さらなる役目
そして、次は虫の壁の中の様子も確認する。
やっぱりな……焦って火薬を床にぶちまける奴……弾を転がしてしまい、どこに行ったか分からずに探している奴……そんな奴らばっかだ。
おっと……こういうやつも出てきたか……
俺はそいつに注目をした。
「なんだこれ……敵が見えなきゃ狙いようがないだろうが……今頃敵の死体だらけだってのに……」
そう口にしたその男。この作戦に不満があるようだ。
彼の言うことは全く間違っている。まず、見えていても狙いようなんてない。と、いうか当たらない。
しかも今向こうは敵の死体だらけってわけではない。たしかに数人、運の悪いやつは苦しんでいるが、ほとんどの奴は、ピンピンしている。
俺はワームホールでその男の後ろに向かっていった。真後ろに立った後、低い声で言う。
「今頃敵の死体だらけ? 本当か? 敵は正規兵だぞ。もしかしたらこんな銃なんて役に立っていないかもしれないじゃないか?」
俺はその男の耳元でささやきかける。背中を見てもわかるくらい、その男は動揺していた。
「戦争を甘く見ているのか? 見えないってことは、すぐ近くにいるかもしれないってことでもあるんだぞ。もしそうだったらどうする?」
ピクリと体を固めた男。
「撃つんだ。撃てる限り撃つんだ。何もわからないうち、自分が何で死んだかもわからないで死んでいく。そんな事戦争じゃ当たり前だぞ。今撃たないと、数秒後に死ぬかもしれない」
俺はそこまで言うと、ワームホールで消えていった。
その男は顔を真っ赤にして、急いで銃口に弾を詰め敵の方向に向けて撃ち始めた。
それから俺は次々に心が折れかかったやつを『説得』し続ける。もちろん六万人全員を見れるわけじゃないが、それでも、町人たちの士気が落ちないように維持することはできた。
自分でも思う……なにこれ?
こんな事、司令官のやることじゃない。だが、訓練を全く受けてもいない兵士なんてこんなもの。簡単に心が折れてしまうのだ。
この虫の壁は、敵からそれが見えないようにする役割がある。
それに、焦って火薬をぶちまける奴や落とした弾を探している奴なんて見られたら、敵は思いっきり調子づくだろう。
それを隠すという意味もある。
この作戦は上手くいったようで、敵は委縮してどんどんとさがっていった。




