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元傭兵(男)ですが、公爵令嬢は無理です‼️  作者: くいたん
スピンオフ 幼馴染が近すぎて無理です‼️

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第1話 柱の影のエルマ

幼馴染が近すぎて無理です‼️ (元傭兵のスピンオフです)こちらに引っ越しました。

2話以降はこちらからどうぞ。

https://ncode.syosetu.com/n1674mi/


夜会の音楽が流れている。


優雅だった。


実に優雅だ。


王都でも有数の名門貴族達が集う夜会。


煌びやかなシャンデリア。


磨き抜かれた大理石。


柔らかく混ざり合う香水の匂い。


色鮮やかなドレス。


絶え間なく続く笑い声。


洗練された会話。


完璧な社交空間。



――そのはずだった。



少なくとも、周囲にとっては。


「…………」


柱の影。


ひとりの女性が、静かに立っている。


地味な灰色のドレス。


まとめすぎた黒髪。


厚底の丸眼鏡。


目立たない立ち位置。


誰の記憶にも残らないような、存在感を消した立ち姿。



だが。


その内面は今。


大災害だった。


視線の先。


赤い髪の騎士――カイル。


そして。


その隣には、クラリス。


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」


声にならない悲鳴が、脳内を高速で駆け回る。


(無理無理無理無理無理無理)


(近い)


(距離が近い)


(なんですかその自然な距離感)


(夫婦ですか???)


(いや違う)


(違うけど)


(違わなく見えるんですよ!!)


クラリスが、静かにカイルの袖を整える。


その仕草が、あまりにも自然だった。


気負いもなく。


迷いもなく。


まるで昔からずっとそうしてきたかのような距離感で、彼の隣へ立っている。


呼吸をするような自然さだった。


「本日は視線が多めです」


クラリスが静かに言った。


「そうか?」


「はい。特に女性方から」


「……勘弁してくれ」


困ったように笑うカイル。



その瞬間。


エルマは壁へ頭を打ちつけそうになった。


(その顔ーーーーーーーー!!!)


(昔からそう!!!)


(そういう困った顔する!!!)


(なんで覚えてるの私!!)


(十年前の顔まで鮮明なんですけど!!)


(助けて!!)


ハンカチが握力で潰れていく。


近くを通りかかった貴婦人が、ちらりとこちらを見た。


「……具合でも悪いのかしら」


違う。


恋患いである。


しかも重症。


慢性化している。


完治の見込みはない。


エルマは静かに息を吸った。


落ち着け。


二十三歳だ。


淑女たれ。


冷静に。


優雅に。


社交的に。


「…………」



無理。



クラリスがまた近い。


近い近い近い近い。


なんでそんな自然に隣へ立てるんですか。


なんでそんな平然としていられるんですか。


私は今ここで過呼吸寸前なんですが。


カイルがグラスを取る。


その瞬間、クラリスが半歩だけ前へ出て、人の流れを自然に避ける。



完璧。



連携が完璧。


「〜〜〜〜〜っ!!」


(連携ーーーー!!)


(連携が自然!!)


(戦友なの!?)


(夫婦なの!?)


(まだ違う!!)


(でもお似合い!!)


(キーッ!!)


だが表面上は。


「…………」


無。


完璧な無表情。


もはや職人芸である。



その時だった。


クラリスが、ふとこちらを見た。


エルマの全身が凍る。


(ヒィッ!?)


視線が合った。


終わった。


死んだ。


今ここで社会的に死ぬ。



だがクラリスは、わずかに目を細めただけだった。


「どうした?」


カイルが尋ねる。


「いえ」


クラリスは淡々と答える。


「左後方より極めて強い感情圧を感知しております」


やめてください。


「感情圧?」


「はい」


クラリスが静かに続ける。


「敵意ではありません」


「じゃあ何なんだ」


「…………」


ほんの少しだけ考え。


真顔で告げた。


「長年熟成された執念に近いものかと」


「怖ぇよ」


カイルが苦笑する。



その笑顔を見た瞬間。


エルマは心の中で崩れ落ちた。


(好き)


(無理)


(なんでまだ好きなんですか私は)


(十年以上ですよ)


(正気ですか)


(正気じゃないですね)


(知ってました)


思い返せば。


最初は、本当にただの幼馴染だった。


泥だらけで走る少年。


木剣。


怪我。


笑顔。


ぶっきらぼうなくせに、妙に優しいところ。


気づけば。


ずっと見ていた。


ずっと。


本当にずっと。


騎士見習いになった日。


制服姿を見た瞬間。


「あ」


と思った。


人生終わった、と。



その日からずっと終わっている。


なのにまだ好き。


どういうことなの。


呪いなの。


そして今。


二十三歳。


未婚。


縁談は全部断った。


母には呆れられた。


『まだ好きなの?』


好きですが???


むしろ悪化していますが???


その時だった。



「……あ?」



不意に。


カイルがこちらを見た。



エルマの呼吸が止まる。



「どっかで見たことあるな」



やめて。


「…………」


やめてください。



「お前――」



やめろーーーーーーーー!!!


※脳内参考画像

挿絵(By みてみん)

お読み頂きありがとうございます。

★★お待たせしました、今度はカイルの番デスよ〜★★


しばらくしたら、とか言ってなかったっけ? と言うツッコミは受け付けておりません。

待て、が出来ない人間です。ごめんなさい。


1日1話の更新を目指します。

よろしければ、ブックマークなどしてついでに★を入れて頂けると嬉しいです。(*'▽'*)

感動をお求めの方は、境界に眠る光を宜しくお願いします。

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