i一日の終わりに
「今日の訓練も終わりだぁ……」
俺は自室のソファーに寝転がりながら言った。
訓練と言っても、当然元軍オタをちょっとかじってただけの奴にそこまで本格的な訓練なんて思いつくわけもない。
軍隊の基本は『行進』とかなんとか……
だから、行進と隊列訓練が主流だ。なんか、軍隊映画でやたら匍匐前進をさせるような訓練をしているのは見た記憶があるが、そもそもあれに何の意味があるのかわからないから却下。
多少の知識はある。まず軍隊の編成の時には『仮想敵』を作る必要がある。
もちろん『仮想敵』は帝国。帝国には銃は伝わっているものの、鋳造や製鉄の技術が足りず、満足な銃が生産できないという。
だから、帝国に技術が伝わらないように、一応銃の製造工程は国家機密にしてあるが……いつまで隠し通せるかは疑問だ。
で、あるにしても、敵は銃を持たない魔法のみで戦う敵であると仮想する。
となると、詠唱をしている間に先に狙い撃ちをしてしまえばさっさと勝てるもんだから、ひたすら早打ちの訓練ばっかさせる。
もちろん基礎体力の訓練も忘れていない。ランニングもメニューに入れている。
「どっかに元軍オタでも転がってないかなぁ?」
俺みたいに転生をしてこの世界にやってきた人間は他にもいるかもしれない。軍オタの一人でもいれば、そういう知識もあるというのに……
ちなみに、後になって思ったが、なんで軍オタ限定なんだろうか? 元自衛隊員とか元アメリカ海軍員とか考えなかったんだろうか? そっちのほうが何倍も頼りになるはずである。
「軍オタとはまたなんですか? 疲れているんだから痛い話はやめてくださいね」
あれから五年たつ。十歳のフェリエはすでに十四歳と言っても信じるくらいに大人の色香を出していたのに十五歳にもなると立派な成人に見えるくらいだ。
社交界に出ると、いろんな男から言い寄られてきやがる。俺が許嫁だっての知ってるはずなんだがな、あいつら……
こっそり待ち合わせ場所のメモなんかをフェリエに渡してきた奴なんかもいた。
そんときマヌケ面でフェリエの事を待っていたその男のところに、やたら厳ついやつを厳選して引き連れた俺が出ていった、見た瞬間に必死に土下座して泣いて許しを乞いていたな。
まあ、謝罪くらいは引き出そうと思っていたものの、あそこまでされると、逆に引く。つっても、後続の奴が出てこないようにして、ハルタナにその男の事を徹底的に調べさせて、女性遍歴やら過去の罪なんかをフェリエの新聞にぶち込んでやった。
この世界ハンパをやると舐められるのは、ここ十年で十分承知だ。徹底的にボコボコに
するくらいでちょうどいいのだ。
ここ十年以上一緒にいるのに、今になってもフェリエは俺が日本から転生をしてやってきたという事を信じようとしねぇ……
ここまで信じないと、逆に怖いくらいだ。
今の状況、帝国では内政面の強化が急速になされている。内政面はうちの父と女王の役目なのだが……議会との折衝にてんやわいやで、うまく国をまとめることができないのが現状だ。
自分で国民主体の国家にしといてなんだよこの体たらく……根回しくらいしとけよ……
とも思うが……まあ、俺が気にすることじゃないな。イザとなったら、フェリエやシィを連れてワームホールでどこか遠くに逃げてしまえばいい。
こんな国、そこまでして守る価値もないしな。




