさせられる。
抵抗する力などない、むしろまた痛みで気を失いそうだ。
ただただ、痛い。眠い。ーーーひどく寒い。
「えっ、えっとお尻とか拭くけど、気にしないでね!」
言われた方が気になるだろうが・・・
もうどうでもいい・・
「あっ!ごめんなさい意識もどったら、
重湯もう少しのまないと・・・少し飲める?」
俺の体を横向きにして押さえたまま、
曲がった木のスプーンで木器から重湯をすくい
口元へ運んでくれた。
喉が痛んでいるのか、飲み込むのも
ちぎれそうに痛いが、常温より少し暖かい湯が嬉しい・・・
「・・・あ・・り・・・がお・・」
「声が出せるのね!よかった・・
大丈夫。私師匠から色々教わっているの!
きっときっと、あなたも良くなるよ!!
だって傷の回復が早いもの!!」
「・・・」
「きっと潜在治癒力が強いひとなんだね!
ここは村のはずれからもっと森の奥にはいったところだよ
だから大丈夫。見つからないから安心して!」
・・・そんなところなら・・・
どうやってこの少女が・・運んだんだ・・・・・
色々な疑問が浮かぶが、
温かい重湯と、ベットの柔らかさで再度眠気が襲ってきた。
ただ、寒い。ガチガチと歯が音を立てはじめた。
「ごめんなさい!!寒いよね、布交換したら
私のおふとんをかけるね」
「おま‥え… なま…え」
「なまえ?私のなまえ?
私は…… ノア。あなたは?」
「クレ…ナ…イ」
「クレナイ?珍しい名前ね!
聞いたことないもん!
もう背中塗り終わるからーー」
ノアは明るく何やら嬉しそうにしゃべりながら、
俺に柔らかな布団を重ね、ランタンを近づける。
「私が様子を見てるから、だいじょうぶよ」
その小さな手は、そっと俺の額を撫でた。
少しずつ温かくなってきたとともに、
クレナイはまた深い眠りに落ちていった。




