2. 小さな違和感
お店にもサインを書き、自分用に葛団子を購入しようと店主に相談する。
「10個入りと20個入りがありまして、20個入りは主に通販用です。パッケージも厳重にしているので、気軽に食べるなら10個入りがおすすめですよ。その分足も速いのでお早めにお召し上がりください」
なるほどと感心し、サエさんへのお土産用も含めて10個入りを2つ購入する。
帰宅後、サエさんへデータとお土産を渡し、後のことはお願いする。
すぐにSNSへ投稿され、「美味しそう」や「知ってる。私も食べたことあるけど美味しかった」などの味の感想から、「かわいい」「山ガールファッションってレアですね」など、服装の感想が飛び交っていた。
お取り寄せの情報も載せていたので、さっそく頼んだという声もあった。
数日間は葛団子をお供に、モーニングコーヒーをたのしんでいた。
香りは軽く、甘さの輪郭がきれいで、深煎りがすっと馴染んだ。
この快感が気に入り毎日楽しんでいたので、早々になくなった。
別のお菓子を探してみるのも良いが、もう少しあの味を楽しみたかった。
注文前にPCを立ち上げたついでに、SNSのチェックをしてみると、意外な反応があった。
『取り寄せてみたけど、緑子ちゃんの言うほど美味しくなかった』
『新参の店だし、やっぱり味落ちてきてない?』
『コーヒーと合わせたら変な味がした』
と違和感を感じる人が数人いた。
誰もがお取り寄せをした人だったが、同じお取り寄せをした人でも
『煎茶で頂きましたが、とても美味しかったです』
『オレンジジュースとも合いましたよ。リピートしそうです』
など絶賛している人もいたのだ。
不思議に思いながらも、通販用の20個入り冷蔵便を注文した。
そして後日、届いた葛団子を早速とばかりに自分で淹れたコーヒーと一緒にいただく。
ぷにぷにの団子にかぶりつくと、ぷりっとした弾力を感じ、それを突き抜けると前と同じように黒蜜のタレが口の中に広がる。
そしてコーヒーを一口……
「うっ」
黒蜜の雑味とコーヒーの苦みがお互い主張しあう。
鼻に抜ける香りもどこか低く沈んでいる。
葛団子を食べた時は、これまでと同じ期待感が高まっていただけに違和感がひどかった。
「コーヒーは私がいつも飲んでいるもので間違いないし、どういうことだろう」
私は葛団子を片付け、別のお菓子を取り出した。
別のお菓子なら、コーヒーはいつも通りの香りを立たせるはずだ。
それを確認したかった。




