テルシオの作戦
「また……ロドム・エーリッヒか……」
テルシオは部下からの報告を聞いて頭を抱えた。
まさか、クロスボウ一本を持って、田舎の村の村人達を指揮しただけで精鋭たちを撃退できるとは思わなかったし、今は銃を持っているのだという。
テルシオは、前の世界にいた頃から銃の恐ろしさは知っている。
だが、初期の銃のお粗末さの知識まではない。知っていたら、恐れはしなかっただろうが、現代人となれば敵が銃を持っているというだけでも、すっ飛んで逃げるには十分すぎる状況だ。
だがせめて、何かの武勲を上げねば逃げることはできない。
部下の血はいくら流れてもいい。とにかく、ある程度の戦果をあげて、撤退するに十分な言い訳を作るにはどうすればいいか? を考え出した。
銃というものが何者かは知らない、参謀たちはテルシオが必死に悩んでいるのを見て、ニヤニヤと笑いだしていた。
『何にあんなに怖がっているのだろうな?』『新兵器というのがどんなものか知らんが、怖がりすぎだ。やはり子供』
参謀達が楽しそうにしてテルシオの事をバカにする。わざと聞こえるように言っているのは分かっているのであえて無視する。
『こんな奴らのために身を粉にしてやる必要はないしな』
テルシオが変わった理由はそれだ。
自分がどれだけがんばっても結局はこいつらの利益になるだけだし、本気になるのもアホらしい。
敵の数より味方の数の方が優っているのだから、全軍を無策で突撃させるか……
とも考えたが、それで負けたら結局帰ることはできない。味方が損害を受けるだけならとにかく、負けるのはダメだ。と、テルシオは考えた。
だが、この通りに実行していたら、テルシオは勝てていたのだ。
こういう判断のミスが歴史を作るものだ。テルシオは今、負けの歴史を自分の手で作ったのである。
結局、真正面から銃と戦うわけにはいかないから、本隊を正面で睨みを利かせ、その間に別動隊が町の中に侵入をして、ひっかきまわすという手段を考えた。
これはロドムが対策を考えていた方法そのものである。
フェリエはパラソルの下で、お菓子を片手にお茶を楽しんでいた。その前に黒いゲートが現れたのを見て、思いっきりお茶を吹きだした。
「ふぇーりーえー……やっとみつけたー……」
俺の事を見ると、怯えた顔をする。今回俺にとって面倒すぎるような事をやらかしてくれたとういう自覚はあるらしい。
商談をうまく終わらせ、いい気分で高級茶を楽しんでいるところというところだったのだろう。
フェリエはこの状況でも店を開いている商魂たくましいカフェにいた。おもいっきりおだやかな顔でくつろぎながらである。
「わるいねー……お楽しみの時間をじゃましてー……」
そうは言いつつも、俺は当然一切悪いとは思っていない。そう言い、テーブルに手を付いてフェリエの顔に自分の顔を近づけた、つまるところ、メンチを切ったのだ。




