思いもよらない真実
「戦果も上げれず誠に申し訳ありません」
テルシオはしれっとした顔で、王に向けてかしずきながら言った。
今回の撤退の原因は、幕僚達が敵の新兵器に恐れをなしたからである。というのがテルシオの報告である。実際にその通りだし、自分がどれだけやる気でも部下たちの戦意がそがれてしまっていては、進軍は不可能だ。
「なに……戦果はあったさ……」
王に向けて頭を下げていたテルシオはその言葉に疑問を抱く。
いたずらに兵を失い、物資も略奪された。失ったものの方が多いはずだ。
「銃って聞いたビビったか? まあ、初期の銃のしょぼさを知らなければ恐ろしいと思うもんだがな」
王はいきなり砕けた話し方をする。
「顔を上げな」
王はどうしたんだ?
疑念を感じながら、テルシオは顔を上げる。
「そうだ。それがこの世界での生き方だ。何よりも上っ面を重視。それさえ固めておけば、後でなんとでもいいようはある。それは前の世界でも同じことだったけどな」
「前の世界……? もしやあなたも……?」
「もしやってか……なんか、違和感がある言い方だよな」
いままでは高圧的に感じていた王だったが、今では調子に乗った若者のようなニヤニヤした表情をしていた。
「そう、俺も日本からやってきたんだ」
自分以外にも……いや、自分とロドム以外にも、日本から転生をしてやってきた奴はいたのだ。
まさか、ここまで身近にいて、ここまでの権力を持っていたのだとは思いもしなかったが。
「俺は元医学者。お前は農学でも学んでいたのかな? ロドムって奴は昔は機械でも学んでいたのか? 俺だって銃を作れなんて言われても作れないしな」
テルシオは確かに大学時代は農学を学んでいたし、ロドムだって大学時代は機械工学を学んでいた。
「医学と農学の知識を持つ俺とお前で国の地盤を固め、工学の知識を持つあいつを引き入れれば、世界一の国を作れると思わないか?」
確かにそうかもしれない。この世界の農学はテルシオから見ても幼稚もいいところだ。医学だって、この王から見れば幼稚もいいところに見えるのだろうし、機械を知っているロドムからしたら、この世界は原始的な世界に見えることだろう。
「簡単に作った、ちょっと感知しにくい毒を作ったら、誰も毒が原因なんて思わないもんな、政敵はこれでガンガン殺していったぜ」
王は、自分の医学をよからぬ使い方をしていたようだ。だがそのおかげでのし上がることができた。
「何の因果か知らないが、知識を持ったままこの世界に来たんだ。選ばれた人間である俺たちで、この世界ででかい事をしようって思わないか?」
王の野望は大きい。しかも、その野望を達成するための知識も持っていて、実行できる力も持っている。彼ならば不可能ではないだろう。
何をか? そうあれだ。
「世界征服だ! 俺たちでこの世界を征服してやろうぜ!」
王の野望に、テルシオは胸が躍った。どうせ、こんな力を得てやってきたのだ。そんなデカい事を目指すのも悪くない。




