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11話:状況

「さて、査定のために資料を整えるかな……」


 光樹は出社すると、パソコンを立ち上げると、亜希の自宅の登記簿謄本の取得を始めた。


 登記簿謄本とは、土地、建物等の履歴書みたいなものである。現在誰が所有しているのか、大きさはどうなっているのか、いつ買ったのか等を知る事ができる、これにも色々ヒントが隠されている。また、不特定の第三者誰でも取得することができる(法務局で取得するのが一般的だが、今は、インターネットでも取得ができる)。


「ほう、土地の大きさは50坪で建物の大きさは30坪の築15年くらいか、まぁ、手ごろな大きさで築年数も中古としてはそこまで古くない……あとは公図と測量図も取ってかなぁ」


 公図とは、大まかな地図である、土地には地番と言って番号が振られている、ちなみに住所は一度も立てたことのない土地にはない、そのためずっと更地の土地はナビ等で入れても出てこないのである。また、地番と住所の番号が同じ所もあれば、違うケースもある、余談だが、一般の人がよく間違えることで多いのが、地番をナビで検索してしまい全く違う所、または出てこないなんてこともある。


「測量図もありっと、まぁ、古いとはいえ、住宅街だからあるだろなぁ……現地はまだ詳しくみてないが境界もあればいいなぁ」


 測量図とは、公図が大まかな地図に対し、土地のさらに詳細を記載した書類である、古い場所や、田舎はこの測量図が無いケースが多い、その場合は、土地家屋調査士に依頼をし、近隣所有者立会いの元、測量図を作成してもらう。不動産売買をする場合、お隣との境界標を売主が明示する義務があるため、無い場合は、売主がその費用を負担し、境界標の設置をするのが通例である。ちなみに、この境界標等でよく揉めたりする。


「よし、後は、残債の確認っと、6年前に購入してるな、それで、その時の借り入れはと、3500万円か、6年だとほぼ残債は残ってる状況だな……多分……」


 家を買う際に、ほとんどの人は、銀行から借り入れをして購入するケースが多い、その際、銀行が、その土地と建物に抵当権といって、その所有者に何かがあった場合に、銀行が優先的に弁済を受けることのできる権利を設定する。例としては、月々の住宅ローンの返済が困難になった場合、銀行がその土地と建物を優先的に差し押さえすることができるのである。

不動産売却については、この抵当権を消さないと売る事ができない、従って、売却金額がこの残債の金額以上で売れる事が理想的だ(売却金額が残債金額に届かない場合、現金等手出し費用が必要となる)。


「まぁ、ぶっちゃけ、今回の場合だと、所有者が亡くなっているため、団体信用生命保険の保険金で残債分はチャラになるんだけどな……だから、他に借金等が無ければ、家は恐らく売らなくても大丈夫なはず……」


住宅ローンを借りる際に、ほとんどの人が団体信用生命保険という保険に加入する、これは、簡単に言うと、債務者が高度障害や亡くなった場合に住宅ローンがチャラになる保険である、これは住宅ローンの金利に含まれる、また、これに関しては健康状態が良好であることが条件となる。そのため、健康な若いうちに家を買っておけと言われる所以でもある。


「ちょっと脱線したが、財産等については、おばさんに任せるとして、俺は俺の仕事だな、えーと、過去に成約した事例を元に算出すると……今だと、3500万前後……あれっ? このエリアは土地の評価が上がってる……? これは良い買い物してるなぁ」


 不動産業者が見れる不動産サイトがある、土地、建物、エリア、売れた日等、一般の人が見ることのできない情報がみることができる。これによってエリアや土地の大きさ、建物の大きさ、築年数等の情報がわかるため、大体の指標にすることができる。また、査定の話になるが、単純に6年前に買った土地建物の場合、建物の築年数が経過しているため評価が下がる、これにより多くの場合は、買った当時よりも金額は安くなる。


「……ん? よく見ると、この物件売買履歴やたら多くないか…… 亜希の母親が買う前の10年で10回近く取引されてる……正直異常だぞこれ……もしかして、ちょっと曰く付きかもしれんぞこれ……」


 光樹は謄本をよく見ると、過去の売買履歴を確認すると、その取引の数に驚いた。


「商業施設等ならありえるが、一般の戸建てでこれは……亜希に聞いてみるか」


 光樹は、少々不安になった。すると、電話が鳴った。


光樹はスマホの画面を見ると、おばさんこと、野村先生からの電話だ。


「もしもし」


「あっ、光ちゃん、今大丈夫?」


 いつものゆるい感じの口調ではなく、仕事中の真面目な口調だった。


「大丈夫だ、それで、何かわかったか?」


 光樹は直感だが、あまりいい報告ではないと思った。


「あの子、単純相続するなら、あのお家売らないと厳しいかも、ちょっと確認してたら借金自体は無いんだけど、団信に入って無いっぽいんだよね……別途で保険等を手厚く掛けてるわけじゃないっぽいし……」


「なんだと、団信入ってなかったのかよ、稀にいることにはいるが……その場合だとそれをカバーできるように他の保険等で家族に負担を掛けないようにするのが一般的だが……当時の担当した不動産屋はどんな提案してんだよホント……」


 住宅ローンを借りる際に、団信加入できないと、取り扱ってくれない銀行が多い、だが、団信に入れない人でも住宅ローンを貸してくれる銀行も少なからずある、この場合は、他に生命保険等を手厚くかけてリスクを減らすのが一般的だ。ちなみに、銀行への斡旋は大体不動産屋が代理で行う、世の中全てが良い不動産屋というわけではない、人によっては、住宅ローンを通すために、グレーゾーンな事も行ったりする。不動産を売るという事は人を幸せにもするけど、場合によっては不幸にさせてしま事もあるのだ。


「電話で話したけど、あの子あんまり今の状況を理解してないっぽいから、直接会って私から説明しようか?」


「ありがとう、俺からざっくりした内容は話すから大丈夫だ。ただ時間は少しほしい」


「……そう、知ってると思うけど、決断する期間はそう長くないから気を付けなさい」


「あぁ、それじゃ、進捗があったら報告する、引き続き調査頼むな」


 光樹は通話を切った。


「うむ、高校生の女の子に決断させるには荷が重いが……はぁ、なんでこうなるんだろうなぁ……」


 光樹はため息をつくと、亜希へ連絡を入れるのだった。


激務です(白目)。

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