↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル1の村娘、実は世界最強でした  作者: ななほし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/32

第3話 初めての仲間

翌朝。


「……眠い」


 私は目をこすりながら、村の入口へ向かっていた。


 集合時間は朝六時。


 まだ太陽も完全には昇っていない。


 なのに。


「おはようございます!」


 私が声をかけると――


「お、おはよう……」


 そこには、すでに四人が集まっていた。


 レオン。


 シエラ。


 クロエ。


 そしてガルド。


「ミア、早いな」


 レオンが驚いた顔をする。


「はい! 楽しみで昨日あまり眠れませんでした!」


「子供かよ」


 クロエが笑う。


「だって、初めてのダンジョンですよ?」


「まあ、気持ちは分かるけどな」


 レオンは苦笑した。


「じゃあ、改めて確認するぞ」


 レオンが全員を見る。


「今日の目的は、初心者用ダンジョン『灰色迷宮』の五階まで進むこと」


「はい!」


 私が元気よく返事をする。


「無理はしない。危険を感じたらすぐ戻る」


「はい!」


「ミアは特に、無茶するなよ」


「はい!」


「……本当に分かってるか?」


「もちろんです!」


 胸を張る。


「危なくなったら逃げます!」


「それならいい」


 レオンは安心したように頷いた。


 でも。


 クロエだけは、なぜか私をじっと見ていた。


「……何ですか?」


「いや」


 クロエがニヤッと笑う。


「昨日の黒牙狼王の話、まだ気になってるんだよね」


「黒牙狼王?」


「そう」


「大きな狼ですよね」


「……うん」


 クロエの笑顔が少し引きつった。


「普通の人は、あれを見たら『大きな狼』では済まないんだけどね」


「そうなんですか?」


「そうなの」


 シエラがため息をつく。


「黒牙狼王は、討伐推奨人数が二十人以上とされる災害級魔物です」


「二十人……」


「うん」


 クロエが指を二本立てる。


「二十人」


「なるほど」


 私は頷いた。


「いっぱいですね」


「感想、それ?」


 クロエが笑い出した。


「ふふっ。やっぱり面白い子だね、ミア」


 ガルドが小さく笑った。


「……変わってるな」


「よく言われます!」


「褒めてないぞ」


「そうなんですか?」


 今度は全員が笑った。


 なんだか。


 昨日まで一人だったのに。


 今日は、みんなで笑っている。


 それが少し嬉しかった。


     ◇


 灰色迷宮までは、村から歩いて二時間ほど。


 山の麓にある、古い洞窟だった。


「ここが……」


 私は入口を見上げた。


 巨大な岩壁。


 その中央に、大きな穴が開いている。


 入口には古い石碑があった。


『灰色迷宮』


 その下には、さらに古い文字が刻まれている。


 シエラが文字を読む。


「……『深き底に眠るものを、決して起こすな』」


「怖いこと書いてありますね」


「古代語だから、今では意味を正確に理解できる人は少ないけどね」


 シエラが石碑を眺める。


「ただ、この迷宮には昔から奇妙な伝承がある」


「どんな?」


 クロエが聞く。


「千年以上前から、最深部に誰も到達できていない」


「へえ」


「途中から道が変化するらしい」


 レオンが腕を組む。


「まあ、今日は五階までだ。伝承なんて関係ない」


「そうですね!」


 私は入口に向かって歩き出した。


 その瞬間だった。


 ――ピキッ。


「……?」


 足元から音がした。


 石碑だった。


 さっきまで何の変化もなかった石碑に、一本の細い亀裂が入っていた。


 シエラが振り返る。


「……今、音がした?」


「はい?」


 私には何のことか分からない。


 そして。


 石碑の奥。


 誰にも聞こえないほど小さな声で。


『……帰って、きた……』


 そんな声がした。


     ◇


「よし。行くぞ」


 レオンを先頭に、迷宮へ入る。


 私はその後ろ。


 さらにシエラ、クロエ、ガルド。


 洞窟の中は暗かった。


「ミア、これを」


 シエラが小さな魔石を渡してくれた。


「明かりです」


「ありがとうございます!」


 魔石が淡く光る。


「すごい!」


「魔法具だよ」


「便利ですね!」


 私は魔石を眺めながら歩く。


 すると。


「止まれ」


 レオンが手を上げた。


 全員が止まる。


「前に魔物がいる」


「何体?」


 クロエが小声で聞く。


「三体だ」


 レオンが剣を抜いた。


 暗闇から――


 グルルル……。


 三匹の魔物が姿を現した。


「ゴブリンだ」


 レオンが構える。


「ミアは下がってろ」


「分かりました!」


 私は壁際へ移動した。


 レオンが一歩踏み込む。


 シュッ!


 一体目を斬る。


 クロエが横から飛び込む。


 二体目を仕留める。


 そしてガルドが盾で最後の一体を吹き飛ばした。


「終わりだ」


 レオンが剣を収める。


「すごい……」


 私は目を輝かせた。


「これが冒険者なんですね!」


「まあ、ゴブリンくらいならな」


 レオンが笑う。


「次はミアも――」


 その時。


 ドンッ。


「……?」


 迷宮の奥から。


 何か大きな音がした。


 地面がわずかに揺れる。


「今の……?」


 シエラが顔を上げる。


「魔物か?」


 ガルドが盾を構えた。


 クロエも短剣を抜く。


 全員が警戒する。


 私はというと。


「地震ですかね?」


「……違うと思う」


 シエラが苦笑した。


 すると。


 迷宮の奥から――


 何かがこちらへ走ってくる音がした。


 ドドドドドドッ!


「来るぞ!」


 レオンが叫ぶ。


「構えろ!」


 全員が戦闘態勢に入る。


 そして暗闇から飛び出してきたのは――


 巨大な赤い魔物だった。


「オーク!」


 クロエが叫ぶ。


「しかも……大きすぎる!」


 普通のオークの二倍。


 巨大な棍棒を持ち、真っ赤な目でこちらを見る。


 レオンが剣を握り直した。


「全員、下がれ!」


 オークが吠える。


「グオオオオオオッ!」


 その巨体が突進してくる。


「ミア!」


「はい!」


「逃げろ!」


「分かりました!」


 私は走った。


 ――オークとは反対方向へ。


 ところが。


 足元の石に引っかかった。


「わっ!」


 転ぶ。


「ミア!」


 レオンが叫ぶ。


 私は反射的に手を前へ出した。


「すみません!」


 そして。


 いつものように。


「ちょっと、あっち行ってください!」


 ――ドンッッッ!!!


 迷宮全体が揺れた。


「…………」


「…………」


「…………」


 全員が固まった。


 目の前にいたはずのオークが――


 いない。


 いや。


 いた。


 遥か彼方。


 迷宮の壁に、めり込んでいた。


「…………」


 レオンが口を開く。


「……今、何をした?」


「え?」


 私は自分の手を見る。


「何もしてませんよ?」


「いや……」


 クロエがゆっくりオークを見る。


 オークは気絶していた。


「……手、出したよね?」


「はい」


「それで?」


「押しました」


「……」


 クロエは頭を抱えた。


「押しただけで、オークが飛ぶかぁ……?」


「飛びましたね!」


「そこ認めるんだ……」


 シエラは何も言わなかった。


 ただ。


 ミアの手をじっと見つめていた。


「……おかしい」


「シエラ?」


「今の魔力反応……」


 シエラは首を傾げる。


「ほとんど感じなかった」


「じゃあ、弱かったんですか?」


「……逆」


 シエラが小さく呟く。


「強すぎて、測れなかった?」


「え?」


「いや……まさか」


 シエラは首を振った。


「気のせいだと思う」


 その時。


 迷宮のさらに奥。


 誰も気づいていない場所で。


 古い扉が――


 ゆっくりと開いた。


 その奥には。


 千年以上、誰にも触れられていない巨大な石室。


 中央には、一つの黒い玉。


 そして。


 その表面に、文字が浮かび上がった。


『帰還を確認』


『封印対象――目覚めの兆候』


『識別名――ミア・ルナベル』


 黒い玉が。


 ほんの少しだけ。


 脈打った。


 ――ドクン。


 まだ誰も知らない。


 この日。


 一人の少女が。


 千年以上止まっていた世界の歯車を、動かし始めたことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。