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レベル1の村娘、実は世界最強でした  作者: ななほし


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19/32

第19話 白い森の眠れる湖

翌朝。


「白い森?」


 レオンが地図を広げた。


「ここから北へ三日ほど」


 シエラが指を指す。


「でも、この森……地図に詳細がないわ」


「どうして?」


 クロエが覗き込む。


「危険だから?」


「それもあるけど」


 シエラは首を横に振った。


「正確には――」


 地図の端。


 そこには古い文字で。


 『立入禁止区域』


 と書かれていた。


「嫌な予感しかしないな」


 ガルドが呟く。


 私は。


 短剣を見る。


 昨日。


 短剣が示した場所。


 そこにあるのは。


 ――ルナの眠る場所。


「……行きたい」


 私は言った。


 レオンが私を見る。


「母親を探すためか?」


「はい」


 私は頷く。


「母さんが何者なのか知りたい」


 少しだけ。


 胸が痛くなった。


「それに……」


「それに?」


「私がどうしてこんな力を持っているのかも」


 みんなが黙った。


 私は笑う。


「私、自分のことを何も知らないんです」


「……ミア」


「だから知りたい」


 レオンが。


 静かに頷いた。


「分かった」


「本当に?」


「ああ」


 クロエが笑う。


「もちろん私も行くよ」


「俺もだ」


 ガルドが頷く。


「当然ね」


 シエラも続いた。


「私も古代文明についてもっと調べたいし」


「調べたいんですね」


「ええ」


 シエラは真顔だった。


「かなり」


「……」


 レオンが苦笑する。


「じゃあ決まりだな」


 こうして。


 私たちは。


 白い森へ向かうことになった。


     ◇


 三日目。


 森が見えてきた。


「……白い」


 私は思わず呟いた。


 本当に。


 木々が白かった。


 白い樹皮。


 白い葉。


 白い花。


 雪が積もっているわけではない。


 森そのものが。


 白かった。


「不思議……」


 私は近づく。


 その瞬間。


 ――ザワッ。


 森全体が。


 揺れた。


「……今、何か動いた?」


 クロエが短剣を構える。


「魔物か?」


 レオンも剣を抜く。


 でも。


 何も出てこない。


 シエラが杖を構えた。


「おかしいわ」


「何が?」


「魔力が……ない」


「ない?」


「ええ」


 シエラが周囲を見る。


「森なのに、生き物の魔力がほとんど感じられない」


 私は。


 森の中へ一歩入った。


 すると。


 ――サァァァ……。


 白い葉が。


 一斉に揺れた。


「……!」


 そして。


 森の奥から。


 一匹の白い鹿が現れた。


「鹿?」


 鹿は。


 私を見る。


 しばらく。


 じっと見つめて。


 そして。


 頭を下げた。


「……こんにちは?」


 私が言うと。


 鹿は踵を返した。


 森の奥へ歩いていく。


「ついてこいってことかな?」


 クロエが首を傾げる。


「たぶん」


 私は。


 鹿の後を追った。


「ミア、待て!」


 レオンが慌てて追いかける。


 すると。


 白い鹿は。


 私たちを。


 森の奥へ案内し始めた。


     ◇


 一時間ほど歩いた。


 突然。


 森が開けた。


「……!」


 目の前に。


 巨大な湖があった。


 水面は。


 鏡のように静かだった。


 そして。


 湖の中央。


 小さな島がある。


 その島には。


 一軒の家。


「……あれ」


 私は。


 胸が高鳴るのを感じた。


「母さん……?」


 確かに。


 ここだ。


 理由は分からない。


 でも。


 分かる。


 私の身体が。


 そう告げていた。


 その瞬間。


 白い鹿が。


 湖の前で止まった。


 そして。


 私に向かって。


 もう一度。


 頭を下げた。


「ありがとう」


 私が笑う。


 鹿は。


 森の中へ消えていった。


「どうやって島まで行く?」


 クロエが湖を見る。


「泳ぐ?」


「三月だぞ」


 レオンが呆れる。


「寒いよ」


「冗談だって」


 私は。


 湖を見る。


 すると。


 水面に。


 何かが浮かんだ。


「……道?」


 湖の中から。


 白い石が。


 一つ。


 浮かび上がった。


 ――ポン。


 さらに。


 もう一つ。


 ――ポン。


 そして。


 次々と。


 石が水面へ浮かんでくる。


「橋になった……」


 シエラが呟く。


「ミアに反応してる」


 私は。


 石の上に足を乗せた。


 沈まない。


「行けそうです」


「……本当に?」


 レオンが恐る恐る乗る。


 大丈夫。


 私たちは。


 島へ向かった。


     ◇


 島の家。


 扉の前に立つ。


 古びた。


 小さな家。


 なのに。


 なぜか。


 懐かしい。


「……」


 私は。


 扉に手を触れた。


 ――カチッ。


 鍵が開いた。


「入るぞ」


 レオンが先に入る。


 でも。


 中には誰もいない。


 家具も。


 ほとんどない。


 ただ。


 一つの椅子。


 一つの机。


 そして。


 壁に掛けられた。


 一枚の絵。


「……!」


 私は。


 絵の前で立ち止まった。


 そこには。


 母さんがいた。


 マリア。


 私が知っている。


 母さん。


 でも。


 その隣には。


 見たことのない男がいる。


「この人……」


 シエラが近づく。


 男は。


 銀色の髪。


 赤い瞳。


「……レイヴェン?」


 違う。


 もっと若い。


 そして。


 母さんは。


 その男の腕の中で。


 笑っている。


 私は。


 絵の裏側を見る。


 そこには。


 文字が書かれていた。


 『アレンへ』


「……父さんへ?」


 さらに。


 その下。


 小さな文字。


 『この子をお願いします』


 私の手が。


 震えた。


「この子って……」


 絵には。


 赤ん坊の私。


「私……?」


 レオンが黙る。


 クロエも。


 ガルドも。


 何も言わない。


 私は。


 絵を抱えるように持った。


「母さん……」


 その時。


 ――ドクン。


 短剣が光った。


 壁の一部が。


 ゆっくり開く。


「隠し部屋?」


 シエラが目を見開く。


 中には。


 一つの箱があった。


 箱には。


 私の名前。


 『ミアへ』


「……」


 私は。


 箱を開けた。


 中に入っていたのは。


 一枚の手紙。


 そして。


 小さな銀色の指輪。


 私は。


 手紙を開く。


 そこには。


 懐かしい字。


 母さんの字だった。


 ――ミアへ。


 ――この手紙をあなたが読む頃。


 ――私はもう、あなたのそばにはいないでしょう。


「……」


 胸が。


 苦しくなる。


 続きを読む。


 ――あなたには、まだ話せないことがあります。


 ――あなたが普通の女の子として生きられるように。


 ――私は嘘をつきました。


「嘘……」


 私の声が震える。


 ――私の名前。


 ――あなたの父親。


 ――あなたが生まれた場所。


 ――そして。


 ――あなたの力。


 全部。


 いつか話すつもりでした。


 でも。


 最後の一行。


 そこだけ。


 文字が乱れている。


 まるで。


 急いで書いたように。


 ――もし私が帰ってこなかったら。


 ――この湖の底を探してください。


 私は。


 顔を上げた。


「湖の……底?」


 シエラが驚く。


「何があるの?」


 その時。


 湖の外から。


 ――ドンッ!!


 巨大な音が響いた。


「敵!?」


 レオンが剣を抜く。


 窓の外。


 湖の向こう側に。


 黒いローブの集団が立っていた。


「……また」


 クロエが呟く。


 そして。


 その中心に。


 一人の男。


「見つけたぞ」


 男が笑う。


「始原の娘」


 私は。


 息を呑んだ。


「……始原の娘?」


 男は。


 私を指差した。


「そうだ」


「お前こそ――」


 その瞬間。


 男の後ろから。


 巨大な魔法陣が浮かび上がった。


「千年前に封印された――」


 空が。


 黒く染まる。


「始原の女神の娘だ」


 ――ドクン。


 私の短剣が。


 今までにないほど強く光った。


 そして。


 湖の水面が。


 大きく割れた。


 ――ゴゴゴゴゴ……。


 湖の底から。


 何かが。


 ゆっくりと。


 浮かび上がってくる。


 それは。


 巨大な白い扉だった。


 扉に刻まれている。


 古代文字。


 『ルナの娘、帰還を確認』


 私は。


 ただ。


 その文字を見つめていた。


 そして。


 扉の向こうから。


 聞こえた。


 とても懐かしい声。


『――ミア』


 私は。


 目を見開いた。


「……母さん?」


 声は。


 もう一度。


 静かに響いた。


『遅かったわね』


 ――白い扉が。


 ゆっくりと。


 開き始めた。

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