戦術考証
フェリエ家はやっぱり商家であったという事か……
火薬の事を知ってしまったからには、銃の事も話さないといけない。
けど銃だってただで作れるわけではない。そもそも、われわれはこの町を見捨てて逃げるように警告をしているのだ。買ってくれるなら売るが、我々の意見はこの町を見捨てて逃げるようにという事は忘れないでくれ。
フェリエが商談にやってきて、言った内容はだいたいこのような感じだ。
ものすごく予防線を張りまくった言い方だ。多分、銃は未完成なのだろう……というのは向こうにも伝わる。
だが俺は知っている。多分未完成なんかじゃない。マスケット銃なんてそんなに射程も威力もあるもんじゃない。
使ってみたら『なんだこんなもんだったのか』とか感じたというところだろう。
だが、一般人が魔法に対抗できるような力を手に入れることができ、引き金を引くだけで、常に戦いのために訓練を続けてきた奴らを殺すことができるのだ。一般人からしたら、喉から手が出るほどほしいものだろう。
この、フェリエのいいように、団長も即答をした。
「何が起こっても文句は言わない。それでいいだろう?」
団長も分かったうえでの同意。こりゃ何を言ってもこの商談は取り消せそうにない。
「では六万丁の用意をしてきましょう。資金の準備を御済ですか?」
そして、フェリエもこう答えた。
最初から売るつもりだったようである。だって六万丁の銃だぞ。そんなもん持ち歩いているわけがない。最初から売りつけるつもりで持ってきているとしか、考えられないのだ。
壁は白塗りの石造り。家具も一流の調度品。当然のようにベッドは天街付きだし、天街から下がっている布は当然絹。
俺は、その部屋の中心にある、高級茶を淹れられたカップを傾けていた。俺の手のひらにはジットリと汗が浮かんでいる。
俺はこの町一番のホテルと言われる場所に案内され、VIP待遇を受けている。
まあ、これからこの町を救う予定の英雄に失礼があってはならないという事だろう。
ん? 待て、いつの間にか俺が残って指揮を取る事になっているぞ……
と、まあ今更考えてもしょうのないことを、頭の中で反芻したりしている。
「お茶がマズい……」
高級茶の味に文句を言ってもしょうがないのだが、当たる先がない。
次、シィからの念話が来たら、城に残ったメンツから烈火のごとく怒られるだろうし、銃なんてものを提供して、自警団と町の人たちに戦う希望なんてもんを与えてくれちゃったフェリエも、俺からの説教を避けてか? 俺の前に現れようとしない。
とにかく、この町の構造を考えないと……
この町に門は四つ。敵は東から攻めてくるが、その東門から馬鹿正直に攻めてくるとは思えない。
それにそもそも、門を通ってくるとも限らない。壁をぶち壊して入ってくることだってあり得る。
つうか俺ならそうする。
戦闘の訓練も受けていないやつらだ。少し劣勢になったら絶対にパニックになる。
劣勢にはなれない。
敵だって、ちょっとでも俺たちをつつくことに成功できれば勝ちなのは分かっている。
無理してでも壁を壊してこっちの動揺を誘うという事は十分、考慮に値する案だ。




