カレー店臨時営業
何? この行列?
気づけば行列ができていた。
「売るからには品切れなんてもってのほかです」
商魂を刺激された様子のフェリエの指示で数日分のカレー粉を使って全員分のカレーをこの場で準備することになった。
それでも不足した。
材料とかはワームホールで運んで来ればいいし、カレーの作り方自体は簡単なのでシィに言えば作れる。
騎士達は礼儀正しく一列に並んでカレーが出来上がるのを待っていた。
「お客様には懇切丁寧。金額に関係なく最良の物をお出しするのが商人の基本の心得。これができない者は死ぬべし」
商魂に火のついたフェリエが俺達に激励に言った言葉。
俺、商人じゃないんで。
そうは言えなかった。フェリエの目が尋常じゃなく輝いていたから。
「いえ、私達は商人ではありませんが」
だがシィは言った。ここで戦争勃発かと思われたが、商魂メーターがマックスの状態のフェリエは違う。
「ではあなたが一番好きな人に対して作ると考えなさい。その人に食べてもらうと思って作るのです」
シィを自分の会社の社員と勘違いしていませんかねぇ?
「そ、そうですか。承りました」
いつもはフェリエにビビらないシィだが、この瞬間はフェリエにビビっていた。
初めてシィがフェリエにビビる瞬間を見た気がする。
シィも協力をすると言うなら話も早い。
値段を上げず、品質を下げず、接客も最上級のものを提供する。そのスローガンを掲げ、フェリエは俺たちに指示を出す。
俺は材料運搬。シィが調理。他のみんなは露店の店舗の設置と接客。
もちろん綾斗も接客。この世界にもアンミラがあるらしく、それに着替えさせられていた。
死ぬ気で抵抗をすると思っていた綾斗だが、アンミラを着せられると姿勢を正してフェリエに従った。
「接客の基本の挨拶です。私に続いてください」
いらっしゃいませ!
ニコリと笑って営業スマイルを浮かべるフェリエ。いつもの気品とかを感じる態度は欠片も見えず、朗らかな印象がある。
「いらっしゃいませ」
営業スマイルも完璧な綾斗がそれに続く。
完璧に店員になり切っていた。だがその様子を見ると、どことなく、なんとなく、少し気になるが……
いや、もう言うけど、目が死んでるんだよな。
目が死んだ綾斗だが、表情が朗らかな感じのいい店員になっているのが逆に怖い。
いったいどんな調きょ……もとい教育をしたのだろうか?
「完成しました」
シィがカレーの味見をすると、フェリエも確認をする。
「いいでしょう。提供できるクオリティです」
とりあえず、フェリエのお気に召したようだ。
そしたら、行列に向けてフェリエが言う。
「皆さま長らくお待たせいたしまして申し訳ありませんでした。ただいまより開店をいたします」
大声を張り上げたフェリエ。アンミラでウエイトレスをする綾斗。
材料の調達をする俺。これはもう、完全にフェリエのリングである。




