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レベル1の村娘、実は世界最強でした  作者: ななほし


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36/38

第36話 私が生まれた場所

王都の地下。


 そのさらに奥。


 私は。


 星空のような空間に立っていた。


 足元には。


 何もない。


 なのに。


 ちゃんと立っていられる。


「……不思議」


 私は。


 ゆっくり周囲を見回した。


 遠くには。


 いくつもの世界が浮かんでいる。


 青い世界。


 赤い世界。


 緑色の世界。


 そして。


 何もない。


 真っ黒な世界。


「これ全部……世界?」


 シエラが。


 息を呑んだ。


「おそらく」


「では、ここは……」


 ルナが。


 静かに答える。


「世界と世界の間」


「正式には」


「境界領域」


「境界領域……」


 私は。


 その言葉を繰り返した。


「じゃあ」


「私が生まれた場所も」


 ルナは。


 私を見る。


「ここから行けるわ」


「……!」


 私は。


 一歩前へ出た。


「行きたい」


 すぐに。


 始原の王が言った。


「待て」


「どうして?」


「戻れなくなる可能性がある」


「……」


「その世界に入れば」


「この世界との繋がりが切れるかもしれない」


「でも」


 私は。


 振り返った。


 そこには。


 レオンたちがいる。


「みんなも一緒でしょ?」


「もちろん」


 レオンが。


 即答した。


「俺は行く」


 シエラも。


「私もです」


 クロエが。


「ここまで来て置いていかれるなんて嫌よ」


 ガルドが。


「同じく」


 アリシアも。


「王国騎士として」


「そして――」


 アリシアは。


 私を見る。


「あなたの仲間として同行します」


 セレナが。


 笑った。


「私も」


 そして。


 セレスが。


 私の隣に立つ。


「私も行く」


「……」


 私は。


 嬉しくなった。


「ありがとう」


     ◇


「……本当に全員行くのか?」


 始原の王が。


 呆れた顔をする。


 アレンが。


 肩をすくめた。


「仕方ないだろ」


「ミアの仲間だからな」


「……」


 始原の王は。


 しばらく黙っていた。


 そして。


 小さく笑った。


「そうか」


「なら」


「俺も行く」


「お父さんも?」


「当たり前だ」


 私は。


 少し笑った。


「お父さんが二人」


「仲間がいっぱい」


「なんだか賑やかだね」


 クロエが。


 笑う。


「今さら?」


     ◇


 境界領域の奥。


 一つの世界が。


 大きく輝いていた。


「これ?」


 私は。


 近づく。


 すると。


 世界の表面に。


 文字が浮かんだ。


 『原初世界』


「原初世界……」


 ルナが。


 険しい顔になる。


「違う」


「え?」


「その名前は」


「私たちが後からつけたもの」


「本当の名前は――」


 そこで。


 ルナは。


 言葉を止めた。


「……どうしたの?」


「まだ言わない」


「どうして?」


「名前を呼ぶだけで」


「目を覚ますものがあるから」


「……」


 私は。


 少し怖くなった。


「そんなに危ないの?」


「ええ」


 ルナは。


 頷く。


「でも」


「あなたが行けば」


「きっと分かる」


     ◇


 世界の入り口。


 巨大な光の門。


 その前に。


 文字が浮かんだ。


 『入界条件』


 『始原の娘』


 『世界の核』


 『選択者』


 そして。


 最後。


 『同行者――制限なし』


「……制限なし?」


 シエラが。


 驚く。


「誰でも入れるということでしょうか」


 セレスが。


 首を横に振る。


「違う」


「この世界は」


「ミアが連れていく人間を」


「拒まない」


「……」


 私は。


 みんなを見る。


「じゃあ」


「一緒に行けるんだ」


「そう」


 セレスが。


 笑った。


     ◇


 私は。


 門へ手を伸ばした。


 その瞬間。


 頭の中に。


 声が響く。


『――帰ってきた』


「……」


『長かった』


『ずっと待っていた』


 私は。


 目を閉じる。


 どこか。


 懐かしい。


「あなたは誰?」


『私は』


『この世界そのもの』


「……世界?」


『そう』


『お前を待っていた』


『我が娘』


 私は。


 目を開けた。


「娘……?」


 ルナが。


 顔を強張らせる。


「聞こえたの?」


「うん」


「何と言っていた?」


「私のことを」


「娘って」


 ルナが。


 少し悲しそうに笑った。


「やっぱり」


「……何が?」


「あなたは」


「ここでも」


「誰かに愛されていたのね」


     ◇


 門が。


 ゆっくり開いた。


 光の向こうに。


 大地が見える。


 空がある。


 海がある。


 そして。


 巨大な白い月。


「……綺麗」


 私は。


 思わず声を漏らした。


 でも。


 次の瞬間。


 その世界の空に。


 巨大な影が現れた。


「……何?」


 影が。


 こちらを見る。


 巨大な目。


 白い鱗。


 六枚の翼。


「ドラゴン……?」


 ガルドが。


 驚く。


 シエラが。


 首を横に振る。


「違う」


「ドラゴンより……」


「もっと古い」


 巨大な存在が。


 ゆっくり。


 こちらへ近づいてくる。


『――ようやく』


『帰ってきたか』


 私は。


 首を傾げる。


「私を知ってるの?」


『当然だ』


『お前が』


『この世界を出てから』


『千年以上』


『我々は待ち続けた』


「……千年以上?」


 私は。


 驚いた。


「でも」


「私、十六歳だよ?」


 クロエが。


 小声で言う。


「そこじゃないと思う……」


     ◇


 巨大な存在が。


 地面へ降りる。


 その身体が。


 一瞬で。


 人の姿へ変わった。


 白い髪。


 金色の瞳。


 長い白い服。


 見た目は。


 十七歳くらいの少女。


「……女の子?」


 私は。


 思わず近づく。


「こんにちは」


「……」


 少女は。


 私を見つめる。


 そして。


 突然。


 泣き出した。


「えっ!?」


「ど、どうしたの!?」


 少女は。


 涙を流しながら。


 私の手を握った。


「ミア……」


「うん」


「本当に」


「本当に帰ってきた……」


「えっと……」


「私たち」


「会ったことある?」


 少女は。


 泣きながら笑った。


「ある」


「何度も」


「あなたが」


「まだ生まれる前から」


「……?」


 始原の王が。


 少女を見た。


「お前は」


「この世界の守護者か」


 少女が。


 振り返る。


「違う」


「私は」


 少女が。


 胸に手を当てる。


「ミアがこの世界にいた頃の友達」


「……!」


 セレスが。


 息を呑んだ。


「まさか」


「あなた……」


 少女は。


 セレスを見る。


「久しぶり」


「セレス」


「……!」


 セレスの顔から。


 笑顔が消えた。


「知ってるの?」


 私が聞く。


 セレスは。


 少しだけ迷ってから。


 答えた。


「うん」


「この子は」


「私とミアの」


「昔の仲間」


「名前は?」


 少女は。


 私を見る。


「フィア」


「フィア……」


「うん」


 フィアは。


 私の手を離さない。


「私は」


「ずっとあなたを待ってた」


     ◇


 その夜。


 私たちは。


 白い森の中で。


 焚き火を囲んでいた。


 王都とは。


 まったく違う。


 静かな夜。


 星が。


 とても近くに見える。


「……落ち着く」


 私は。


 火を見ながら言った。


「ここが」


「私の故郷なのかな」


 フィアが。


 頷く。


「そうだよ」


「あなたが生まれた場所」


「じゃあ」


 私は。


 聞いた。


「私のお父さんは?」


「……」


 フィアの表情が。


 変わった。


「どっち?」


「え?」


「アレン?」


「それとも」


 フィアが。


 始原の王を見る。


「彼?」


「……」


 私は。


 困った。


「どっちも」


「お父さん」


 フィアが。


 少し笑った。


「やっぱり」


「あなたらしい」


「でも」


 フィアは。


 火を見つめる。


「あなたが生まれた時」


「二人とも」


「父親ではなかった」


「……え?」


 全員が。


 フィアを見る。


「どういうこと?」


「あなたが生まれた時」


 フィアが。


 ゆっくり言う。


「あなたを抱いたのは」


「ルナだけだった」


「アレンは」


「まだあなたを知らなかった」


「始原の王は」


「あなたを娘だと認識していなかった」


「……」


「じゃあ」


 私は。


 聞く。


「私は」


「誰から生まれたの?」


 フィアは。


 しばらく黙った。


 そして。


「それは」


「私にも分からない」


「……」


「でも」


 フィアが。


 私の胸を見る。


「あなたを最初に見つけたのは」


「ルナじゃない」


「じゃあ誰?」


 フィアは。


 小さな声で答えた。


「虚無の王」


 焚き火が。


 一瞬。


 消えた。


「……」


 誰も。


 何も言えなかった。


 フィアが。


 静かに続ける。


「虚無の王が」


「世界の外で」


「あなたを見つけた」


「そして」


「この世界へ連れてきた」


「……私を?」


「うん」


「でも」


 私は。


 胸を押さえた。


「どうして?」


 フィアが。


 悲しそうに笑う。


「それは――」


 その瞬間。


 空が。


 真っ黒になった。


 星が。


 一つずつ。


 消えていく。


 フィアが。


 立ち上がる。


「……来た」


「誰が?」


 フィアは。


 空を見る。


「あなたが」


「一番会いたくなかった人」


 私は。


 息を呑む。


 黒い空の中心に。


 一つの赤い目が開いた。


 そして。


 声が響く。


『――ミア』


『ようやく』


『帰ってきたな』


 虚無の王。


 その声が。


 世界全体を揺らす。


『今度こそ』


『お前を迎えに行く』


 私は。


 ゆっくり立ち上がった。


 そして。


 仲間たちを見る。


「……みんな」


 レオンが。


 剣を抜く。


「いる」


 シエラも。


 杖を構える。


「はい」


 クロエが。


 短剣を握る。


「もちろん」


 ガルドが。


 盾を構える。


「任せろ」


 セレナが。


 黒い翼を広げる。


「私もいる」


 セレスが。


 私の隣に立つ。


「ずっと一緒」


 私は。


 小さく笑った。


「うん」


 そして。


 空を見上げる。


「今度は」


「逃げない」


 世界の空が。


 完全な黒に染まる。


 その向こうから。


 無数の黒い翼が。


 こちらへ向かってくる。


 虚無の王の軍勢。


 その数――


 数え切れない。


 そして。


 その先頭に。


 一人の少女がいた。


 黒い髪。


 青い瞳。


 小さな翼。


 私と同じ顔。


「……」


 私は。


 その少女を見る。


 フィアが。


 震える声で言った。


「ミア」


「あの子は――」


「あなたが」


「世界を選んだ時に」


「最後まで」


「あなたのそばにいた子」


「……」


 少女が。


 遠くから。


 私を見る。


 そして。


 笑った。


「――やっと会えたね」


 私は。


 その声を聞いた瞬間。


 胸の奥が。


 強く痛んだ。


 なぜなら。


 その少女の名前を。


 私は。


 もう知っていた。


「……ノア」


 少女が。


 笑う。


「思い出した?」


 そして。


 世界の空に。


 巨大な文字が浮かぶ。


 『第二世界――侵入開始』


 新しい世界での戦いが。


 始まった。

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