劇場はやばい
これからどうするべきなのかを考えた。
完全に文明のレベルでは負けている。戦って勝っても、内部の敵と戦って他がそっちのけの今の状況を見ると、国土を奪っても統治が可能とは思えない。
現在でも、貴族の反乱がおきるくらいである、健全な統治能力があるとは言えない状況。
戦争で勝つ事ばかりを考えていたが、勝った後の事も考えないといけないのだ。
「いうか、後の事を考えるのは父と女王の役目なんだけど」
小さく愚痴る俺。
「この国に本はあるか? あったとしたら値段は?」
オルに向けて聞いた。
「えっと、普通の人が買えるようなものじゃありませんって、くらいしか知りませんね」
クッソ……活版印刷の技術はないのか。多分今でも本と言えば手書きなんだろうな。
農学書や医学書なんてものもがあれば国に持ち帰ればいいと思ったが、そうもいかないらしい。
「あ。劇場が完成したんですね」
レデが言う言葉に俺は本気でビビッた。
「劇場だって!」
何かの今度の劇の告知の紙が壁に張られている建物が見える。
うちの国にそんなものがあった記憶はない。
「娯楽も考えていたのか」
うちの国に本格的な劇場はなかったような記憶がある。
国を統制するのに必要なのは『パンとサーカス』という。
一言で言えば食事と娯楽である。それらは父任せにしているので、まったくかかわっていなかったが、こういうのが人を呼び寄せるのに一役を買うのである。
人は同じところに死ぬまで定住するのではない。何度か転居をする。
そして、一言で言って『住みやすい場所』に人が集まるのだ。
時間が経てば隣国に人が移住し続け、国外への逃亡を禁止しなければ、どんどんと人が出国して隣国に流れてしまうような状況になりかねないのだ。
その状況の一番典型的な例が北朝鮮という事である。
「やっべぇ。うちの国は北朝鮮だ」
俺がうっかり口を滑らせてしまった。
オルとレデやハルタナも、この言葉の意味を理解できるはずもない。
不思議に思って俺の方を見たが、すぐに顔をはずす。
「劇場で演劇を見れないか?」
オルに聞く。
「入場料ありますよね?」
「ああいいとも、四人分払うよ」
その返事を聞き、オルとレデはハイタッチ。
「遊んでていいのか? わざわざ隣国まで来たんだぞ?」
ハルタナは劇場で劇を見るなんて遊びとしかとらえられないんだよね。なんか、俺はこの中で異端な人間だって思えて来たよ。
「みんなの予定を決めるのはボクだよ」
オルとレデの前で真意を言うわけにもいかない。なんだかんだ言って、俺たちの国で命を賭けて支えてくれるような人物でもないのだから。
「今日の題目はフィガロの結婚らしい」
名前くらい聞いた事あるぞ。日本からの知識を持ってこちらに転生した人間が作った劇であるのは明白だ。




