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4-18 蛇の魔物

ちょっと、推敲が追いついていないので、後でちょこちょこ直しが入るかもしれないです……


「あの蛇!それに、あいつらまだ蛇に絡まれてたのか!!」

「襲われてるのは、君の班のメンバーか?」


 俺の問いに、怪我人の彼が頷く。そして、ホイッスルを思い切り吹いた。

 しかし当然、すぐに助けは来ない。

 蛇の魔物は怪我人の彼の班員達を執拗に追いかけ回しており、逃げる彼らを追って別の横穴へ入って行ってしまった。


 幸い蛇は俺達に興味を示さなかったが、怪我人の彼がどうしても班員達を助けたいと言い出した。


「お願いです!一緒にあいつらを助けてください!!貴女の支援魔法があれば、俺達でもあの蛇を倒せると思うんです!!」


 頭を擦り付けるように懇願する彼に、マリーは無表情な瞳を向ける。


「できません。私達の目的は、無事にこのダンジョンから脱出することです。今いるメンバーを守ることで、私は精一杯です。彼らのことは先生方に任せましょう」


「でも、先生方は今すぐに来てはくれないだろう!その間にあいつらが死んだら、俺はやり切れない……」


 死んだら……その言葉に、俺の息がヒュッと止まる。動悸がしてきて、冷や汗も出てきた。誰かが傷付いていると考えるだけでこうなってしまう。


「それに、ホイッスルを吹いたのは俺だ。俺があいつらの側にいなきゃ、救助の先生も来られないかもしれない」


 確かにそうだ。あのホイッスルがどういう仕組みかは分からないが、吹いた本人の場所に助けが来るものと考えるのが自然だろう。蛇から必死で逃げている彼らがホイッスルを吹けているか分からないし、怪我人の彼が側にいた方がいいはずだ。


「では、一人でお行きなさい。私には、班員を守る責務があります。貴方に付き合うことは出来ません」


 俺達を守るための言葉だろうが、マリーの言葉は酷く冷たく聞こえた。

 怪我人の彼は悔しそうな顔をして、

「分かりました。一人で行きます」

と言って歩き出した。


 そんな彼の背中を見ながら、俺の鼓動はどんどん大きくなっていく。

 脳裏に浮かぶのは、蛇に追われてボロボロだった彼等の姿と、怪我をして動けなかった時の彼の様子。そして、エマに助けられる前の、猪に跳ね飛ばされた生徒達の姿。もしも助けが無かったら、彼等はどうなっていたのか。


 ああ、いやだ。耳鳴りがする。

 もう誰も、傷付いて欲しくないーー……


「一緒に行こう!」


 気がつけば、彼の背中にそう叫んでいた。


「ルカ!?」


 思わず、といった様子でマリーが声を上げる。そんな彼女の漆黒の瞳を真っ直ぐに見て、俺は訴えた。


「ごめん、マリー。君が俺達の安全を優先して言ってくれてたのは分かる。でも……蛇に追いかけられる彼等の姿が、頭から離れないんだ」


 俺の言葉に、マリーは困ったように眉を下げた。


「魔物を追いかけた時に、一番危険なのはルカだわ」


「分かってる。でも、俺が行ったらマリーはついて来てくれるだろう?守ってくれるんだもんな?」


 心配そうな声を出したマリーの肩に手を置いて、瞳をじっと見つめながら言うと、彼女は少し頬を赤らめて、恥ずかしそうに視線を外した。


「それは……勿論。ルカのことは絶対に守るけれど……」

「うん、信じてる。ごめんな、わがまま言って」


 尚もじっと見つめたままそう言うと、逸らされたマリーの瞳がこちらを向いて、目が合った。にこりと微笑むと、マリーは顔を真っ赤にして両手で顔を覆ってしまった。


「うぅ、ルカにそんな顔されたら、私、断れないわ!」


 俺の彼女は可愛いなぁ。

 それに、マリーの今の気持ちはすごく分かる。俺もマリーにお願いされたら、なんでも聞いてしまうだろうから。俺達似た者カップルだな。


「マリーを説得したから、俺達もついて行くよ。皆いいよな?」


 他のメンバーに一応確認を取ると、皆当然だというように強く頷いた。そして何故か、生温かい目で見られているのを感じる。


「もう隠す気無いよね?二人とも。皆が平民で良かったね」


 ピーターが言外に「貴族間の婚約話に疎い平民で良かったね」と言っていたが、その頃には皆歩き始めていたため、誰も気にしていなかった。


「こっちから回り込もう」


 誰よりも早く歩き出した怪我人の彼が、洞窟の奥の方に向かいながら言う。


「あの横穴は、こっちの洞窟の奥に繋がってるんだ。俺達、チェックポイントの場所が分からずにぐるぐる回ったから、間違いない」


 言いながら怪我人とは思えないスピードで進む彼に、俺達はついて行く。暫く行くと、開けた空間に出た。そこでは、蛇の魔物とボロボロの生徒達が戦っていた。

 戦っているとは言ったが、生徒側はほぼ逃げ惑っていると言った方が正しい。皆の視線は襲い来る蛇の魔物のみに向けられ、俺達が来たことには気付いていないようだった。


「皆!!」


 ボロボロの彼等の方へ、怪我人の彼は駆け出す。そして、蛇に向かって手を伸ばし、小さく「ファイア」と唱えた。


 ささやかな火が、蛇の魔物に灯る。到底蛇を倒せそうに無い火魔法だったが、蛇の意識を彼に向けるには充分だった。


 蛇の魔物は攻撃者である怪我人の彼を認識し、こちらに標的を変えてきた。


「なんて余計な事を!!」


 マリーが言った。

 だが、言いながら彼女は怪我人の彼に支援魔法を掛けたらしい。彼がもう一度放ったファイアは、先程とはかけ離れた強威力のものだった。

 それでも彼一人の魔法では、蛇の魔物を倒すことは難しい。


 マリーが鋭い声で皆に叫ぶ。


「皆様、魔法威力増と身体強化の支援魔法を掛けます。全力であの魔物を倒して下さい!!」


 マリーの声と共に、皆が動く。掛けられたマリーの支援魔法の威力に驚きながらも、なんとか蛇の魔物に喰らい付いていた。

 しかし、彼等は皆素人だ。恐怖もある中、強い魔物を相手に苦戦している。


「ルカ、危ないから、壁際に下がっていて頂戴」


 マリーが俺を庇うように後退させ、壁際に押し寄せた。マリーの言うことに従い、俺は壁際で大人しくしておくことにする。俺に出来ることは何も無いのだから仕方ないのだが、歯痒くて仕方ない。

 俺は唇を噛み締めながら、皆が戦うところを見つめていた。その時だった。


「え?」


 洞窟の壁に当たった肩に、何か違和感があった。カチリと、何かスイッチを押してしまったような、そんな感覚が。


 と、次の瞬間、自分の足元の床が消えた。


「うあぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー……」


 俺はそのまま、下に落下した。


お読み頂きありがとうございました♪


蛇の魔物は、一応「シルバースネーク」という魔物なのですが、メンバーに魔物に詳しい人間がいない為、ずっと蛇の魔物と呼んでいます。


ルーカスが落ちたところで続きます。次回もよろしくお願いします。

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