空戦
「それでは開始!」
俺が気球の上に立って指示を出す。気球からパラグライダーに乗って吊り下げられているセリットとティーナが切り離されていった。
爆弾に見立てた砂袋を目標の場所に落とし、自軍の場所に戻ってくるという訓練だ。
空が飛べれば空から何か落としてやればいいというのは誰でも思いつく事。
空の防備のために戦闘機が生まれ、空は男の戦いの場となったというわけだ。
「もうちょっと高さ必要かな?」
俺は気球の上から綾斗に向けて聞く。
「なんでそんなとこにいるんだよ?」
普通に考えたら気球の上なんて危険すぎることこの上ないが、俺には懐かしのグラヴィティフロウがあって万一落ちてもフワリと優しく着地ができる。
なにより、綾斗と顔を合わせたくない。
今でもあのカッコをしているからだ。しかし、あんなミニスカをどこで用意してきたんだかね。シィの奴。
セリットとティーナの二人は上手く操作して目標の地点に砂袋を落とした。
「いいかんじだが、戻ってこれそうにないな」
「風向きの問題だ。余裕だろう」
さいでっか。風向きとかも考慮する必要あんだね。
綾斗の言葉通り、セリットとティーナ大分余裕を持って帰投地点に戻りパラグライダーを切り離して着地した。
「思ったほど自由に動けるもんじゃないな」
「十分自由だと思うが?」
綾斗はテルシオの天の魔法を見ていないからそう思うのだろう。鳥よりも自由に空を飛べるようになるあの魔法で迎撃されたら一環の終わりだ。
あの時はフェリエが叩き落としていたが、フェリエがいないときのために自衛の手段を考えないといけない。
「飛行中に銃を撃ったらどうなると思う」
「抵抗値を知りたい。反動のエネルギーは?」
そういう話になるのね。計算が必要だな。でも銃の初速を計るための機械なんてあるかな? 作れるけど。なかったらメンド臭いことになるぞ。
「反復実験が一番だな」
測定なんてメンドイ。むしろ、いくら精密に何度繰り返して測定しても実験では測定結果が意味を成しませんでしたなんて事は多々ある。
「測定を繰り返した後で実験だろう? あたりも付けずにいきなり実験なんて被験者を地獄に落とす気か?」
ですよねー。分かっていたけどね。
「こりゃ一か月かかるな」
空を飛べるというだけではこの世界を支配できない事をテルシオに教えてやろうではないか。
戦争で一番重要なのはテクノロジーだ。
新しい兵器を開発し続けた者が勝つのである。
ワームホールで部屋に直で戻ると、フェリエ達が俺たちの事を待ち構えていた。
「テニーさん。ロドム様に手出しはなさらなかったでしょうね?」
「するわけないだろ」
やたらと挑発的に、礼儀正しい態度で言ってくるフェリエ。
「ネズミは信用なりませんからね。これだから卑しい生まれの人間は」
フェリエ。だからそれ悪役のセリフ。
「服装の乱れも正していただけますか? 今時長いスカートなど流行りませんほら。もっと裾を上げて」
シィも言う。最近流行ってんの? そういや、セリットとティーナも大分短くなったようだけど?
「ロドム様の場合は、女の子の事をもっとよく見るべきです、もちろんいやらしい意味ではなくですが」
シィが頭の中読みやがったよ。こんな中世だか、わかんないような世界にもファッションの流行りってもんはあるんだな。
「とりあえず、私のダンナの従者になるのだからな。えーと。素振りしろ」
もうネリフスはそれしか言う事ないの? 無いなら言わなければいいじゃん。
「えーと。あれだ。あれだな。うん」
ハルタナも無理に言わんでよろしいっての。
「まだお勉強は済んでおりませんわよ。二時間目といきましょう」
「まだあんのかよ!」
綾斗の文句などお構いなしに、四人に連行される形で、王宮の廊下に消えていった。




