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5話:歓迎会

 ――時刻は19時、光樹は駅前の飲み屋にいる……そう会社の歓迎会である。


乾杯の音頭と共に飲み会がスタートする……部署内でも下っ端の光樹と啓明は飲み物の手配や食事の取り分けを積極的に行っていた……


「光樹そっちのピッチャー空だからこっちのやつと入れ替えな、あとあっちのテーブルの食べ物が空になったから皿もっていってくれ」


啓明が各々の注文を確認しながら光樹へ言った。


「オッケー、あと、部長は日本酒に切り替えるっぽいから注文頼む」


下っ端は飲み会の始まりから中盤までは基本的に忙しい。


下っ端仕事が一段落終わると光樹はふと周りを見て気が付く、今まで忙しくて気が付かなかったが役職の高いテーブルに新入社員が座っていた。


あれが新入社員か、今年は女の子なんだな……


光樹の会社は入社後すぐに配属ではなく、約1か月程の研修がある、1次会場と2次会場があり、それぞれ別会場のため、1次が終わると一度本社に出社するタイミングがあり、大抵その機会を利用して歓迎会をするのが恒例である。


――注文や遅れて来た人も全員到着したため、自己紹介が始まる。部署内の人は皆差し支えない内容の自己紹介をしていく、光樹も同じくおもしろくない自己紹介だった


そして、最後は今日の主役である新入社員の自己紹介が始まる。


「えぇ~藤田有彩ふじたありさと申します。専門学校卒業の21歳です。右も左もわからない未熟者ですがやる気はありますので皆さんどうぞよろしくお願いします!」


その小柄で可愛らしい女性はあたふたしながら一生懸命自己紹介をしていた。


すごく初々しいな……俺も新入社員の時はあんな感じだったんだろうな……今じゃ全く初々しさやフレッシュさは微塵も無いのだが。


――自己紹介も終わり各々話を始める、内容は仕事の話であったりプライベートの話だったりと様々である。


「よぉ、佐々木、ちゃんと飲んでるか?」


話掛けてきたのは光樹の上司である田島孝たじまたかしである。役職は課長だ。


「ちゃんと飲んでますよ、課長みたいに酒強くないだけですから」


田島は酒を水か何かを飲むようにがぶがぶ飲む事で有名である。


「そうかぁ? そういえば今年の新入社員の指導係はお前だからよろしくな」


「えっ?」


 光樹は酔いが一気に醒めた。


 言ってる意味がわからない、ただでさえ自分の仕事をこなすだけでも大変なのに指導係とか無理だ、そもそも人にものを教えるとか無理だ、ましてや女の子だとセクハラとかで訴えれらてしまう可能性がありめんどくさすぎる。


「いやいや課長無理ですって、私が指導係なんて……できませんって、指導なら啓明のほうがずっと上手だと思いますし、私は不適任です」


光樹は普段滅多にしない反対意見を言っていた。


「ダメ、もう決定事項、5月の本配属から当分はお前が指導係だ、詳しくは教えられないがちゃんと理由はあるぞ? まぁ大丈夫だって、本当にダメな時は俺もサポートするからさ、本人にはまだ伝えてないからおまえから話しかけてこいよ」


「指導係の件、わかりました。多分すぐ根を上げるので待っててください」


 こうなった田島課長は絶対に折れないので光樹はしぶしぶ了承した。


――光樹は上司の田島の指示の通り藤田に話掛けにいく。


「どうも、多分名前覚えてないと思うから先に名乗るけど、5月の本配属から君の指導係となる佐々木光樹です」


 光樹はいつも通りの調子で話す。

やっぱり最初が何事も重要だからとりあえずは無難な会話で乗りきるか……


「えっ?あっ?はいっ!えーと……よろしくお願いしますっ! 佐々木さんが5月から私の上司になるんですねっ!私、あんまり気が利かなかったりすると思いますが頑張りますっ!」


 有彩は相変わらず初々しい感じで頭を下げた。


「正直最初はわからん事だらけで大変だと思うが、1年は最低続けた方がいいと思うよ、入社する人にこんな事いうのは大変失礼かもしれないが、ここを辞めて他の会社に転職するにしても最初の1社目の1年目ってすごく大切だからな」


 この言葉は光樹が入社した時、指導係の上司から最初に言われた言葉である。当時の上司はかなり厳しい上司だったが確かに最初の1年は大切だったと思う……


「はいっ!佐々木先輩っ!ちなみに先輩が最初に苦労したことって何ですか?少しでも早く仕事を覚えたいので参考にしたいんですが……教えてくれますか……?」


 有彩は若干あざとい感じの口調で話す。


「正直苦労したことってたくさんあるからこれだってのは無いが……強いて言うならこの仕事というよりは、社会人としての大変さかな、特に人とコミュニケーションを取ること……学生時代であれば同年代と話す機会がほとんどだと思うけど仕事をすると色んな年代の人と話すことになる、ましてや俺らの仕事はご年配の方を相手にするし、業者を相手にすると場合によっては若いと舐められるし……っとちょっと話が脱線しちゃったけど俺はそんなとこかな……正直人によって苦労は全然違うから参考になるかはわからんがね」


 光樹は話終わるとビールを飲む。やっぱり酒はビールが一番だな。


「そうなんですね、あっ、グラスが空ですね、ビールでいいですか? 良い飲みっぷりですねっ! えーと、あっ、私、配属先に顔を出したのは今日が初めてなので同年代があんまりいないな~と思って……そのっ、確かに先輩の言う通り、少し気遣いするのが大変だなって思いました……えーと、全く関係ありませんが先輩はおいくつなんですか?」


「28歳だ、社歴で言うと6年目だ」


「28歳なんですね、私と7歳違いかぁ~ちなみに部署内で一番歳が近いのって佐々木先輩なんですか?」


 お酒を飲んでるため少々色っぽい話し方で問いかけてくる。


「そうだな、あいにくこの部署は平均年齢が高いんだ、一番下っ端は俺と啓明だ、ちなみに啓明は俺と同期だが年齢は俺より年上になるから歳が近いのは俺だな」


 まぁ、いきなり周りが年上ばかりで、しかも女性営業もいないとなると不安にならないわけがないよな……同期もいないし……


「歳が一番近いから私の指導係になのかなぁ……先輩はどう思います?」


 その線が強そうだが真相はわからん。そしてこの後輩……行動が小悪魔系みたいだな。


「多分そうだろうな、ってことで5月からよろしくな、俺と長々話すのはいいが、なるべく部署内の人とは話しておけよ?そのための飲み会なんだから」


 光樹は周りの目が気になったので話を中断させた。我が部署のおじさん達は、若い子からお酌を受けたいので俺が独占するわけにはいかない、後から何言われるかわからんからな……


「了解です先輩っ!有彩色んな人とお話してきますっ!」


 有彩は敬礼のポーズを取って足早に別の席に移った。


 ――時刻は22時前……


「宴もたけなわですが、そろそろ席の時間になりますので部長からの一言をいただいた後一本締めで締めたいと思います」


 啓明が今回幹事のため、司会進行をしていた。


部長のありがたい一言の後、一本締めで歓迎会が終わった……




「お疲れさまでした~」


 外に出ると、1次会で帰る社員があいさつをしていた。


2次会に関しては行く人行かない人がいるが、光樹に関しては後者である。


「いつも通り1次会でドローンだな」


 そそくさと帰ろうと歩いていると、会社の携帯にメールが入る。


「んっ?誰からだ……? えーと啓明からだ、なになに、飲み足りないからちょっと付き合え……」


 ご丁寧にもお店の場所も書いてあった、啓明ならいいか、めんどくさい人とか嫌な人と一緒なら嫌だが文面を見るとサシみたいだから行くかな。


「えーと、今から向かう……送信っと」


 光樹は啓明の待つ飲み屋へと向かう。



――「おまえにも家族がいるだろう……だからお家へ帰るんだな……」


 光樹は何処かで聞いたことのある言葉をそのまま言った。


「いいんだよ、終電さえ間に合えば嫁は何も言わないから」


 飲み会に理解のある嫁さんはいいよな、人によっては1週間前までに承認が必要とか強いられてる人もいるし。


 その後、終電時間の前まで光樹と啓明はがっつり飲んだ。


「よし、じゃあそろそろ終電の時間だから帰るか、今日はありがとな、光樹も電車だろ? 一緒に帰ろうぜ」


 啓明は飲み屋を出て駅へと向かう。


「あぁそうなんだが、ちょっと飲み過ぎたからコンビニで栄養ドリンクとついでに明日の朝飯を買ってから帰るわ……」


「そうか、気を付けて帰れよ? じゃあな」


 いつでも誰に対しても気を遣えるからこいつモテるんだよなぁ……




「うぇ~珍しく飲み過ぎた……」


酔いが回ってるせいか少々ふらつきながら

コンビニを目指す。


「……じゃん」


 光樹は、何処かで聞いたことのある声が聞こえた。


会社の飲み会は一次会で帰ります。(決意)

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