3. いつもと違う王様の夢
その日の夜、私の夢に王様が現れた。
いつもの追体験。
それは私の記憶に明確にのこっている。
私の姿はいつものように当時の幼い姿で倒れている。
「キミは強い魂をしているねぇ、でもそれだと疲れるだろう」
王様は、今でも金髪で紫の瞳を携えた少女の姿で現れる。
醸し出す威厳、堂々とした立ち居振る舞い、どれもが王の気質を感じさせ、私はなんとか起き上がり跪いた。
「いい子だ。キミに特別な飴をあげよう」
王様が六弁の花をモチーフにした王尺を振り、私の手の中に紫に輝く飴玉が現れた。
この味が忘れられず追い求めてきた。
何度食べても色あせない。
「おいしい、これ何の味?」
「ボクの特別なラズベリーの味だよ。キミは今、とても大変な危機に対面している」
幼い私は頷くと、王様は言葉をつづけた。
「我慢なんてするもんじゃない。好きなお菓子を食べ、好きなことをやらなきゃ人生楽しくないだろう?」
今でも心の支えになっている私の指針。
幼い私と重なり深く頷き返す。
「逃げることも人生には必要なのさ、これは選択だ。選択には、必ず代償がある。でも、それを引き受けるのはキミだ」
王様は強く宣言し、一呼吸置き再び優しく語り掛ける。
「頭の良いキミにはわかるはずだ。我慢して、禁止の柵にとらわれ、義務を押し付けられる。ハッ、そんな縛られた人生は本当にキミの人生なのかい?」
私は横に首を振る。
「そうだ、今からキミは自由だ」
口の中の甘味が夢の中なのに眠気を誘い倒れる。
気が遠くなる幼い私だったが、その奥から、大人になった私が必死に手を伸ばした。
特別なラズベリーの、王様の秘密を教えてください。声にならずとも強く念じる。
王様は、相変わらず金髪で、紫の瞳を細めた。
私は、眠りに落ちる前の、ほんの数秒を取り戻す。
「おや、キミは一歩進んだようだね」
声は甘く、飴の縁のようにキラめいた。
「でもまだダーメ」
王様は微笑む。
その表情は、どこか試すようでもあった。
なぜ? 私は貴方をこんなにもお慕いしているのに……。
「甘いものは、焦らないほうがおいしいだろう?」
言葉が舌の上でほどけ、私は、落ちた。
夢の端に、ラズベリーの”高い香り”だけが残った。
……そうか。
私は、焦っていたんだ。
焦らずとも王様に想いが伝わるのなら、それでもいいのかもしれない。
いつか、もう少しだけ近づける日が来るのなら……。




