10話:相談
――光樹は、亜希を送り、自宅へ戻ると一息ついた。
「ふぅ、成り行きとはいえ、めんどうな依頼を受けちまったな、とりあえず、あの人に相談するか……正直あんまり連絡したくないんだよなぁ……何言われるかわからんし……」
光樹はとある人物に連絡しようとしていた。
「でも、これは避けて通れない問題だからなぁ……よし、電話するかな」
光樹は意を決して渋々電話した。
「……もしもし、光樹だけど、ちょっと相談とお願いがあって……」
光樹が要件を全て言う前に、甲高い声が遮った。
「あっ 光ちゃ~ん、久しぶりっ! どうしたのぉ~ あっ、もしかして今年は手伝ってくれるの? あぁ~助かるなぁ~ じゃあ、1か月前からは泊まり込みだからよろしくぅっ!」
相変わらずのマシンガントークだ、このペースにいつも飲み込まれるんだよな……いかんいかん、早く本題に入らなくては……
「ちげーよ、仕事の話だ、ちなみに受けてくれるならくれるなら、あれの手伝いでもなんでもする」
「え~、仕事の話し~?どうしよっかな~」
電話越しで話しているこのおばさんこそ、俺の知り合いの弁護士で、野村先生こと、野村由香である。
なぜ知ってるかというと、野村先生と俺の母親は幼馴染であり、親友だ、そのため、幼少期から知っており、よく家に来てはイジられた。母曰く、野村先生は学生時代から成績優秀、ストレートで司法試験を突破したらしい、また、弁護士としてもかなり凄腕らしく大物有名人の弁護士や、大企業の顧問弁護士もしているときいたことがある。見た目はかなり美人ではあるが正直色々ときつい。
そんなわけで普通の人にはまず無い人脈を光樹はもっている。
「わかった、ダメならしょうがない、今の話は無かったことに……」
「冗談だって光ちゃん、もう遊び心が無いんだからぁ~、そんな事じゃ女の子にモテないゾ?
「やかましい、それといい年したおばさんがそんな口調だとかなり痛々しいぞ」
「ひっど~い、お母さんに言いつけてやるゾ?」
「母さんは関係ないだろ、いい加減本題に入るぞ、ちょっと俺の手じゃ余る内容だから相談したまでだ」
光樹は、亜希の今の状況を説明した、もちろんだが、酔って介抱された内容は伏せてある。
「なるほどね、そして、光ちゃんは勢い余って押し倒すと……犯罪だゾ?」
光樹は頭が痛くなってきた。これだから相談したくなかったんだよ(涙目)。
「なんでそうなるんだよっ! 勝手に過去を改ざんするなっ! はぁ、とりあえず仕事は受けてくれるのか?」
光樹は疲れた様子で返事すると。
「う~ん、光ちゃんの依頼だから受けてもいいけどぉ~、ぶっちゃけ、私が仕事受けるとそれなりの金額になるんだけど大丈夫かな?」
やっぱり来たか、この人、仕事に関してはかなりドライだから、知り合い価格とか、義理や人情では動かない……世の中ギブアンドテイクだ。
「いくらだ?」
「う~ん、そうかぁ~、そうくるかぁ~、あの光ちゃんが珍しく食いついてくるのかぁ~、よし、決めた……!
なんだなんだ、金じゃないのか? 一体何を要求してくるんだ?
光樹は野村先生が何を要求してくるか不安で仕方なかった。
「お金はいいや、そのかわり……8月のあれの手伝いよろしくっ! ついでにコスして売り子も追加でお願いねっ!」
――実は野村先生は、腐っている。所謂腐女子というやつだ、しかも、毎年とあるイベントのサークル側として参加している。そして、そのサークルは、その道ではなかなか人気らしいのだが、サークルのメンバーは自分の家族又は親友等の深い関係の人しか参加させないというこだわりがあるらしい……そのため、毎年人手不足で稿料がギリギリまたは、一部間に合わない事が発生している。
「手伝うのも、売り子するのもいいが……コスプレは勘弁してほしいんだが……」
――光樹は過去、中学時代に一度だけ、強制的にサークルに参加して手伝いさせられた事がある、確かあの時は……家の壁に向かってボールを投げたら、誤って家のガラスを割ってその代金の代わりに母親に命令されて参加したんだっけかなぁ……
「ダ~メっ! それは条件っ! なんでもやるって言ってたでしょ? あぁ~、今年は光ちゃんが手伝ってくれるのかぁ~十数年ぶりじゃない? 楽しみだなぁ~、光ちゃん塗りがすごくうまかったから今年はいいものできそうっ!」
何が楽しみだ、馬車馬のように働かせるくせに……光樹は当時の事を思い出し戦慄した。
「じゃあ、よろしく頼むな。おばさんの仕事内容によっては俺の方の組み立て方もかわってくるからさ」
単純承認、遺産放棄、限定承認(借金は相続しないでプラスになる部分だけ相続するやり方)、それらのアドバイス等、トータルで何にしたほうが亜希のためになるか……こればっかりはその道のプロじゃないとわからない、まぁ、おばさん仕事に関しては頼りになるから大丈夫だと思うが。
「了解~、じゃあ、明日さっそく連絡してみるね~、ちなみに、その子ってどんな子?」
まぁ、紹介とはいえ、依頼主がどんな人かは誰でも気になるよなぁ。
「見た目はギャルっぽい、可愛げが無い女子高生だ。それ以外はよく知らん」
意外と家庭的とか、LIN〇を交換したとか、酔っ払いの介抱に慣れてるとか、そんなのはいらない情報だな。
「ほほう、おばさんちょっと気になるなぁ~、やっぱツンツンしてる子はいじめたくなっちゃうんだよねぇ~」
おい、あんたのいじめるは論破して、ぐうの音も出なくする事して相手がかわいそうから辞めておけ……とは言えない光樹だったので、差し障りのない言葉で言い返す。
「相手は高校生なんだから大人げないことはするなよ……じゃあ、明日仕事だからそろそろ電話切るぞ」
野村先生は話し出すと止まらないので、何処かで話を打ち切らなければならない。
「えぇ~? せっかく久々に話してるのにもう切るの~? でもまぁ、明日仕事なら早く寝た方がいいわよねっ! あっ、でも、こっちの作業するときは寝かせないゾっ!」
野村先生は最後に悪魔のささやきを残し電話を切った。
「はぁ、やっぱめんどくせぇ~、とりあえずなってしまってものは戻せないし、突き進むしかねぇな……」
光樹は静かにスマホを置いた。
色々設定ガバガバなのは小説なので許してください。




