苦肉の作戦
「デイナ! 作戦開始!」
俺が大声で号令をかけると、辺り一面に虫が飛び交った。
虫の羽音で周囲の音も聞こえなくなり、周りが全く見えなくなる。視界全体が醜い虫が飛ぶ姿で覆われてしまっているのだ。
俺が作戦開始と言ったのは聞こえていたし、この状況になることも先に説明していたので、町の人たちは、一斉に銃を打ち出した。
虫の羽音で、他に何も聞こえないと思っていたが、銃声は聞こえる。やはり銃声の大きさはケタ違いだ。
パンッ
と最初は聞こえたが、数秒間、その音は聞こえなくなる。
今、町の人たちは、せっせと銃口に火薬を流し込んで、弾をこめ、それを長い棒を突っ込んでギュッギュッと押し固めているところだろう。
数秒したら、また銃声が聞こえてきた。
パンッ
それからもう断続的に銃声が響いてくる。統合性なんてない。とにかく撃てるようになったら撃ってもらうだけだ。
この銃の有効射程は5Mと言った。だが当然、そんなに近くにまで敵をおびき寄せるような余裕はない。そんなに近づかれたのなら、もう、負けているようなもの。
だからまだ百メートル以上の距離のあるこの状況で銃を撃たせていた。
俺の肩に止まった虫から映像が流れ込んでくる。
それは虫の壁の向こう側。虫の壁の中から銃の弾が断続的に飛び出てくる。それを見た敵の兵士は、気圧されていた。
俺たちからの攻撃は、あさっての方向に向かうものばかりだ。だが十発に一発くらいはまっすぐ飛んでいく弾も存在する。
空に向かって飛んでいく弾の弾道の線。地面にめり込んでいく弾の弾道の線。
彼には初めてみる魔法のように感じただろう。
そして、運悪く、まっすぐ飛んだ弾が直撃した兵士もいた。その弾を腹に食らい、未知の兵器での攻撃によって正体不明の痛みを受けて悶絶する。
「盾だ! 魔法の障壁を!」
誰からともなくそう言いだし、みんな障壁の魔法で身を守った。
たしかに障壁の魔法は鉄製の盾ほどの防御力はあるものの、銃にかかればそんなもの簡単に貫通する。
障壁の魔法を使っても、運悪く弾が命中した兵士は倒れていった。
「これが……敵の新兵器……」
各々が未知の攻撃に恐怖していったのだ。
そうでないといけない。
こんなものはなにくそと考えられて、全員で突撃なんかされたら、勝ち目はない。威嚇としての効果も期待しながら、この攻撃を続けないといけない。




