デイナの仕事
デイナの仕事はなくなった。
外出のために、この王宮に来たディラッチェのお世話をするという口実を使っているものの、ほとんどの世話はディラッチェが自分で連れて来た執事に行わせているため、何もしていない。
シィはロドムの参謀であるため、警戒をされているものの、自分は特別に警戒はされていないので、自由にできるのもある。
「最近は虫の退治の仕事もないしな」
ハルタナの部下が持ち帰った情報で作った農薬で害虫に対する対処はされている。
時代が進めば、古い仕事がなくなり新しい道を模索しなければならない。
模索を続けなかった者は衰退していき、つづけた者も、成功するという保証もない。
そのようにして、自然淘汰の繰り返しで文明の進歩はある。
ロドムが言っていた言葉の意味はこれだったのだ。
「私もお払い箱に……」
そう思って焦るものの、シィには次に何をしていいかがわからない。
「蟲魔法の新しい使い方ですか」
デイナにそう相談されたシィはうなった。
本心はうれしいのだろう。久々に自分の頭を使う機会がやってきたのだ。
ロドムの威光がない間、うかつな事はできないし、ちょっかいをかけたら恨みを買っていちゃもんをつけられるというのがこの世の中。
誰かの邪魔になるような方法でなければならない。
虫は大量に出せる。その虫達とデイナは感覚を共有している。
「城の警備とか……」
フェリエが今国防をするロドムの代役という事になっている。フェリエが言えばその役目を果たせるだろう。
「仕事がないなら、そうとでも言って仕事を得ればいいのですが。直接言ったところで、了承は得られないでしょう」
警備の人間はすでにいる。その仕事にもぐりこまないといけない。
女王のところにやってきたフェリエ。
「最近ずいぶんと忙しいようだな」
「いえ。忙しさもひと段落着きました」
女王の後ろに俺の父もいる。フェリエは女王に挨拶をしたあと、父にもニコリと笑いかけた。
「紙? 君の意見ではないのかな?」
シィの意見を書いた紙を取り出したフェリエを見て、女王は警戒を始めた。
フェリエは女王から見ても父から見ても、王宮内での権力争いに興味を示していない。
フェリエの持ってきた話だったら、地位が揺らいだりすることもないから警戒はしていなかったのだ。
「騎士がまた権力を取り戻そうとして有力貴族をのけものに」
ある貴族に不当に圧力をかけているという。
強力な私兵がありロドムの父とも仲が悪い。その他いろいろな好条件がそろっている。
次の『反乱役』を請け負うにはちょうどいい人材であるという。
「その有力貴族に反乱を起こさせるようにちょっかいをかけているらしいですわ」
こちらから領民への不当な税の徴収。鹿やウサギなどの害獣を放つなどの方法で攻撃をする。
下手に徴収を止めたり、鹿やウサギを駆除したら、暴力を使った、ペットを殺したなどと言ってイチャモンをつけるのを繰り返しているという。
「こちらもそういう報告は受けている。調査はしているものの、あの貴族が暴れているとかいう結果だったが」
「よくチンピラが使う手です」
家の前で怒鳴る。周囲の人間に悪口をいいふらす。それで怒って抗議をしてきたらチャンス。
肩を掴んだりでもしようものなら暴力を受けたなどとわめきたてて悪者扱い。
「調査員も買収されているらしいですわ。嘘の報告をそちらに流していると」
「ふむ……」
女王は考え込んだ。
「騎士達は、適当にイチャモンをつけて、その貴族を反乱者に仕立て上げようとしています。そして、また内乱を起こすつもりです」
そして戦果をあげて、今度こそその功績を自分の物にしようとしているのだ。
「また内乱が起こるのは私としても不本意です。どうか、この事を正しく調査していただきたい」
フェリエは言う。




