突撃失敗
「どうだい? 材料は必要かい?」
大盛況のカレー屋。
フェリエはすっげえ満足そう。
シィも綾斗も忙しそう。俺の調達してきた材料もどんどんと減っていく。
「これくらいでよろしいです。このペースなら足りるでしょう」
フェリエの目算でございました。
確かに騎士達はおなか一杯になって店を後にしている。英気を養って砦を攻め、完膚なきほど返り討ちにあってもらおう。
「ケツ触られた」
グチる相手がいない綾斗が俺に言ってきた。騎士もほんと礼儀なってない奴多いな。
「相手を覚えていたら出禁にしてもいいよ」
ここはお店ではない。好きに経営をしていいはずだ。
「いいでしょう。テニーさんもレディですからね。ただし一度目は注意のみです出禁にまでしません」
なんか商人らしい事言うな。この話はフェリエに任せてもよさそうだ。
余ったカレーは夜に回すことにする。時間のたったカレーは美味い。
俺たちの出番は騎士達が負けてからだ。
騎士達はあの盾を前に出して突撃をしていった。
敵の弾をはじく鋼鉄の盾を前にして前進する。
覗き窓は用意をされており、そこから前の様子だけは確認できる。敵から飛んでくる弾は止まったが、顔を出したらすぐに弾が飛んでくるだろう。
騎士達はジリジリと距離を詰めていった。近づけさえすれば日々鍛錬した剣術を敵に叩き込めるのだと信じていたのだ。
上り坂の上にある砦。そこから何もできない敵がこちらの事を見つめていた。
ふと、砦の門が開く。
門の向こうから大きな丸い岩が現れた。騎士達の顔面も蒼白になる。いくら鋼鉄の盾を構えていても、あんなものを転がされたらひとたまりもない。
「ダメだ! 撤収だ!」
騎士は多くの仲間を失っている。これ以上仲間を失えない。
危険とおもえばすぐに撤収するようになっていたのだ。
丸い岩は砦から転がされ、盾は押しつぶされてひしゃげていった。
「ダメだったのですか」
逃げ帰ってきた若い騎士から話を聞いた。
「君ならあの砦を落とす方法があるんだろ?」
「あるけど、命令は命令だから」
父から騎士達の邪魔をしないように言われている。
この若い騎士に対してはそういう言い方をしたが、本当は『騎士達が泣いて頼んでくるまで自分からは手を出さないように』という言い方で言われている。
ホント。解釈の方法が一つしかない言い方で言ってくるところが父らしい。
「あの砦には多くの調度品や文化財があるって言うんだ。芸術の分からない王達には渡せないって言ってる」
結局宝目当てかい。
宝と比べ、芸術品、文化的価値のある物ってのは本人たちからしたら違うらしい。
芸術品を宝っていうとめっちゃ怒るから口にはしない。
「確かに、そういうものも価値は分かりませんが、戦利品は持ち帰らないといけないですから」
元々、この出兵は、兵器に金をかける事の意味を父に分かってもらうためのものだ。
砦だけ落として、お宝を回収しないわけにはいかない。
「それを聞いたからには私も報告をしないといけない。報告をしたら絶対に砦を自分たちの手で落とさないといけないって話になる」
この騎士も板挟みに苦しんでいるクチらしい。
騎士達にあの砦を落とすことはできないと思うけどな。




