期待が裏切られた。二つの意味で
感覚が壊れていたか。
普通は戦争に加担なんてしようとしないだろう。
俺はあてがわれた部屋で一人で考え込んでいた。
俺に言わせれば、国を強く、文化をはぐくむなんかの行動はすべて戦争に直結する事なのだ。
普通はそこまで関連つけない。いつ隣国が攻めてくるかわからん状況で精神がすり減っていたのもあるだろう。
しかし、何がどうあれ、石炭の情報はもって帰らないといけない。ただいま本国では可哀想な事になっているだろう綾斗君が首を長くして待っているのだ。
あの、アニーという子と仲良くしなけりゃならん。そもそも、石炭の位置の探り方を知っているかどうかってのも怪しいもんなのだが。
犬とか好きかな? 久々にほのを使ってみるか。
あれから戦闘はなかったのでほのをまったく使っていなかった。
黒い猟犬のような犬だが、うまく使って彼女と近づけないだろうか。
「ほの。出ろ」
俺はほのを呼んだ。
「ご主人様。どうしたんですか?」
人間の姿で出てくんな。
戦うわけでもないのにいきなり呼び出されて困惑をしているようだ。
今回は戦闘ではない。この城の中を意味もなく歩き回るのはテルシオと鉢合わせの危険がある。危険すぎるため、ほのに任せてみることにする。
次の日、俺はせっせと火薬を作る。ほのはアニーって子の所に行く。俺が火薬の調合なんかやっているところなんて見てもしょうがないのでほのの様子を見てみよう。
アニーは食客として城に迎え入れられている。つまり仕事なんて何もしていない。お花に囲まれながら、小鳥さんと遊んでいるらしい。
おい。本当に石炭の情報もってんのか?
これはアテが外れたか? もうアニーは完全にお花と遊んでいる貴婦人だろう。
俺はそうは思いつつも、そんな事を考えないほのはアニーに近づいていった。
「お花好きなんですか?」
人間の姿で近づいていったほの。まあそれもありだ。
ほのはアニーの顔を覗き込んでとびっきりの笑顔を見せた。
「はい。お花はこの世界でも変わらないから」
アニーは何か考え深そうにして言う。
「戦争ってどう思う?」
「いけない事だと思う。でも攻撃されたらやり返さないと」
「こっちから攻撃を仕掛ける事ないのに」
「でも国を強くするために他の国を取り込んだりもしないと国ってのは崩れていく。戦争を続けて国を大きくし続けないと、逆に小さくなって滅んじゃう。歴史ってその繰り返しだよ」
ほの、そういう話は今はいいんだよ。
適当に『戦争はいけないねー』とかいう話に持ってけよ。
「そう。戦争を繰り返したから国際連盟が作られた。もう争いが起きないように」
まあ、国連の創立目的は平和機構の設立だ。だがあっても二次大戦は起きた。再設立された国際連合があっても紛争や戦争は絶えないが、それでも十分よくやっている。
「私。この世界に国際連盟を作りたいの」
そういう話なら俺も乗らないわけにはいかない。
ほのからそう報告を聞いた瞬間は、すぐにでもアニーに所に行って、国連の設立を陰ながら援助する算段でも相談しようかと思った。
「でもそれには強い力が必要。それなりに大きな隣国を攻め落として、周りを恐怖させないといけないってのもわかってる」
そのアニーの言葉に期待は思いっきり裏切られた。
つまり、アニーも戦争賛成派ですか? こりゃ意地でも石炭の知識を持ち帰らないと。
「私、そんなのに協力したくない」
協力しないでください。
ほのもアニーの言葉を聞いて本気で困ったようだ。いろんな意味で何もかける言葉がなかったらしい。
「私、難しい事はよくわからないから……」
ほのにしては珍しく、上手い事を言ってその場から退散したらしい。




