南門の監視
「わたくしの方からうかがうつもりでいたのですのに……」
「ならさっさときやがれ」
心の底からそう思った。このストレートに俺の怒りを表現した言葉を聞いて、フェリエは思いっきり身を引いたのだ。
「こんなとこでゆっくりお茶を楽しんでいるところを俺に目撃されるなんて運がなかったねぇ……おかげでフェリエにやってもらう仕事を思いつくことができたよ」
「最初から覚悟のうえですわ……」
フェリエの顔は恐怖で引きつり、それでも笑顔を作ろうとしているところには商売人根性を見る。
こうなってしまえば仕方がない。 いつものはたり八割の戦法で行くしかないだろう。
「こんな事を言われますなんて……」
今は夕方。そろそろ敵の全軍が町にやってくる頃だ。
フェリエはこの町で一番高い塔の屋根の上に立っていた。ここなら東門だけでなく他の門も見える。ここで、全方向の門の監視をするべしというのがフェリエに課せられた使命だ。
「監視だけならあの虫の魔法でいいといいますのに……こんな、陰湿な当てつけをするなんて、闇の者はとんだ悪趣味だ」
レイティエルは愚痴る。
だが、フェリエは、文句は言えないこの町の人間の命を天秤にかけたのは自分が原因でもある。
今回は銃を売りたかったから……だけではない。
確かに、できたばかりの銃の性能をどこかで試す必要はあるし、さらに研究をするための研究費用の確保が必要というのもある。
だが、ロドムの力になりたかった……というのも、たしかにある。
ロドムはここで 逃げる事しか考えていないが、敵が進行して来たら、さらに戦況は悪くなる。できるだけ、王都から遠いところで、敵を食い止める必要があるのは自明の理だ。
ロドムはなぜ、町の人たちを逃がしたいのか? それは彼らの命を守るためである。
そこに戦略的な理由などはない。ここで、町の人間を見殺しにしてでも、敵にダメージを与えるべきである。そうすればこの先の戦いでも多少有利になるだろう。
そういうのが、少しばかり、戦術書を読んで知恵を付けているフェリエの考えだった。
もちろん自分の考えを通したら、ロドムが怒る事は分かっていた。ある程度の覚悟はしていたのだ。
「でも、なんでこんな事を? 本当に監視だけなら、デイナさんの虫の魔法の方が有用で、効果も高いというのですのに……」
もしかして、自分は面倒を押し付けられるという名目で、安全な場所に送られただけかもしれない……だって、こんなところに敵が攻めてくるような見込みはないのだから。
「考えすぎでしょう? あの闇の者がそんな事まで考えるとは思えません」
フェリエの心中を読んだレイティエルは、不機嫌さを隠さずにロドムに対する嫌味を言った。
『敵が攻めてくるとしたら南門からだ。あの先は森になっているから、隠れて進軍がしやすい。もしかしたらとんでもない大群が潜んでいるかも……?』
ロドムが言った事を思い出したフェリエ。
「なるほど……そんな人ではなかったですわね……」
ロドムの言った通り、南門に敵の姿が見えてきた。フェリエは急いでレイティエルにぶら下がって南門に向かっていく。




