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僕をゴミ扱いした幼馴染を見限り、隣の地味な転校生を垢抜けさせたら美少女になって懐かれました  作者: おなきく


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11/18

第11話 思いがけない宿題の答え

 あれから数日が過ぎ、週末を迎えた。

 その間、水田(みずた)さんが僕のところへ来ることはなかった。

 ただ、配信を覗いてみると、僕のアドバイスどおりにいろいろ試しているようだった。

 歌枠もやっていたので少し聴いてみたが、ひとつだけすぐに気づいたことがある。

 ……水田さん、歌は無理だな。


(こうやって学んでいくことも大事だからな)


 実際のところ、何がウケるかなんて、運に左右される部分も少なくない。

 何ヶ月もかけて準備した企画が、まったく反応を得られないこともある。

 逆に、数日で思いついたものを適当に形にしただけなのに、妙に熱狂的にウケることもある。

 結局、配信のコンセプトがしっかりと固まるまでは、あれこれ試してみるしかない。

 何が自分に向いているかも、やってみなければ分からないのだから。


(宿題は来週中には仕上げてくれるかな)


 特に期限を明示してはいない。

 そもそも本当の意味での宿題というより、自分を深く見つめ直してほしい――そういう意味合いのほうが、ずっと強かった。

 何より、水田さん自身の意志こそが肝心なのだから。


(今日は久しぶりにゲームでもしようかな)


 以前なら、この時間は結衣(ゆえ)とテルコの配信企画やスケジュールを組むのに費やしていた。

 しかし、今はもうその必要はない。

 週末も完全に僕だけの時間になった。

 だから、これまでやりたくてもできなかったことを、一つずつやっていこうと決めていた。


 ディスクをセットしてコントローラーを握り、ゲームを起動した。


「レオンもだいぶ老けたな」


 今日僕が選んだのは、最新のゾンビゲームだった。

 久々にまともにゲームをするからか、いつもよりずっと面白く感じる。

 以前なら、配信映えしそうな場面を頭の中で切り取っていたはずだ。

 今はただ、純粋にプレイを楽しめばいい。


「うわっ、びっくりした」


 突然飛び出してきたゾンビに、思わず体がすくんだ。

 ホラー要素もなかなか本格的だな。

 ……気づけば、「こういう場面でリアクションを見せればリスナーが沸くよな」などと、配信者目線で考えてしまっていた。


(早く本当の意味で結衣から離れないとな)


 未練ほど馬鹿げたものはない。

 失恋なんて、早く吹っ切ったほうが自分のためだ。

 そう自分に言い聞かせながら、ゾンビに容赦なくショットガンを撃ち込んでいた、その時だった。


 ピンポーン――


 玄関のチャイムが鳴った。

 宅配便の予定なんて、特になかったはずだ。

 首を傾げながらインターホンに向かうと、妙な既視感を覚えた。

 まさか……。


「あ、あの……。水田ですぅ……。宿題、持ってきたんですけどぉ……」


 相変わらず髪はぼさぼさのまま、水田さんがもじもじと玄関先に立っていた。

 来てくれるのは構わないが、事前に一報くらいはほしかった。

 いや、よく考えたら、そもそもお互いの連絡先を知らないんだった。


 玄関を開けるなり、水田さんは勢いよく頭を下げ、袋をぐいっと突き出してきた。


「こ、これ、供物です!」

「いや、供物って……」


 彼女が差し出した袋には、いろんな種類のパンがぎっしり詰まっていた。

 僕も父さんもこの店のパンが好きだし、何より食費が浮くからありがたい。


「へへ、だって私にとって小町(こまち)さんは、VTuberの神様みたいな存在ですから」

「それ、本職の人が聞いたら鼻で笑いますよ」

「だ、大丈夫ですぅ……!」


 水田さんが、いつも以上に目を見開いて声を張り上げた。


「わ、私が有名になれば、小町さんも一緒に有名になるんですから……!!」


 真剣な表情の彼女。

 瞳に宿る情熱が、僕にもそのまま伝わってきた。

 僕の顔にツバも大量に飛んできたけど。


「いや、普通裏方は有名にならないですから」


 有名になるどころか、担当ライバーとほとんど面識がないケースだって珍しくない。


「え? そ、そうなんですか?」

「それに、うっかり失言でもして炎上を招くことだってありますからね」

「ひえっ……」


 結局、裏方は裏方だ。

 一番重要なのはライバー本人。

 そこを履き違えれば、少し前に結衣に切り捨てられた僕と同じ轍を踏むことになる。


 この前と同じように、水田さんをリビングへ通した。


「こ、これはレクイエム……!」


 テレビに映し出されたままのゾンビゲームを見て、彼女は目を輝かせた。

 一目で分かるあたり、間違いなくゲームオタクだ。


「私、これ3周目までやりました。ここでこの後レオンが――」

「いやいやいや、ネタバレだけは勘弁してください」

「じょ、冗談です」


 全然冗談に聞こえなかったけど。


「でも、それじゃあ配信ではオーペックス、プライベートではレクイエムをやってたってことですか?」

「……はいぃ。やっぱりレクイエムも配信でやった方がよかったでしょうか?」

「まあ、それもありますけど、そもそも時間が足りますか?」


 3周目までやったなら、相当な時間を費やしたはずだ。

 昼間は学校で、夜は配信をしているのに、ゲームをやる時間なんてあるのか?

 それとも休みの日にまとめて?


「そ、それは当然、配信が終わった後の深夜に……」

「え? 寝ないんですか?」

「学校で寝れば十分ですからぁ……!」

「……」


 学校は寝る場所じゃないんだけど。

 まあ、人のことは言えないか。

 僕も結衣の活動を全力で手伝っていた頃は、学校で居眠りばかりしていたし。


「それじゃあ、宿題を見てみましょうか」


 本題に入るため、コントローラーのホームボタンを押してゲームを中断した。

 すると、水田さんが目を丸くした。


「え、もうやらないんですか」

「……水田さんの宿題が先ですから」

「え、でも10分だけ」

「そんなことしてたら日が暮れますよ。それに水田さん、もう3周もやってるんじゃないですか?」

「そ、そうなんですけど、小町さんがどんなふうにプレイするのか見てみたくて……」


 どうせなら、僕のプレイより他のVTuberのゲーム実況を見たほうがずっと有意義だと思うけど。

 そこでふと気づいた。

 そうか。水田さんは今まで、友達らしい友達がほとんどいなかった。

 だから、誰かと一緒にゲームをするあの空気を、味わいたいのかもしれない。


「それなら、宿題を見て時間が余ったら、その時少しやりましょうか」

「は、はいぃ……!」


 彼女の表情がパァッと明るくなった。

 ……よく考えてみれば、この宿題だって彼女のVTuber活動のためのものなんだけどな。


「宿題、さっきのパンの袋の中に入ってます」

「なんでそんなところに……」


 席を立ち、パンの袋を置いていたダイニングテーブルへ向かった。

 袋の中には、二つ折りにされた紙が入っていた。


 開いてみると、さまざまな情報がびっしりと書き込まれていた。

 水田さんの誕生日を皮切りに、星座、血液型、はてはどこの幼稚園出身かまで。


「いや、これは……」


 その中のある項目に目が留まった。

 僕は思わず固まってしまった。

 三つの数字と一つのアルファベット。

 これ、どう見てもあれだよね?


「あの、水田さん。なんでスリーサイズをここに……」

「そ、それが、その……わ、私なりに自信がありまして」

「え? 自信ですか?」

「私、顔はちょっと微妙なんですけど……お母さん譲りで、スタイルだけは自分でもいい方だと思ってるんです!」


 確かにこのスリーサイズとカップ数を見れば、疑いの余地はないが……。

 これ、何かの罠か?

 実は裏で警察が待機してるとか?

 思わず、いつも以上に言葉を選んだ。


「確かに水田さん個人の長所ではあるんですけど……」

「そ、そうですよねぇ……!?」

「水田さんはVTuberとして活動するんですよね。生身が直接映るわけじゃないから、あまり意味が……」

「……あ」


 生身の姿を出さずに済むのが、VTuber最大のメリットでもあるというのに。

 ところが、水田さんが意外なことを口にした。


「じゃ、じゃあ私、体だけ映す形にしたら、ど、どうでしょうか?」

「え?」

「私、最近いろいろなVTuberさんの配信を見てるんですけど、顔は出さずに首から下だけ映すスタイルもあるみたいなんですよ」

「まあ、最近増えましたね」

「だ、だからぁ……!」


 水田さんは、自分の豊かな胸元を指でつつきながら言葉を続けた。


「2.5次元VTuberなんて、どうでしょうか……!?」

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