カレーを売るためにここに来たんじゃないんだけど
再突撃の準備をしている騎士達。
俺らはまたカレー屋の準備をしていた。
「お客様のご要望には答えるのです。品質を落とさず……」
うんぬんと話を始めるフェリエ。お店を開くという事に商魂を刺激されたのだろう。
「お店を開いた経験なんてあるの?」
フェリエがお店を任されていたなんて話は聞いた事ない。俺に隠れてやっていたと仮定しても、隠す理由がわからない。
「ないですわ」
「ないんかい!」
綾斗君。そういうのはこっちの役目だよ。
「知識くらいあります。実践のみが評価されるものではありませんわ。デスクワークで学ぶ事も大事なのです」
フェリエは綾斗にそう説いた。
「テニーさん? 話し方には気を付けてください。私達の教育がなってないと思われますからね」
やっぱり見逃してもらえないのか。
その言葉の後。綾斗はフェリエに連れられて店舗入っていく。
店舗は仮設のテントなので、ここからでもフェリエ達の様子がよく見える。
「綾斗さん。今のはスカートをさらに一センチ短くするに相当する罰ですよ」
「まだ短くすんの!」
「二センチです」
冷たい声のフェリエ。
「失礼いたしました……」
綾斗もこれ以上スカートを短くされたくない。
ペコリと頭を下げている。
「ハルタナさん。やっておしまい」
やっておしまいとは、また懐かしい言葉を聞いた。
とりあえず言っとくか。
「フェリエ。それ悪役のセリフ」
そう言うが、フェリエには言葉は届かない。
「動くなよ」
ハルタナがナイフを一閃するとスカートの裾が二センチ切られた。
どうやってんだろ? 一閃しただけにしか見えないけどな。
ハラリと落ちたスカート。スカートを押さえて隠そうとする綾斗。
「いずれ手元が狂って足が一本になってしまうかもな。気を付けるんだぞ」
ハルタナはナイフを舐めながら言う。
ガチの悪役のセリフだ。
騎士達はこれから一時間くらいで帰ってくるから、それまでにカレーを仕上げていくようにと、フェリエはシィに言う。
「ロドム様。用意はよろしいですか?」
もちろん俺は買ってきている。
「伝票通りに持ってきていますね」
フェリエは慎重に確認していた。
「ロドム様。手が空いているなら下ごしらえを頼みますわ」
あら、仕事終わったら休めるわけじゃないのね。
商売人の効率重視の指示の出しかたである。
地球にいたころに働いていたことを思い出すな。
それから一時間後にボロボロになった騎士が帰ってくるころには、出来立てのカレーで騎士達をお出迎えできる状態は整っていた。
一つだけ言わせてくれ。
「俺たち、カレーを売るために、ここに来たんじゃないんだけど」




