新たなる戦い
「ロドムよ。見ろ。私とお前の赤ちゃんだぞ」
それを言ったのはネリフス。
彼女はおなかに何かを詰めて、まるで妊婦のような大きなおなかを作っていた。だがその中に赤ん坊なんていないのはバカでもわかる、なんせ、俺自身、欠片も身に覚えがないからな。
こんな事はいまは日常茶飯事。こんなアホにまともに付き合うほど、ヒマな身でもなくなっている。ネリフスに向けて思いっきりダッシュをした。
「おお! ついに私の愛にこたえてこれるのか!」
「んなワケあるか!」
飛び上がり、俺は問答無用でそのネリフスにドロップキックをかました。もちろん腹に向けてだ。
相手が女の子だとか、女の子のお腹はいけないとか、そんな事は一切考えない。だってそんな事考えていたらキリないし。
「これが家庭内暴力……」
「やかましいわ!」
「もう、大切な赤ちゃんから血が……」
ネリフスの言う通り、たしかに腹の部分から赤い液体が流れている。だが、当然羊水だったり、ましてや、赤ん坊の血なんてわけがない。
「これ、スイカかなんかだろう! 食べ物で遊ぶんじゃない!」
その通り、赤いのはスイカの汁だ。遠慮なく蹴ったのは問題だったか……床がスイカの汁まみれになってしまっている。
ネリフス自身の心配? するわけない。こいつは騎士だけあって頑丈だ。俺が本気で殴ったところでダメージなんてゼロだろう。
「十五にもなって、こんなバカに突き合わせんじゃないよ!」
俺の怒声。
そう、あれから五年経ち、俺はもう十五歳になった。
その間に軍の再編は俺の役目になり、銃や軍服の確保、。現場指揮官の任命。そして何より日常の訓練。いつ、テルシオ達がまた攻め込んできてもいいように準備をしないといけない。
これからだって訓練のために城の中庭に向かうところだったのだ。
貴族の社会ではなくなり、地位や身分など意味をなさなくなった。その状況で、遅刻なんてするわけにはいかない。
肩書だけでは、人は従ってこない。普段からこういうふうに規律を守った行動をしないといけない。
戦争で、士官が背中を味方に撃たれるなんて、よくあることであるし、クソ上司の言葉を聞くのがどんだけイラつくか? は、前の世界で嫌というほど思い知らされた。
あれから、フェリエは俺の近くにいて、兵士に魔法の訓練などをやらせている。
戦闘においては、魔法など銃の足元にも及ばないのが現状だが、催眠魔法や味方の強化や回復魔法など、科学の力ではどうにもできないところに魔法の価値が出てきているのだ。
今俺が昔通っていた学園では、攻撃魔法科なんて廃されて支援魔法科のみになったらしいし、そもそも、魔法の勉強をまともにする人間も減ってきた。
魔法を勉強するより、銃の早打ちの練習をする方が何倍も強くなれるからな。
時代は変わるもんだ。




