世界の真実と、魔王の使命
勇者レオンが感服して去り、人間側との和睦の兆しが見え始めた魔王城。
しかし、修繕中の執務室(ようやく壁と天井が半分ほど復活した)に、青ざめた顔の四天王全員が集結していた。
「ジークフリート様……大変な事態にございます」
老魔導士コルネリウスが、古びた羊皮紙を震える手で掲げた。
「我が魔王城の上空……異次元の狭間より、かつてこの世界を害しようとした【上級邪神】の波動が感知されました」
(邪神!? なにそれ、勇者や人間よりヤバい奴出てきたの!?)
毛布にくるまっていたジンは、ひぃと小さな悲鳴を上げた。
「古代の記録によれば……邪神は世界中の命の波動を喰らう存在。人間も魔族も関係なく、全てを滅ぼす破滅の化身にございます。……そして奴が狙っているのは、世界で最も巨大な魔力……すなわち、ジークフリート様、貴方様の命にございます!」
(僕の命!? なんで僕なの!? 僕はただお部屋でゲームしてダラダラしたいだけの最底辺引きこもりなのにぃぃぃ!!)
ジンは冷や汗をダラダラと流しながら、ガタガタと震えた。
「ジークフリート様!」
バアルが深々と頭を下げる。
「邪神の降臨まで、あとわずか。我ら四天王、全霊を賭して敵の降臨を阻止してみせます!」
「……いや」
ジンは恐怖のあまり、声にならない声でボソボソと呟いた。
「……無理だよ……」
(邪神とか勝てるわけないじゃん! 逃げようよ! どこか遠くの平和な農村とかに引きこもろうよ!!)
ジンとしては「勝てないから逃げ出したい」という切実な諦めの言葉だった。
だが、四天王たちの受け止め方は、またしても遥か斜め上へと突き抜けた。
「っ……!? 『我ら四天王の手には余る(無理だ)』……そうおっしゃるのですね!?」
ルクレツィアが息をのんだ。
「左様でございますね……相手は次元の壁を破ってくる邪神。我らの浅知恵や軍勢など、前座にすらなりません……! ジークフリート様自らが、その真の力で迎撃されるおつもりかっ……!」
「えっ」
「おお……なんという慈悲……! 人間を許し、世界を愛する我が王が、世界を脅かす真の災厄(邪神)を一人で引き受けられるとは……!」
(ちがう! 恐怖で「無理」って言っただけ! 一人で戦うなんて絶対に無理ぃぃぃーーーっ!!)
空が紫黒く割れ、異次元の扉が開き始める。
絶望的な叫びも虚しく、最底辺引きこもり魔王ジンの「世界を賭けた最終決戦」の火蓋が切られようとしていた。




