盾(日本式)
「貴様。呼んだ覚えはないが?」
テントに着くなり、老齢の騎士にそう言われた。
「呼ばれた覚えないですからね」
もうマトモに相手すんのもバカらしいや。それから馬車の御者を含めた全員にテントを張るのに適当な位置を探すように指示を出す。
俺はいい間隔で生えている木を見つけそこにハンモックを取り付け始める。
「貴様……何をしに来たんだ?」
こっちが戦う気を見せなくなったら、いきなり不安そうな顔を始めやがった。
心の中では俺が助けに来てうれしがっていたのだろうな。
「騎士様達が諦めたら私達が攻略をする事になっているのですよ。まったく、漁夫の利を狙うような事をさせられて、やる気が起きないんです」
やはり正々堂々、堅牢な状態の砦を落としたいものだ。騎士様たちが攻撃をしてボロボロになった状態の砦を横からかっさらうなんてカッコ悪い事この上ない。
そんなアホな思ってもいない言い訳を言って俺はハンモックの状態を確かめた。
寝たらすっげぇ気持ちよさそうだ。
「私の出番は無いでしょうな。さあ騎士様。ご自由になさってください」
「貴様! 何もしないなら目障りだから帰れ!」
「帰りませんよ。別にあなたの指示で来ているわけじゃないですし」
メンドくせぇよこの爺さん。自分が時代遅れの化石だって自覚ないのかね?
「あなたたちは攻略の準備とかしなくていいんですか? 早く帰りたいんですが」
「ふん。女のおっぱいでもしゃぶってろ」
騎士のクセに口がお悪い事。上流のマナーってもんができてないね。
「綾斗。何やってんだよ?」
両手で胸を押さえている綾斗。
「いや……そんな事はありえないとわかっているんだが、どうしても、そういう話を聞くと」
乙女心が芽生え始めていますか? 綾斗も勝手にしてくれよ。
「しゃぶらせないからな」
ジトリとした目で俺の事を見てくる綾斗。
「うるせぇ」
もう、その言葉しかないな。フェリエの前で他の女のおっぱいなんかしゃぶったら、エラい事になるし、話を続けたくない。
「とにかく、今は待ちませんと。そういう事ですわよね。ロドム様」
フェリエは今の言葉では動じていないようである。
確かに腹心に置いている人間が女ばっかというのは対面もよろしくないのかもしれんね。
手を出していたら、だらしないとか言われるし、手を出していないならヘタレとか言われるし。
それは昔からの事だ。
俺の計画はこうだ。騎士に突撃させて敵の弾を減らす。
町から奪った銃を使っているのだから、新しく弾を補充することはできない。鋳造なんて知らないだろうからな。
ただ、見殺しにするわけにもいかない。そして、彼らも王宮に戻れば発言力を持つ立派な地方豪族だ。
彼らに、戦争が近代化しているという事を身に染みてわかってもらいたい。
そう言う事でこういうものを作ってきた。
「これは女王からの支給品です」
とか適当な嘘を言う俺。これは俺がつくった銃弾をはじき返す盾だ。
盾といえば左手に持つものを想像するだろうが、これは日本式の盾。日本の盾とは置いて使用するものである。
航空部隊の人間が後ろから車輪をゴロゴロ言わせて分厚い鉄の盾を押してもってきた。
「これの後ろに隠れて突撃をするのか」
老いた騎士が言う。そゆことだ。
この盾を押しながら敵に近づいていく。弾の装填に時間のかかる初期の銃であれば、近づけば剣の方が有利。
砦を陥落させるには至らないだろうが、文明の利器の力を感じてもらい、兵器の近代化を後押ししていただこうという寸法だ。




