航空隊
仕事中にシィが連絡を持ってきた。なにやら不機嫌そうな表情をしている。
「ロドム様。なんか城門で騒いでいる人が」
「騒いでいる?」
俺は気球の制作をしているところだった。気球で高いところに足場を作れば、高いところから指揮もしやすいだろうと考えたのだ。
高い場所に足場さえあれば、そこにワームホールで移動をすればいい。テルシオの天の魔法のように空を飛んで撃墜される危険は付きまとうだろうが、テルシオが空から指揮をする限りはこちらもそうする事ができるようになるのがいい。
言うまでもないと思うが、レイティエルにぶら下がりながら指揮をするのは論外だ。いつ落とされるかわかったものではない。
「お触書を見て来たと言っています」
「なんだって!」
気球なんかよりも重要なことである。
何か専門的な知識があればいい。気球なんて必要なくなるくらいの知識が手に入ればいいことだろう。
「俺が迎えに行く!」
そう言い、城門にまで向かっていった。
その場に立っていたのは俺と同い年くらいの女の子だった。
「綾斗だ。こう言った方がいいだろう」
「日本人か。歓迎する」
綾斗とは前の世界での名前だろうというのは察しが付く。名前からどう考えても日本人。
「エンジンはあるか!」
綾斗と名乗った子はそう聞いてきた。
「内燃機関の構造くらいは知っているけど?」
いきなりエンジンと言われても普通のこの国の人間にはわからないだろうが、俺になら意味が分かる。
「空を飛びたいんだ!」
綾斗は言ってきた。
「まあまあ。説明もなしにそんな事言いだしてもわかるわけない。とりあえず中に入って話をしよう」
そう言い、その子の手を引いて城の中に促した。
俺は執務室に戻ると、早速シィにお茶を出すように指示を出した。
「また女の子ですね」
シィは嫌味くさくそう言ってきた。
なるほど。なんか不機嫌そうな気はしていたけど理由はそれなんだな。
会った時は気にしていなかったが、綾斗は完全に女の子だ。
綾斗の様子を見るに、転生前はどう考えても男だったようだ。転生したら性別が変わることもあるようである。
ちょっと扱いに慎重になるべきだよな。俺の身の安全のためにも。
シィとフェリエは普段はそう仲良くもないんだが、俺に女の子が近づいてきたときは、昔よりかなり敏感に反応をするようになった。
さて、気を付けて話すか。俺は綾斗の話を聞き始めた。
「俺は地球では航空力学を学んでいた」
航空力学というのはつまりは空力の学問だ。『航空』とはいうものの、高速で走る乗り物ならなんでもだ。新幹線や自動車も専門のうちに入る。
より空気抵抗を受けず、音を小さくして速度を出せるように形状を考えたりするらしい。
気球と相性がめっちゃいいじゃないか。もしかしたら航空隊を編成できるかもしれない。
「この世界にエンジンはない。だけど。風や炎の魔法で空を飛べる人間を知っている」
とりあえず綾斗が知りたがっている事から先に教えよう。
さて、問題は次だ。
「滑空というのも専門内だよね?」
俺は聞いた。
「まあ、テレビで飛行機を人力でどこまで遠くに飛ばせるかっていう番組とかあったろう。あれにも参加したことあるぜ」
「それはいい話だ」
俺は今青写真を頭の中で絵がいている。
これが成功すれば、なかなか有効な手段になるはずだ。




