スパイ計画
「ロドム様からですか? なんで家の方に?」
フェリエがそれを受け取ったのは兵士の訓練中。
シィから渡された手紙を見て、怪しがっていた。
ロドムは何をやりだすかわからない。実家の方に届けてきたのには必ず意味がある。
「どんな意味があるのでしょうか?」
「読めば納得すると思いますよ」
シィの言葉にフェリエは舌打ちをした。
今の一言には、手紙の中身を勝手に読んだことと、フェリエの頭の中を勝手に読んだことの二つの意味がある。
「し……失礼。ロドム様が何か近況などを書いていないか気がかりで」
フェリエが怒るのはシィでも怖いらしい。迎撃をする準備と理由があれば、それも受けて立つつもりはあるが、こんな小さい事で怒りを買うのはシィとて不本意である。
「また頭を読みましたね。まあいいですわ」
今の言葉も頭の中を読んでいると疑うに十分すぎる言葉だ。
シィが言う通り、とりあえずは手紙を読んでみることにする。
「劇団員を集めて劇の披露をする? そんなのはやりたい人達に任せれよろしいですのに」
この国にも劇団がある。だが、あんな粗末なものは民衆の娯楽だ。
「コロシアムでの戦いを見せるのが一番でございますが」
中世において娯楽は戦いの観戦である。ローマ時代のコロッセオが一番有名で、格都市や小さな村にも、小型の闘技場がある場所もあるくらいだ。
「演劇ならそこでやればよろしいですのに。わざわざそのために建物を建てるのですか?」
コロシアムの中でも演劇は行われていた。だが演劇だけをやる場所を作ろうというのだ。
「こういう公共事業は女王の管轄でございますが」
そう言った後、フェリエは自分宛にこの手紙が送られてきた意味を考える。
「女王は政敵との戦いで手一杯でしたわね。というか、最後に理由が書いてありましたわ」
ロドムの手紙の中。最後に『女王とロドムの父がこのような事に手間を割いてくれるわけがない』と書いてある。
「あの人のやる事にはいつも意味があります」
「私もそう思います」
フェリエの言葉にシィも同意する。
「連絡したら、いつでも、劇場で演劇をしてもらえるように準備ですか。それくらいならよろしいでしょう」
多少のキープ料でも払えばいいだけの話だ。こんな事であれば、お安い御用である。
「農業の方はどうすればいいか?」
考えるととりあえず、うちの国から見て一番近い場所にある農耕をしている村があるかである。
「この村なら条件に合うと思います」
レデが、俺の睨んでいる地図を指さした。
「ここなら防衛の事も考えているよな」
攻め込みにくい地形だ。航空部隊を投下させればいいが、絶対近くにある砦から馬を飛ばされて。挟み撃ちにされるのが目に見えている地形だ。
「防衛? 攻め込むのですか?」
オルも言う。こんな村には奪う物などないと思われる。その疑問は当然だろう。
俺は物じゃなくて業を盗みたいのである。
何をわけのわからないことを考えているのかと思っているオルとレデ。考えている事が表情だけでわかる。
これでいい。この二人が余計な勘ぐりをするようになったら利用価値がない。
普通なら、何も考えずに動く人間にこそ、利用価値がないのだが、この二人は事情的にそれには当てはまらないのだ。
業がほしいのなら、夜闇にでも紛れて、農業の技術を伝授されている人間を攫えばいいのだが、事を荒立てたくない。
こういうのはハルタナの出番だろう。
「アサシンギルドってさ。スパイってのは経験ある」
「ある」
ハルタナの言葉。俺はこれからの計画の事を考える。




