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琥翠緑子の珈琲事件簿  作者: Lazzrose
ラズベリーはどこから香る?
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25/29

2. 秘密のラズベリー畑

 いつもの夢のような雰囲気。

 しかし、私の姿は子供の姿ではなく、いつもの場所でもない。

 ここは、森の中だろうか。

 霧が濃く目の前でさえ危うい視界の中、足元の土で出来た道が見える。

 一歩一歩気を付けて道を進むと木製の門扉が見えてきた。

 門扉の脇にはかがり火がゆれており、ここは少し視界が広い。

 炎を眺めていると、門扉が自動的に、ゆっくりと開く。

 すると、『リリン』『リリリン』と鈴の音の様な音がしてきた。

 私は音に誘われるように、足が向かう。

 門扉を通り抜け、淡い紫の光がゆれているのが見える。


 鈴の音と連動しているようで、たまにタイミングが合わない。

 しかしそんな時は音も小さいのがわかった。

 私は鈴の音と光に招かれて、更に進むと急に視界が開けてきた。


 ここは……畑?

 等間隔に並んだ植物には実がついており、仄かに光っているように見える。


 先ほどの淡い紫の光はこの実だったんだ。

 近づいてよく見てみると、その実はラズベリーだった。

 呼吸するだけで、ベリーの香りが脳を覚醒させていく。

 現実のラズベリーではありえない程、香りと甘みの上昇軌道。

 日に入れたわけでもないのに、まるでサワーカクテルの原液シロップを口に入れたかのような濃さ。

 それでいて、息を呑むほどな高貴さ。

 全てが私の心拍数が上げていく。

 これは、この感じは……。


「誰じゃ、お前さん」

「! !」


 急な呼びかけにびっくりして声にならない声が出た。

 振り返ると、ボロを着たおじさんがいた。

 帽子を目深にかぶっており、表情が見えない。


 いや、よく見ると目が赤く光っている……宝石?

 目の正体に気づいた時、このおじさんの正体もわかってしまった。

 カカシだ。

 私はオズの魔法使いの世界にでも迷い込んだのだろうか。


「誰が、脳足りんのでくの坊だ。アレと一緒にするない」


 心を読まれた?  いや、感情をよまれたんだ。

 そして、オズの魔法使いに出てくるカカシの話も理解しているということは、このカカシのおじさんは物語の登場人物とは異なり賢いのだろう。


「す、すみません。ここは、王様の……畑ですか?」


 取り繕うためにとっさに出た言葉がコレだった。

 ラズベリーの実から王様の気配は確かに感じるので王様関係ということは間違いない。

 しかしここが何か正確につかめなかった。

 昔写真で見たコ一ヒー畑に似ているが、生っているものはラズベリーだ。

 まあ、畑であることには間違いないだろう。


「王様? うむ、そうじゃな主様はある意味、王じゃろう」


 カカシのおじさんは、王様のことを主様と呼んでいるらしい。


「ここは、主様のラズベリー畑じゃ。……なんじゃ、お前さん主様の●■●か」


 最後の方が聞こえなかった。

 いや、王様に聞かせてもらえなかったんだろう。

 私の正体がわかったようで興味を無くしたのか、カカシのおじさんは農作業に戻っていった。


「待って、ここはどこなんですか? またここにこれますか?」

「来れる時にしかこれん。そんなもんじゃ」


 おじさんの呟く様な声を最後に目の前がブラックアウトした。


 これが、メキシコについて初めてみた夢の内容だった。

 王様に近付いた気がした。

 ただの願望だったのかもしれない。


 でも、何かが変わる気がしていた。

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