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レベル1の村娘、実は世界最強でした  作者: ななほし


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第18話 魔王軍、王都へ

――ドォォォン!!


 王都の外で。


 大きな爆発音が響いた。


「何!?」


 私は振り返る。


 王立図書館から脱出した私たちは。


 街の中央広場まで戻ってきていた。


 空は。


 いつの間にか黒い雲に覆われている。


「……嫌な魔力」


 シエラが空を見上げる。


「これ……昨日の魔族よりずっと強い」


「魔王軍か?」


 レオンが剣を抜く。


「たぶん」


 シエラが頷く。


 その瞬間。


 王都中に。


 警報が鳴り響いた。


 ――ゴォォォン!


 ――ゴォォォン!


 騎士たちが一斉に走り出す。


「魔王軍だ!」


「南門が突破された!」


「市民を避難させろ!」


 街が。


 一瞬で混乱に包まれた。


「ミア!」


 アリシアさんが駆け寄ってくる。


「ここは危険です!」


「でも……」


「あなたが狙われています」


 アリシアさんは真剣な顔をしていた。


「魔王軍の目的は、あなたです」


「……私?」


「はい」


 私は。


 燃え残った一枚のページを見る。


 そこには。


 まだ文字が残っている。


 『世界を――選ぶために生まれた』


「どうして……」


 私は呟いた。


「私なんかを……」


 その時。


 空から。


 巨大な影が降りてきた。


 ――ドォン!!


 広場の石畳が砕ける。


「――っ!」


 全員が武器を構えた。


 そこに立っていたのは。


 一人の女性だった。


 黒い翼。


 長い紫色の髪。


 赤い瞳。


 黒い鎧。


「魔族……」


 シエラが呟く。


 女性は私を見る。


「……ミア・ルナベル」


「はい」


 私は答えた。


「あなたは?」


「名乗る必要はない」


 女性は剣を抜いた。


「お前を迎えに来た」


「……迎え?」


 女性は頷く。


「魔王陛下の命令だ」


 レオンが前に出る。


「ミアには手を出させない」


「人間の冒険者ごときが」


 女性の魔力が膨れ上がる。


 ――ズズズズズ……。


 周囲の空気が震える。


 冒険者たちが。


 次々と膝をついた。


「うっ……!」


「なんだ、この魔力……!」


 私は。


 その女性を見ていた。


 怖い。


 確かに怖い。


 でも。


 それ以上に。


 不思議だった。


「……あなた」


 女性が私を見る。


「何だ?」


「泣いてますよ?」


「……え?」


 女性が頬を触る。


 本当に。


 一筋の涙が流れていた。


「……なぜ」


 女性自身も驚いている。


「私……」


 涙を拭う。


「お前を見ていると……」


 苦しそうに顔を歪める。


「なぜか、悲しくなる」


「……?」


 私は一歩近づいた。


「もしかして……」


 私は聞いた。


「私のこと、知ってるんですか?」


「知らない」


 即答。


「でも――」


 女性は頭を押さえた。


「知っている気がする」


     ◇


 その瞬間。


 空から。


 無数の魔族が降ってきた。


「囲め!」


「ミア・ルナベルを確保しろ!」


「殺すな!」


 私は驚いた。


「殺さないんですか?」


 女性が答える。


「魔王陛下はお前を殺せとは言っていない」


「……じゃあ何を?」


「連れて帰れと」


「どこへ?」


「魔王城へ」


「嫌です」


 私は即答した。


「そうか」


 女性が剣を構える。


「ならば――」


「待ってください」


 私は手を上げた。


「どうして私を魔王城へ?」


 女性は黙った。


「……知らない」


「え?」


「私たちにも理由は知らされていない」


 女性は私を見る。


「ただ一つ」


「何ですか?」


「魔王陛下は――」


 女性の声が低くなる。


「お前を恐れている」


「……私を?」


「そうだ」


「どうして?」


「それは――」


 女性が答える前に。


 空から。


 別の魔族が降りてきた。


「セレナ!」


 女性が振り返る。


「時間がない!」


「分かっている」


「対象を確保しろ!」


「……」


 女性――セレナは。


 しばらく私を見つめた。


 そして。


「ミア・ルナベル」


「はい」


「一つだけ忠告する」


 剣を下ろす。


「今のお前は、自分の力を知らなすぎる」


「……」


「もし完全に目覚めれば――」


 セレナは。


 苦しそうに目を伏せた。


「魔王軍どころか」


 一瞬。


 空を見上げる。


「神々さえ動く」


「……神様?」


「そうだ」


 そして。


「だから――」


 セレナは翼を広げた。


「今はまだ、眠っていろ」


 ――バサッ!


「待って!」


 私は叫ぶ。


 でも。


 セレナは空へ飛び去っていった。


「……行っちゃった」


 クロエが呟く。


「敵なのに……」


「最後まで戦う気がなかったように見えた」


 シエラが言う。


「何か知っているのかもしれない」


 私は。


 遠ざかるセレナを見る。


 すると。


 彼女の背中に。


 小さな紋章が見えた。


 私の短剣と同じ。


「……また」


 私は短剣を見る。


「同じ紋章……」


     ◇


 魔族たちは。


 まだ残っていた。


「ならば!」


 別の魔族が叫ぶ。


「我々だけでも確保する!」


 魔族が一斉に襲ってくる。


「来るぞ!」


 レオンが叫ぶ。


 ガルドが盾を構える。


 クロエが短剣を抜く。


 シエラが詠唱を始める。


 アリシアさんも剣を構えた。


「ミア!」


 レオンが振り返る。


「絶対に離れるな!」


「はい!」


 戦いが始まった。


 ――キィン!


 ――ガァン!


 ――ドォン!


 魔族たちは強かった。


 昨日の敵とは比べ物にならない。


「くっ……!」


 レオンが押される。


「レオン!」


 ガルドが助けに入る。


「俺が止める!」


 シエラの魔法が飛ぶ。


「氷結!」


 魔族の足が凍る。


「今よ!」


 クロエが背後から攻撃する。


 連携。


 私たちは。


 少しずつ強くなっていた。


 でも。


 敵の数が多すぎる。


「まだ来るの!?」


 クロエが叫ぶ。


 私は。


 仲間たちを見る。


 傷ついている。


 疲れている。


「……」


 また。


 守らなきゃ。


 そう思った。


 私は。


 一歩前へ出る。


「ミア?」


 レオンが振り返る。


「私がやります」


「何を?」


「みんなを守ります」


 私は。


 短剣を抜いた。


 すると。


 空気が変わった。


 ――ドクン。


 ――ドクン。


 短剣が光る。


 魔族たちが。


 一斉に動きを止めた。


「な……」


「なんだ……?」


 誰かが呟く。


 私は。


 ただ。


 短剣を握った。


「……帰ってください」


 静かな声。


「私の仲間を傷つけるなら――」


 私は。


 少しだけ力を込めた。


「帰ってください」


 ――ズン。


 地面が揺れた。


 次の瞬間。


 王都を包んでいた黒い雲が。


 一瞬で。


 消えた。


「…………」


 空が。


 青くなる。


 魔族たちは。


 全員。


 その場に膝をついていた。


「……何だ」


「身体が……動かない」


「この圧力……」


 私は。


 何もしていない。


 ただ。


 お願いしただけ。


 なのに。


 誰も動けなかった。


 アリシアさんが。


 震える声で呟く。


「……これが」


「?」


「あなたの力……」


 私は首を傾げる。


「でも、押してませんよ?」


「…………」


 レオンたちは。


 もう何も言わなかった。


     ◇


 その頃。


 魔王城。


「……報告します」


 セレナが跪いていた。


 玉座には。


 魔王。


「どうだった?」


「ミア・ルナベルを確認しました」


「そうか」


「ですが――」


 セレナが顔を上げる。


「確保できませんでした」


「……理由は?」


「まだ」


 セレナは。


 言葉を選んだ。


「完全には目覚めていません」


「それなら問題ない」


「いいえ」


 セレナの声が震える。


「問題があります」


 魔王が眉をひそめる。


「何だ?」


「彼女は――」


 セレナは。


 自分の腕を見る。


 さっきから。


 ずっと震えている。


「ただ一言、命令しただけで」


「王都を覆っていた魔力を――」


 セレナは。


 ゆっくりと言った。


「消しました」


 魔王の顔から。


 笑みが消えた。


「……そうか」


「はい」


「ならば」


 魔王は立ち上がる。


「予定を変更する」


「?」


「人間の王国を攻める必要はない」


 魔王の目が。


 赤く輝く。


「先に――」


 そして。


 恐ろしい言葉を口にした。


「神界へ使者を送れ」


 セレナが息を呑む。


「……神界へ?」


「ああ」


「まさか……」


「そうだ」


 魔王は。


 玉座から王都の方角を見つめた。


「――あの娘が目覚める前に」


「神々と話をつける」


     ◇


 同じ頃。


 王都。


 私は宿へ戻っていた。


 疲れた。


 今日は本当に色々あった。


 私はベッドに座る。


 そして。


 母さんのことを考える。


「……ルナ」


 銀色の羽を握る。


「あなたは……誰なの?」


 その瞬間。


 窓の外。


 月が赤く染まった。


 ――ドクン。


 短剣が。


 また震える。


 そして。


 聞こえた。


 あの声。


『――第二封印』


『解除条件を確認』


 私は。


 息を止めた。


『――母の記憶』


「……母さんの記憶?」


 短剣が。


 淡く光る。


『次の目的地を指定』


 一瞬。


 頭の中に。


 一つの場所が浮かんだ。


 ――白い森。


 ――その奥にある巨大な湖。


 そして。


 湖の中央に浮かぶ。


 一つの小さな家。


『目的地――』


『ルナの眠る場所』


 私は。


 目を見開いた。


「……母さんが?」


 まだ私は知らない。


 その場所に。


 私が生まれた日の秘密が。


 眠っていることを

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