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16話:営業と休憩

 「お世話になっております。……建設の佐々木と申します。住宅ローンのお支払いの件、ご相談させていただきたいんですが、担当の方はいらっしゃいますでしょうか」


 光樹は朝一、亜希の自宅の借入先の銀行に電話をしている。


 「私、不動産の売買をしておりまして、今吉田さんというお客様のご自宅の売却をご相談いただいており、そのご相談でお電話させていただきました」


 光樹は、要件を伝えると、担当者にかわった。


「かわりました。融資担当の牧野です」


 電話越しから、男性の声が聞こえてきた。


「……建設の佐々木と申します。今、吉田様という方のご自宅の売却依頼をいただいており、現在、御行さんで融資を利用しているんですが、現在、名義人の方が亡くなり、手続き等がまだ進んでいないため、お支払いが滞っていると思うんですが……」 


「わかりました、お客様情報を確認しますので、名義人の方のフルネームと、住所を教えていただけますか」


「わかりました、名前は…… 住所は…… です」


 光樹は、亜希の母親の名前と住所を牧野に伝えた。


「…… お客様の情報を確認してきますので、少々お待ちください」


 牧野が光樹にそういうと、保留音が流れ、数分すると、保留が解除になり、牧野の声が聞こえた。


「大変お待たせしました、お客様情報を確認したところ、間違いなく当行で融資をご利用しているお客様です、現在、お支払いが滞っていたため督促状をお送りしており、返事が無いのでこれから保証会社に連絡する所のようですね」


 なるほど、今その状況か……


 ローンの支払いが滞った場合、一旦保証会社が銀行に借りてる分だけのお金を立て替えする、その後、保証会社から融資利用者に対して、支払いの請求を行う。これが一連の流れになる。実は、銀行融資で判決を下すのは、銀行ではなくその上にある保証会社だったりする。(保証会社に対して、お客様情報を伝えるのが窓口となる銀行なのである)


融資の支払いについて、一時支払いが滞って支払いをしたとしても、すぐ支払いをすれば問題無いのだが、保証会社に債権が移るとなると、既に一定期間をこえているため、個人の信用情報に傷がついてしまう、そのため、今後、新たに借入等をする際にその延滞履歴が障害となる可能性ある。

この個人情報の履歴は、一般的に7年は消えないといわれており、今後、亜希の将来を考えた場合、少しでも将来に支障が出ないようにするべきだと光樹は判断した。


「そうでしたか、今回、相続人になる予定の方が手続き等でわからない事が多く忙しくて、連絡が遅くなってしまった次第です。今後売却等に関しましては、私が担当窓口としてご報告させていただきます。相続等に関しましても、弁護士等に相談済みですのでもう少々お時間いただければと思うのですが……」


「そうですか、滞納分をお支払いいただければ、当行としては、問題ありません。他に、相続にするにあたり、所有者が変更になると思いますので、決まり次第ご連絡ください」


「わかりました。その旨、お客様へお伝えします。それでは、進捗状況等は都度、ご報告させていただきますので、今後ともよろしくお願いいたします」

 電話を終えると光樹は一息ついた。


 よし、これで第一段階終了、しかし、危なかったな、俺が連絡してなかったあの小娘ブラックリスト(信用情報に傷がついている人の事)いきだったかもな、売却に関しても、保証会社に債権が移ると銀行よりドライだから仲介業者としてもやりにくいんだよな…… 状況によっては、保証会社の担当者に連絡も必要になるけど、現段階ではまだいいかな…… 


そういえば、あいつ、多少現金はあるかなぁ…… 今度はそこも詳しく聞かないとな……




 時刻は16時前…… 光樹は街中のとあるチェーンの喫茶店で休憩していた。


「やることも一段落終わったし、休憩してから帰社するか……」


 営業はお客さんと会社から板挟みにあい、場合によっては、休日出勤等…… 常にストレスを抱える職業である…… そんな中、日によっては、暇な時間もあるため、そんな時は喫茶店などで休憩するのである…… あんまりやりすぎるのはいけないよ?


 光樹はスマホをいじりながら暇をつぶしていると、隣に高校生のカップル? と思わしき二人組が座って話しだした。


「あぁ~、だっるい~ マジ疲れたわ~」


「えぇ~、そんなに歩いてないじゃん(笑)」


 「いやいや、結構歩いたって~、俺最近体力無いんだよなぁ~ 歳かな(笑)」


 「高校生になったばっかなのに何言ってんのぉ~」


 くっっっっ、俺の大切な休憩時間を脅かす奴らだな…… 会話の内容がちょっとイラっとするが気にしない気にしない……


「いやホントマジなんだわ~ 俺の足触ってみ~」


 「えいっ」


彼女と思わしき人が、彼氏と思わしき人の足を触ろうとした瞬間、彼氏が彼女の手を握った。


 「おまえさぁ…… 手小さいよな~」


「えっ? そうかなぁ~ 女の子はみんな小さいと思うけどぉ~?」


 「そうなの? でもお前の手は特別にかわいい手だと思うぜ」


 そのカップルはイチャつきだした…… しかも手を握りあってお互い見つめている……


おいおい、隣に人がいるのによくやるな…… 席を移動したいが、他に空いてる席も無さそうだし我慢するか…… 


 その高校生のカップルの会話は、独身彼女無しの男の心にダイレクトアタックが決まった。


「そういえばさぁ、これから何するんだっけ?笑」


 「いちお~ クラスの人達とカラオケとか行く予定で、待ち合わせ中? みたいな? あたしたち少し早く着いて」


 「そうだったわ~ あいつらまだ来ないの?」


 「もう少しで着くみたいだよ~、いちお~ここの店にいることは連絡したから~」


 経緯を予想すると…… 元々、クラスの人たちと遊ぶ予定だったが、このカップルは待ち合わせ時間より早く着いたため、喫茶店で時間を潰しているってとこか…… 俺は、なんで予想してるんだろうか……




 それから十数分程して、制服姿の高校生、男女数人が入店してきた


 うわっ、これまたうるさくなりそうだから店出るか…… 時間も丁度いいし…… 


 光樹は立ち上がり、トレイの返却口に向かい、片付けをして店を出ようとするとそこには、亜希がいた。


 「あっ」


「あっ」


 お互い同時のタイミングで目があった。




すまぬ。すまぬ。

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