農業スパイ
「あのーお願いがあるのですが」
ここは村の人が所有している畑だ。
この畑の所有者は金にがめつく、金のためなら多少の不正はおかまいなしな人間で、禁止をされている事でも平気でやる。
「私、最近引っ越してきたばかりで、農業屋に登録ができていないんですよ」
話によると、隣の国から移住してきたばかりであるという。
この村で農業をするつもりらしく、開墾をして土地は手に入れたものの、国指定の農業屋から苗を買うことができないのだという。
「ここの苗は余っているのですか?」
農業屋から、ケース単位で買う事が義務つけられている苗。
畑のサイズにピッタリ合う数に合わせるのは難しく、育ちの悪い苗は植えずに捨ててしまうのだ。
「これくらいで売ってもらえませんか?」
「ほう……」
こちらに移住をしてきたという男は、相場の三倍の値段を出してきた。
捨てるはずの苗が三個分になって帰ってくるなら儲けものである。
「それだけじゃ足りねぇな」
「もっとですか? ならこれくらいでは?」
そう言い、出してきた金額は相場の十倍だ。
『これくらいでいいだろう』
心の中でニヤついた男は相場の十倍の値段で育ちの悪い苗を移住者に売る事にした。
『悪い事しているとは思わねぇ。世の中を教えてやった授業料としては少ないくらいだろう』
心の中でそう思う。
「それでもまだ足りねぇが、いいだろう」
そう言うと、ペコペコと頭を下げてくる相手。
『バカだなほんと』
心の中でそう思いながら、今夜の酒代ができたのを心の中で喜んだ。
「はい。最新の苗を入手と」
ロドムは村の裏手にまで行って、男の入手した苗を受け取った。
「これは種用にするか」
育ちが悪いのは重々承知しているものの、その中で、できる限り育ちのいいものを選ぶ。
育ちのいいものを種にすれば、次の種の品質も上がるはずと考えたのだ。
「苗や肥料を売っている店から、できる限りの情報を引き出し、文書にまとめてくれ」
工学科のロドムは農薬や肥料の作り方なんて全く知らない。
できる限りの農業の情報がほしい。
生産性も上がるし、美味しいものができるようにもなる。
「できる限りの知識の窃盗をよろしく」
「もちろんですとも」
アサシンギルドの急先鋒と言われるその男は、ニヤリと笑った。
ロドムはワームホールに入って、苗を国に持ち帰った。




