勝てばいいってものじゃなかった
結論を言うと、騎士達はあっさり砦を攻略した。内側から門を開けるのは簡単だった。
この砦に勤務した事のある騎士もいて、スムーズに城門をあけた。
そして、騎士達が接近戦をする機会ができればこっちのもの。
次々に砦の貴族の私兵はなぎ倒されていき、戦いに勝利すると、お宝を持ってキャンプに戻ってきた。
「親玉の身柄については何の契約もなかったはずだよね」
反乱を起こした貴族の親玉に手錠をはめた状態でやってきて、若い騎士がそう言ったのだ。
あー。忘れてた。戦利品の事ばっか考えてて親玉を倒した栄誉ってのは騎士にかっさらわれてしまった。
「すみませんわ。ロドム様」
交渉を請けおったのはフェリエだ。自分の責任と感じてしまっているらしい。
「いやいや、よくやってくれたよ」
俺が気づかなければいけない事だった。
他にも先に考えておかなけりゃいけない事があったと、今分かった。
調度品の事は騎士が全部買い取って金が入った。これはいい。
敵から押収した武器。銃は全部騎士達が接収してしまった。騎士に銃が渡ったとなれば、ヤバい事にもなりかねない。銃が自分たちだけの武器ではなくなったし、これを解体して複製されたら銃の技術が世界中に広がることになるだろう。
っていうか、もう広がりかけていたな。
敵が銃を持っていないなら、ズラリと並んで戦列歩兵の形で敵と戦う方法もあったが、その方法を使うと、お互いがお互いの的になってしまい、アメリカの南北戦争のような消耗戦を余儀なくされてしまう。
アメリカの南北戦争はライフリングが開発されてまっすぐに弾が飛ぶようになったライフル銃を、お互いに何の遮蔽物もない場所で撃ちあって戦っていたので、お互いの被害が尋常じゃないことになった。歩兵戦術は俺も専門外。
楔陣形とか千鳥とかならゲームで知っているが、そもそも、どういう利点があるのかを知らない。
軍オタがほしい。
「私の頭がパンクしそうですから、考えるのはそれくらいにしたらどうですか?」
シィが言う。なら俺の頭の中を読まなきゃいいじゃん。
「そういや、これでレリレンとデルクトの二人を釈放させる話の一つくらいは女王にできそうだけど」
「分かってる。ロドム君の手は借りないよ」
後ろにいたセリットが言った。
あー。まあそう言う事でいいか。
俺があの二人を助ける義理なんてないし、釈放されたら、俺に復讐とか考えそうだが、ハルタナに警戒させればいい。
そのためにアサシンを一人雇ったんだよな。もしよかったら、ヘルタナをアサシンギルドのトップにでも据えてやるのもいいだろう。
「どんどん出てきますね。あなたの脳は特別製ですよ」
「こんなんじゃ足りないくらいだよ」
あと、何か見落としている事はないだろうか?
これで騎士も汚名の返上ができた。騎士達は王宮で、でかい面をすることになるだろうな。父の頭痛の種も増える事だろう。
まあ、そんな事知らんし、父が勝手にやるだろう。
テルシオ達に、銃の技術が伝わった時の事も考えないといけない。射程距離を伸ばすか。ならライフリングの研究が先だな。
数学と空力の技術者がいる今ならライフリングの研究もはかどるに違いない。
「ほんと、よくあなたの頭はパンクしませんね」
シィが言う。まだ俺の頭の中を読んでいるのかよ。もう勝手にしろ。




