考古学
「考古学とは、また何に使えばいいのか」
テルシオと王の前にまた地球の知識を持つ人間がやってきた。
「昔の文字を解読したり、歴史の謎を解き明かしたりですね」
アニーと名乗った少女は言う。
「今は中世だ。人々が食うに困らなくなり、芸事や文化に対して力を注ぐような余裕が生まれてから考古学は発展した。過去のドラマに思いをはせる余裕は存在しない」
テルシオも言う。
文学、音響学ときて、今度は考古学。
そう考えると、テルシオも日本は無駄な物に対する研究をしていたのだなと思う。
「ですが、過去の技術の解明などで世界が発展した例もあります」
「航海術が進歩して、遠くの遺跡や文化と触れ合えば、そういう機会もあっただろう。南アメリカで発掘されたアステカの暦なんて現代でも使われていたしな」
王もトドメの一撃を言う。
過去の事にロマンを求められるような状況ではない。農業と医学の発展が第一だ。
「はい。いいですか?」
レイフェが手を挙げた。
「今建設中のコンサートホールで過去の事を披露するとかどうでしょうか?」
「娯楽につぎ込む手間と、時間がないと話したんだが」
レイフェの言葉を王がバッサリと切る。
「考古学により自分たちのルーツを知れば、皆自分たちの国に誇りを持てると思うんです」
「まあいいや。コンサートホールで演劇でも見せるか。とりあえず時間稼ぎだ」
とにかく、多くを食客として招き入れなければならない。その方針に変わりはなかった。
王の決定にレイフェは胸をなでおろした。
「いい? 演劇は成功させないといけない」
レイフェは王の間から出るとアニーに言う。
この国にも昔話くらいある。その昔話を題材に、演劇を披露して自分の価値をみんなに見せないといけない。
「上手くいくと思うんだ。協力して」
レイフェは言う。それから、役者志望の人間を集めるお触書を出した。
「私の文はいけそう?」
レイフェは紙に自分の考えた演劇の事を書いた。
日本語で書かれているそれは、他者に盗まれないようにという意味も持っている。
「国を守るために戦う英雄の話よ。いろんなマンガのネタ混ぜているけど、この世界には著作権なんてないしね」
レイフェの言葉を聞きながら上げられた劇の台本を読むアニー。
「行けると思う」
この演劇をコンサートホールで披露して人気になれば自分たちの首もつながるかもしれない。
メイド達から、なんであなたたちはここにいるのと、言わんばかりに冷たい視線を投げかけられているのだ。
この世界は中世とはいうものの、テルシオの落ち込んだ、農学の技術で作物がよく育つようになって、生産性も上がっている。
そのついでに、娯楽に目が向けられる事もありえるかもしれない。
「私、前の世界では女優になりたかったの。でも才能無いって言われて」
アニーの言葉にレイフェも同調した。
「なら女優を作る側になろうよ」
レイフェの言葉にアニーも頷いたのだ。




