第二章‐6
森に異変が起きたのは、会議を行ってから数日後。俺達がその知らせを受けたのは朝食を口にしている最中だった。仲間が危険に晒されていると森から助けを呼びに来たハンターが、最も頼りになるハンターとしてスラッグを尋ねてきた。
「急ぎの用だな、準備するからかいつまんで話せ」
助けを乞うたハンター、キームにスラッグはそう言って、俺達は食べかけの朝食を名残惜しく皿の上に置いてそれぞれ準備に取り掛かった。
十数分後。スラッグによりハンターが召集されそこで順を追って説明がなされた。
キームによればこういうことらしい。朝早くモンストラクター狩りに出ていたキーム達だったが、中型区域なのにも関わらず大型種が現れた。既に木の上に登っていた者達にモンストラクターは近寄り、地面に立っていた者には気付かれていないのか寄らなかったため助けを呼ぶように言われ現在に至る。
「中型区域に大型だと、何の冗談だ。今までそんなことなかったろう」
スナールは同意を求めるように周りに問いかける。その通りなので皆頷く。
「ああ。今回が初の事例ということになるんだろうな。モンストラクターは通常より狂暴性が増していて勝てる気がしないとのことだ。元々中型までのモンストラクターが専門のハンターだけなことも大きな理由だが……」
通常なら、大型、中型、小型はそれぞれの範囲で生活しており、食物連鎖もその内だ。森から出ないことといい何故そこまで徹底されていたのかは不明だが、そういうものだと何十年も聞かされ、そして見てきた人間にとってそれはごく当たり前のことで今回のようなことは想像すらされていなかっただろう。
「ともかくだ。俺達は大型に襲われて動けないでいる仲間を助けに行く必要がある。どれほど狂暴化しているのか不明なため皆にきてもらった」
スラッグに召集されたのは共に住む俺は勿論、スナール、スワープ、ケイノウ、エッケンラート、クルツルト、イクリエ、トスツ、ネイリー。計十人という、普段では考えられない数だ。しかも全員大型を主な狩り対象にしている人間が集められている。用心に越したことはないと考えた結果だ。
「皆、準備はいいだろうな」
「当たり前だ、外には万全にしないと出られない性分でね」
「早く行こう。無事であることを祈る」
キームが森から出て、助けに行くまでの説明で三十分以上は掛かってしまっている。ここから向かっていくとどんなに早く行ったとしても、事の発生から一時間近く経つ。狂暴化していることから既に手遅れである可能性も高かったが、ハンターの生存力を期待してスラッグ指揮の元、森へと向かっていった。問題は俺達がヘリオスから出る直前に起きた。
「どういうことだ」
向かっていた先、森の中からモンストラクター、ルックが次々に現れたのだ。モンストラクターは今まで、その存在が確認されてから一度として森から外に出たことはなかった。人間に使役されているホイーラーでさえ死ななければ引っ張り出すことは叶わなかったのにも関わらず、俺達の目の前でルックが何体も森から走り出してヘリオスへと向かってきている。
「幸先の悪い……」
森からヘリオスまで百メートルあるかないかくらいの距離で、ルックの走る速度なら十秒と掛からない。まして、今のルックだと更に速い。
「おい、いつもより速いぞっ」
「これが狂暴化かっ」
皆即座に武器を構えて立ち向かう。俺はグラスレットで神経麻痺を起こさせ
る矢、エスターンを次々に放っていく。正面を走る四体にエスターンが刺さり無様に地面を転がる。つられて転ぶ後続もいるが後ろの方にいたルックは飛び越えて向かってくる。それらにエスターンを打ち込む。これでヘリオスに近づく時間を遅らせ余裕を持って狩るのだ。しかし。
「へぇ、回復が早いね」
本来であればエスターンがルックに及ぼす時間はおよそ三分。刺さる部分で多少変わるが大体はそうだ。なのに、今エスターンが体に刺さっているルックは転がっている効果が切れたように、勢いが止まった次の瞬間には立ち上がり走り始めた。早い、早すぎる。
「狙い目なのは変わりないっ、皆仕留めろっ」
真っ先に駆けだしていたスラッグはルックが起き出した直後にエッジライナーで四体を薙ぎ殺した。
「トスツ、ハンターを集めろ、また出て来られたら大変なことになるぞ」
俺達は早く森の中にいかなければいけない。しかし、またモンストラクターが森から出てこないとは言えない。むしろ出る可能性の方が高かった。指示を受けたトスツは反転してヘリオスの奥に消えていった。




