9話:始まり(回想)
――その日、亜希はたまたま家のポストに入っていたチラシを目にした……
「……不動産買取ります……査定は無料です……? 1そういえば、この家どうなるのかな……無料ならちょっと相談してみようかな……」
――亜希は正直どうしていいかわからなかった。先日、母親が亡くなり、気持ちの整理もつかないまま、葬儀を上げ終わったところだった。
「なんとか葬儀は終わったけど、これから何すればいいのかな? 多分、この家売らなきゃいけないよね……? あぁ~あ、一人ぼっちになっちゃったなぁ……」
母親は亜希が物心がつく前に離婚しており、父親は知らない。また、実家や親戚と縁を切ってるらしく、葬儀を手配してくれた母親の職場の人が連絡しても反応が無かったらしい……
「あぁ~、なんかよくわからないけど請求書きてるし……財産なんて恐らくないだろうし……家売ればなんとかなるのかなぁ……?」
――6年前、亜希の母親は突然家を買ったといって今のところに引っ越した。
「お母さん家買ったときはすごい喜んでたっけなぁ……これで亜希の帰る所を作ることが出来たって言ってたなぁ……」
亜希は、母親と過ごした日々を思い出して涙が出そうになる。
自分言うのもなんだが、あたしは母親に愛されてたと思う、女手一つでここまで育ててくれたお母さん……昼夜問わず仕事をしてた、よく飲んで帰ってきて介抱もしたっけかなぁ……それでも、誕生日にはケーキを買ってお祝いしてくれたり、学校の行事にも参加してくれた。あたしの事となると人一倍心配してくれたなぁ……
「はぁ……この家売りたくないけど……とりあえず話だけでも聞きに行こう……」
亜希はそう思うと、すぐ行動に移した。
――光樹の会社に相談に行ったその日は、平日だったが、亜希の学校は創立記念日で休みだった、しかし、亜希は担任の先生に呼ばれていたため、制服で会社を訪れたのである。
「入学早々ある意味、問題児認定かなぁ……マジ学校辞めようかなぁ……でも、高校も卒業してないとさすがに働くところも無いよね……」
亜希は4月より晴れて高校に入学した。偏差値はそこそこ高い学校で、所謂進学校だ。これについては、母親に迷惑を掛けないためと、自宅から一番近く、かつ学力の高いというよくある理由で選んだ学校だ。しかし、入学早々母親の件の事があり、学校の教師達、特に担任の先生から面談が増えたのである。
「とりあえず、面談は15時からだし、お昼くらいに行ってみようかな」
――亜希は、とあるビルの入り口立っている。また、緊張していた、普通の女子高生が一人で不動産会社に行く機会など滅多にないからである。
「えーと、このビルの6階ね」
亜希はビルに入り、エレベーターで6階へ昇ると、不動産会社のあるフロアに立ち入った。入口の正面にある電話の受話器を手に取り、不動産課へと電話する。
……すると、若い男性の声が聞こえたので要件を伝えた。
「家売りたいんだけど……」
緊張していた亜希は、詳しい内容も言わず、また、名乗る事も忘れて小さな声で話した――
すみません。今回は短いです。それと、更新頻度が若干落ちると思いますが、気長に待っていただければ幸いです。




