あの国と同じ
武器のみで勝利しても、本当の勝ちにはならない。戦争は、国同士の問題を解決するための手段にすぎない。
ただし、最も愚かで不毛な方法である。
そういう言葉もある。戦争で勝てても、他の面で負けては意味がないのだ。戦争で敵を撃退する事は確かに重要だが、勝った後何をする気かはもっと重要である。
今の状況では戦争の後に敵国の文化が流れ込んで、国民が流れていってしまう事だって十分にありえる。
そして、今俺の近くにいるのはオルとレデの二人だ。こんな話をしたら、敵に寝返りそうである。
だって一回敵から寝返ってうちについた二人だから。
「エーリッヒ閣下に一体何があったのだろう?」
「私達にしたら、これはいつもの態度だけど?」
さっきから俺は考え込んでいる。様子がおかしいようにハルタナの目には映ったのだろう。
ハルタナの心配にレデが返した。そういう事は聞こえないようにして言え。お前らが俺をそう思っているのは分かっているが、聞こえないように言え。
そんな事を考えているのをシィが読んでいたら、くっくっくとか笑っていただろう。
だが国の文化後援は完全に父達の領分だ。内敵との戦いに日々奔走している父と女王にそんな事ができるはずもない。
北朝鮮が、国民の情報統制をして、海外からの文化が流れ込んでこないようにしている理由がなんとなくわかってきた。
「うちの国は北朝鮮のレベルかよ……」
俺が小さくつぶやくと、この場にいる人間全員からの視線を集めた。
「失礼。なんでもない」
そう言うと皆俺から目を外した。
あぶねぇ。こんな事話せるような気ごころの知れた奴がいない。
また戻って、フェリエでも同行させるのが吉だったかもしれない。これから、何を見ても驚いたり敗北感を感じてはならない。
身軽に動けるように仲間の動向を拒否したツケが回ってきている。
道の両側には畑がある。うちの国は肥料など使わずに土地が痩せたら新しい畑を開墾しているが、この国では肥料を撒いて同じ畑で同じ作物を栽培できるようにしている。農家の人が、何かを畑に撒いているのが見えた。
「腐葉土だ……」
この国では、畑に腐葉土を撒くのだ。落ち葉を集めて発酵させたものである。作物がよく育つための栄養を大量に含んでいる土である。
「品種改良に肥料の開発。そんな事まで」
国の基礎たる農業において大きく遅れているうちの国に、人が流れてくるとは思えない。亡命禁止の措置を取る以外になさそうだ。
それこそ、北朝鮮みたいに。
『うちの国は滅んだ方がいいかもしれない』
心の底でそう思う俺。
本当に、うちの国は完全に負けているのだ。こんなのでは、勝っても先がない




