キャンプ(失言)
女王からの支給品と言ったが、政敵からの手助けを借りるというのは彼らとしても抵抗があるらしい。だが命には変えられないと言ったところだろう。
なんだかんだ言っていたが、結局使ってくれるらしい。
『女王のお手並みを拝見しようじゃないか』
とかアホな事を言っていた。
こっちは、お前らのお手並みをみせてもらったよ。思いっきり負けてんじゃん。
これは言ってはいけない事だ。
「それでは、私はこれで」
なんて言葉を残せばいいんだろうね? この場合。がんばってくださいは嫌味だし。
こういう場合は何も余計な事を言わないのが吉である。
騎士達が意気揚々と作戦会議を始める。
「俺たちの力を見せなくていいのか? 兵器の近代化の必要性を見せたいんだろう?」
綾斗がそう聞いてくる。
「兵器の近代化ってあれではないですの?」
騎士が持っていった盾を指さして言うフェリエ。最近頭が回るようになったなぁ。
皆のところに戻って聞くと、テントはすでに張り終えており、航空部隊の面々は、テントの中でウダウダやっているとの事。
「キャンプといえばなんだと思う? 綾斗」
「キャンプって言っちまうのかよ」
ああ。確かに失言。ここには遊びに来たわけじゃないもんな。綾斗の言葉はマジグサリときた。
「キャンプといえばカレーだろ」
メゲてたまるか。綾斗の言葉を無視して俺はつづけた。
カレーというのはスパイスを挽き、サラサラの粉になった小麦粉でとろみを出してペーストにして作るのだ。
手に入る手あたり次第のスパイスを調合して、前の世界と同じカレーを作るのに成功していたのだ。
「うめぇ! 久しぶりだ!」
このカレーは綾斗のお気に召したようだ。おもっくそがっついていやがる。
「食事マナーを叩き込まないといけませんかね?」
皿をキンキン鳴らしながら食う綾斗に、シィが冷たい言葉を言うと。大人しくして姿勢を正した。
やれやれ、めっちゃ綾斗がビビってるぞ。教育とかいうのが恐怖を植え付けられたらしいな。フェリエ達の教育って何をやったんだ?
騎士達がこっちの事を見てる。なんだ? 匂いに誘われたのか?
若い騎士の一人が仲間に背中を押された後、こっちにやってきた。
「提案がある」
「食料の備蓄がないのですか?」
もう言えや。カレー食いたいって。そう思いながら聞いておく。
「そうだ。補給の予定はあるが、目の前に食料を持っている人間が話は別だ」
その言葉を皮切りに、値段交渉を始めた。
原価と同じくらいの値段を言うと、騎士は交渉成立とばかりに俺に握手を求めてきた。
あの爺さんよりも礼儀正しいな。この若い人。
こういう場所では輸送費だの手間賃だのでぼったくられるから、相場としては安すぎるくらいだし、カレーのかぐわしい香りに惹かれてしまうのはどの世界の人間でも同じだ。
「もっと高額を請求してもよろしかったのですわよ」
「ここには商売しに来たんじゃないんで」
フェリエも、家が商家だから言わずにおれないんだろうけど、単純にここには商売をしに来たわけじゃない。




