討伐隊の総攻撃
ジンの思いつき(ネトゲ知識)による補給路襲撃は、劇的な成果を上げていた。
糧食をすべて焼失したガリア帝国10万の軍勢は、わずか数日で大混乱に陥り、大半の兵士が散り散りとなって撤退を開始したのだ。
しかし――追い詰められた敵の総司令官は、狂気ゆえの「最悪の決断」を下した。
「全軍撤退だと……!? ふざけるな! 我らガリア帝国の威信にかけて、魔王の首を取らずして帰れるかぁぁぁッ!」
生き残った死中求活の精鋭討伐隊3千。
彼らは撤退ではなく、魔王城の本陣を目指して破れかぶれの特攻を開始したのである。
――ズドォォォォン!!
城の至るところで爆煙が上がり、地鳴りのような衝撃が重なる。
四天王たちが迎撃に向かったものの、捨て身の死兵と化した討伐隊は防衛線を強行突破し、ついに魔王城の最深部――ジンの自室のすぐ前の廊下にまで侵入していた。
「ひ、ひえぇぇぇぇっ!?? 何この爆音!?? 地震!?? 火事!??」
自室のふかふかベッドから跳ね起きたジンは、ガタガタと膝を震わせながらドアノブを見つめた。
バンッ!!
重厚な扉が力任せに蹴り開けられる。
そこに立っていたのは、返り血を浴び、目を血走らせたガリア帝国の総司令官と、百人を超える精鋭兵たちだった。
「ハァ……ハァ……ついに追い詰めたぞ、魔王ジークフリート! 我が命と引き換えに、貴様の首をもらいうけるッ!」
(ひぃぃぃぃっ!! 人間が大量になだれ込んできたぁぁぁ!?? コミュ障にこの人数は絶対に無理!! しかもなんかめちゃくちゃ怒ってる!!)
恐怖が絶頂に達したジンは、頭が真っ白になった。
あまりの圧迫感とショックで息ができなくなり、胸を押さえながら「う……あ……っ」と声にならない悲鳴を上げる。
だが、死を覚悟した総司令官たちの目には、そのジンの姿が恐ろしい「異常事態」として映っていた。
「な……なんだ……この圧迫感は……!?」
命の危機を感じたジンの体から、無意識のうちに漏れ出した【規格外の死の魔力】。
それは漆黒のオーラとなって部屋全体を呑み込み、空間そのものをミシミシと歪ませていた。
「部屋に侵入されたというのに……命を乞うどころか……眉一つ動かさず……我らを殺気だけで押し潰す気か……っ!?」
総司令官はガクガクと足の震えが止まらなくなり、手にした大剣を地面に落とした。
(助けて四天王ーッ! 警察ーッ! 誰でもいいからこの人たちを追い払ってぇぇぇーーーっ!!)
心の中で悲痛な叫びを上げるジンと、王の真の絶望的な魔力に呑み込まれ、息すらできなくなった討伐隊。
嵐の前の静けさのような緊迫感が、ジンの部屋を支配していた――。




