建築スパイ
壁にタイルを貼って、モダンな内装になっている建物がある。
この国の建設会社だ。
「お疲れ様」
建築の会社は今は常に忙しい。
国王が新規に公共事業を始め、新しい建物がドカドカと建っている。
会社の忙しい時期に人を新しく雇う。その時にこの会社に入った新人がいた。
その新人は玄関に額縁で飾られた一枚の設計図を興味深そうにしてい見ていた。
「あれが何かわかるかい?」
それを言ったのはこの建設会社の大旦那だ。言ってしまえば社長のようなものである。
「劇場ですね」
「その通り」
今、人がひっきりなしに入っているあの国立劇場は、何を隠そうこの建設会社も建築に参加している。
この設計図を見せられた時、意味が分からなかったが、この形に音を大きくするとかの秘密が盛り込まれているらしい。
「この形に秘訣が」
新人はそれに感銘を受けたらしい。
「この設計図がほしいですね」
「それは勘弁してくれよ。この設計図を持っているという事が、うちの誇りだからな」
「なら自分で書き写します」
そう言い新人は紙と画板を持ってきた。
「気の長いやつだな。まあ好きにしてくれ」
綿密に計算をされて書かれた設計図。いろんな数字も書かれており、人の手で書き写すには、丸一日かかる事だろう。
だがそんな事はお構いなしに新人は熱心に設計図を書き写す。
「熱心な奴だ」
彼のやる気を見て舌を巻いた大旦那は、執務室に戻っていった。
公園でその新人とロドムは会っていた。
「あの劇場の設計図とは、大手柄だね」
それもやはりロドムの差し向けたスパイだった。
「フェリエに渡せば大したことだぞ」
フェリエに建築会社に当たってもらう事は可能だろう。
突貫工事で建物を作り、演劇の公演を始めればいい。
とにかく文化レベルでこの国に近づくことが第一の目標である。
ロドムがワームホールで消えると、新人のフリをしたスパイは会社に戻っていく。
「次々に送られてきますわ。まったくすごいですわねあの人」
フェリエは次々に新しい設計図や、台本が送られてくるのに舌を巻いていた。
「やはり裏方に回るのが好きな方ですね」
ロドムは自分が先頭に立って皆を導くような事は望まない。
裏方に回って、みんなの事を助けるのが好きな人なのだ。
「学院戦でも、自分から前に出ようとはしませんでしたし」
学校にいたころから、裏に回るのが好きであったのを思い出す。そして、学院の学院長のメイレナが最初に自分に会った時に言った言葉も思い出す。
「綺麗な赤い髪が、みんなの憧れを受けてさらに赤く輝く」
この言葉が現実味を帯びてきた。
「この国を根本から発展に導く英雄といったところでしょうか?」
自分はまぎれもなくそれになる。
「これでは私が月ですが」
月のように、太陽の光があるからこそ輝くことのできる存在になる。自分の未来が、メイレナ学院長の言葉通りに向かっていくのを感じた。




