第二章‐7
「増援が来るまでここを守り切らねばならないっ」
スラッグが殺し損ねた残りの七体は出遅れた他の八人の前に迫った。ルックは速い。しかし今目の前にいる個体はいつもより更に速い。けれどもここにいるハンター達の方が更に強かった。
グラスレットで後方射撃を行った俺を除く七人がそれぞれ一体ずつあっさりと殺した。大型専門の手にかかればいくら狂暴化しようと中型モンストラクターはすぐに片付く。
「あとはスラージがハンターを連れてくるのを待つのみか」
それから十分な人数が集まるまで約十分を要した。またもタイムロスだ。ヘリオスの防衛に実力者が集まってゆくのを見届けながら十人で今度こそ森の中へ突入した。
「なんだ、この森」
森に入った途端、違和感が覆い尽くす。気持ちが悪い。俺が初めて森で目覚めた時のように知ってるようで全く違うものの中にいる感覚。森自体が変質してしまっているように俺は感じた。
「キヌト……か」
俺達の前に明確な違和感が現れた。それはどうやらキヌトのようではあるが、俺が知るキヌトとは違った。普段なら警戒心のかけらもなく親しみやすすぎるくらいの小動物なのだが、目の前でこちらを睨む姿からはそんなもの微塵もない。警戒心むき出しで今にも襲いかかってきそうだ。
「モンストラクターが狂暴化って、キヌトですら影響を及ぼすってのか」
飛び掛かってきたキヌトを小型エッジライナー、エッジポストで切りつけながら呟く。ホイーラーを繋いである場所へと向かった。
「でも、不思議なくらいホイーラーは変わってないな」
人間に唯一乗り物として飼われているモンストラクターはなにひとつ変化がない。だが助かった。皆ホイーラーに乗って目的地まで走っていく。
目的地までなんとか全員無事に来ることはできたのだが、皆疲労困憊だった。誰もがモンストラクターの急激なスペック上昇に追いつけないでいる。今まではどの個体も決まった動きしかしなかった。体の大きさが違っても種類の範囲内であれば差は全くなかった。だからその動きを把握して安定した狩りができていた。だが今のモンストラクターは、簡単に言えば小型は中型、中型は大型の肉体強度、強さになり行動力が大幅に変わり今までと全く異なる動きをするため今までの狩り方が通用しない。新たに、瞬時に倒し方を編み出さなければいけない。考える必要が殆どなかった故に急激な頭脳労働は相手の強さと共に大きな疲労の原因だった。
「無事のようだ」
取り残された三人のハンターは木の上の方へと避難してなんとか生存していた。しかし大型モンストラクターが木に群がって救助ができない。
「狩り尽くすぞっ」
木に群がっていたのはマキムダイス、オーレンフライル二体の合計三体。周囲にはスクライブ、矢の残骸が散乱している。攻撃を打ち消すので精一杯だったらしい。そして他にも、
「コウっ、後ろだっ」
スナールの声で咄嗟に振り向き、エッジポストで防ぐ。だが勢いは殺しきれずホイーラーの上から落ちてしまう。飛び掛かってきたのはグラック。跳躍力に長けているため、すぐ傍で飛び込んで来られると衝撃が強く、防御を誤れば腕なんて簡単に折れる。直前に存在を確認していなければと思うと肝が冷える。
グラックの顔面を切り付けつつ勢いを半減させたのだが、視界を奪われたにも関わらず再び跳躍し俺に飛んでくる。なんとか体を逸らせて避けられたがやはりグラックも身体能力が向上している。
「インスプロイドを貸してくれスナールっ」
最も近くにいたスナールに頼みインスプロイドを投げ寄越してもらう。
それだけ速ければ十分威力は出るはずだ。また飛ぶ動作をするグラックに今度は避けず真正面から立ち向かいインスプロイドを向ける。一瞬で迫り接触したグラックに対して、起動したインスプロイドは牙を剥く。中心から太い杭が突出しグラックの頭部を破壊する。力なく地面に落下したグラックは顎部から喉の一部まではじけ飛び息が漏れていた。もう起き上がることはないと大型モンストラクターに向かおうとしたとき、顎が無いグラックが立ち上がった。
「逃げられない理由はこれってか」
スナールが苛立たしげに言う気持ちもわかる。グラックは周辺に数体徘徊している。グラックの跳躍力は高いがチャージャーで移動する高さまではほぼ届かないのだが、救助を待つ彼らが木の上に留まっていることから今のグラックは届くことを示唆している。現に木と木の間の地面に食い潰された人間らしき死体が転がっている。恐らくそういうことなのだろう。そもそもグラックは草食だったのだが。
なんとかグラックの首を切り落として三体のモンストラクターに立ち向かう。皆ホイーラーから降りて予備の武器を木の根元に置いていく。
「全くこっちに目を向けないでやがる。よっぽど目の前の獲物が魅力的に見えてるんだな」
「ふざけるなスナール。仕掛けるぞ」
スラッグ指揮の元、俺達は狩りを開始した。




