3. 六華の里で
翌日、その日は時間があったので、午前中はのんびりすることに決めていた。
朝食にて、葛団子自体は美味しかったのでダメにする前に食べきってしまおうと、コーヒーではなく来客用に買ってある煎茶と合わせてで楽しむことにした。
「コーヒーと合わせた時は、店で食べた時と比べて黒糖の雑味が強く出たってことは、原因はお菓子側だと思うんだけど」
私は葛団子を鼻に近づけて匂いを嗅ぎ、一口食べる。
美味しい、団子自体には何の変化はなさそうだ。
「……ということがあったんですよ」
飲み合わせが悪くなった理由がわからず六華の里に行き、マスターへ愚痴をこぼしていた。
「コーヒーがそれだけ繊細な飲み物である証左だね。煎茶、お茶はなんでも包んでくれるおおらかさがウリの飲み物で、ジュースもそれ自体が味の強い飲み物だよね。 となると、問題は味そのものじゃない。どこか別の要素……。包装紙、包装材かな? そのあたりに答えがありそうかな」
「包装材……ですか」
「油脂の匂い移りは繊細でね。数日間、特定の包装材の近くに置けば、余計な匂いがのることがあるんだよ。私も若いころはそれでダメにした豆があってね。今の緑子ちゃんと同じで何が原因なのかが、分からなくてね。知り合いの珈琲マニアたちを集めて調べたことがあるんだ。結局、紙袋の接着剤やビニールの匂い移りが原因だった。広く普及して普段は問題にならない分、特定が厄介だったよ」
マスターの回答は意外なものだった。
それだけの違いで、ここまでの不協和が起こり得るものだという。
「お嬢さん、それってこの店のことでしょ? SNSで酷いバッシングがされているよ、……まあ、同じ奴が、毎日同じ時間に悪口書いているけどね」
常連のおじさんが言う通り
『味が落ちた』
『自然食品なんて嘘だ』
『伝統ある場所で虚偽商品を扱っているなんて信じられない』
という誹謗中傷が幾つも見られた。
しかし、コーヒーとの飲み合わせが悪いだけで、ここまでの批判は極端ではないだろうか。
店主は20個入りは通販用で厳重な包装をしていると言っていた。
確かに、10個入りと同じ包装はお菓子に直接触れる和紙のみで、プラの仕切りやビニールなどが追加されていた。
そのどれかが影響したのだろう。
「なら、また直接買いにいくしかないかな」
幸いこの後に予定していた仕事は、TV局のアンケートを埋めるものだったので、スマホでもできる内容だ。
電車の中でやろう。
そうして、最寄駅から果房こすもすのある駅へ向かうことにした。




