敵もやるようだ
「お宝を持ち帰るのが今回の作戦目的なんて、泥棒になった気分」
セリットとティーナはこの戦いの裏に何があるかを伝えてられていた。権力争いの上にあからさまな陰謀。
二人には、これはいわゆる大人の事情というものであるという認識しかなかったし、ロドムもそう認識している事が、この戦いのくだらなさを如実に表していた。
「砦の倉庫に隠されたお宝が目標なんだから、倉庫には攻撃しない事ってね」
セリットはそうつぶやく。パラグライダーに乗って風を切っているため、すぐ横を飛ぶティーナに声は届かなかった。
今は目標の砦の真上になる。下からマスケットの銃の弾が撃たれるが、その弾はあさっての方向を向いていた。
まっすぐ飛んできた弾がパラグライダーの幕を破ることもあったが、ハインネの計算のおかげで、穴が数個空こうが問題なく飛べるように設計をされている。頭の回る人が後ろに控えているという事の安心感というものを感じる。
安全を考えてくれる人がいるから、自分たちの命もあるのだ。
普段は面倒な指示しか飛ばしてこない上の人間達のありがたさというのが感じられる。
ただ、頭が回る人がいるのはこちらばかりでもないようだった。
「敵も考えているんじゃない?」
こちらの目的が調度品である事を向こうもわかっているのだろう。
砦の中庭。司令塔のてっぺん。人員の寝所などありとあらゆる場所に調度品が括り付けられていた。
ここで爆弾を落としたら、調度品も一緒に粉みじんになる。それではこの砦を落とせても実質的には負けになるのだ。
「攻撃中止。もう一度ロドム君に指示を聞くよ」
一番の目的の品を、敵を倒すために壊してしまってはいけない。
セリットはパラグライダーを旋回させて、元の場所に戻っていく。
気球の発着場に戻るとロドムが切報告を求めた。調度品を盾に使われてしまい攻撃ができなかった事を伝えると、ロドムは頭を抱えだした。
「あー。そこで爆弾を落としたら負けだよ。勝負に勝っても負けちゃ意味ない」
セリットからの報告を聞いてロドムは言った。
「くっそ。相手がその手にでるならこっちも最後の手段を使うしかないじゃないか。これだけはやりたくなかったな」
また、ロドムもこの件に対する対案があるようである。
「ほんと、頭のいい人が後ろに控えているって頼もしいね」
セリットの言葉にティーナも同意する。
「自分の部下にやらせたくないし、ちょっとあっちの方に聞いてみるか」
ブツブツとロドムが言いだす。
「とにかく今は撤収だ!」
ロドムはそう言って航空部隊の人間と一緒に下がっていった。
「あーあー……さんざん嫌味言われた。俺だって使いたくない作戦なんだけどな」
騎士達のテントに向かっていったロドム。
行く前から嫌そうな顔をしていたが、かえってきたら愚痴を言い出すほど不機嫌になっていた。
「これで分け前とかも減るだろうし、元々の目的は達成できるだろうからいいけど」
「完全勝利なんて望んではいけません。計画なんてものは最初の構想通りに進む方が少ないのです。代案をいくつも考えておき、予定通りにいかなかったら代案に沿って動くものです」
シィはロドムの頭の中が読めるという事は全員分かっていたが、こうしてみると頭の中を読まれるロドムはどんな気持ちなんだろうかとも思う。
「大丈夫です。ロドム様は『メンドクセェ』くらいしか考えていませんから」
セリットに向けて言うシィ。
「まあね。不埒な事など考えたことないからね読まれて困る物でもないし」
ロドムがそう言うのを見ると、確かにめんどくさいとしか考えていなそうだった。
「では今度の攻撃の打ち合わせを始めるよ。待っててもらってすまないね。入ってきてくれるかい?」
ロドムがテントの入り口に向けて言うと、幕を押しのけて若い騎士が入ってきた。
「彼は団長の息子のナイラル君。今回の橋渡し役だ」
ペコリと頭を下げるナイラル。水と油である騎士とロドムが手を組む事になったのだという。




