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適当男の転生軍師 2  作者: TUBOT
テルシオとの戦い
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サボナの策略

「こんなガキの力を借りないといけないなんて、世も末だな」

 なら俺の力を借りないでください。さっさとこの街から避難してください。

 心の底からそう思ったが、そう言うわけにもいかない。せっかく、フェリエの新聞のおかげでヒーローになれたのだ。不用意な発言はできぬはずだ。

 ここは自警団の客間。元々、大き目の商家の家だった場所を街で買い取って自警団の事務所にしているようだ。

 その商家の人間はどうしたって? 一か月前にすでに他の街に移住したらしい。

 いやいや、本音を言おう。逃げたんだ。ここが戦火に巻き込まれると分かって……

『してやったり』とでも言いたげな顔をしているサボナ。

 俺は自警団に所属している、見た目敏腕秘書って感じのキツイ感じのお姉さんに導かれて、一つの椅子に座った。

 俺の座った椅子は、いきなり足が折れて、俺はすっころんだ。

 周囲からクスクスと言った笑いが起きる。

「す……すみません……この椅子は古くなっていました」

 敏腕秘書のお姉さんは、すまなそうにして慌てていた。俺が椅子の折れた足を見ると、切れ目が入れてあった。まるでノコギリで切ったような形で、椅子の足の半分くらいまで切られていたのだ。

 なんでそんな事をするのかだって? 俺の出端をくじくためだ。

 村を救ったヒーローという扱いになっている。みんなが緊張して俺の事を迎えるところに無様にすっころぶ。

 自警団の奴らはそれを見て『ロドムとかいうのも大したことないな』と、考えるのである。

 自警団の隊長って感じの痩せた身なりのいい男。着ている服は高級品だし、どこかの中堅クラスお金持ちの主人といった印象がある。

「その椅子に切れ込みを入れたのは……」

 シィが言おうとしたところに俺が手を出して止める。人の心が読めるシィには犯人が分かっているだろうが、問題はそこじゃない。

「切れ込みとは何のことかな? こちらのミスなのは認めます。ですが、言いがかりをつけるなら……」

 このじじい……ニヤニヤしながら言ってきやがった。犯人はこいつか……周囲を見回しても、ニヤニヤしているのはサボナくらい。団長は、表情を変えない。これは、知っているか? 知らないか? は読めないな……

「自警団のみなさん。今すぐここから逃げ出してください。敵は全軍で攻めてきます。我々に勝ち目はありません」

 俺はまずそう言い、周囲の反応を見た。俺がこんな事をいいだすのは意外という感じだ。てっきり俺が魔法でも使って敵を退けるのを期待でもしていたのだろう。

「そんな弱気な……木の葉を兵士に変え、木を投石器に変え。一声で川の水を増水させて、敵の兵士を押し流す。そんなロドム様とは思えない発言ですな」

「そんなことできないですよ」

 おいそれ、どんな魔法を使えばできるんだよ……相変わらずニヤニヤした顔をしているサボナがイラつくんだけど……

 そんな話、信じているわけないよな……

 ちょっと待て、なんだその木の葉は……

 俺の横あたりにいる自警団の団員が両腕いっぱいに木の葉を抱えているんだが……その木の葉を兵士なんかに変えられないからな……

「それに、新兵器もまた開発をしているようではないですか……クロスボウに変わる新たな兵器を……」

「それについては私は関与していません」

 フェリエあたりが独自にやっていそうだけどな……俺はただの軍師志望の学生であり発明家ではない。

 だが読めたぞ……その開発中の新兵器をよこせって言っているんだな……

 俺じゃなくてフェリエに言ってくれ……というのは簡単だが、フェリエはこの街に売る気があるのか? フェリエも商人だから、買い取ってくれる奴には売りたいのかもしれない。

 この場にフェリエがいないので、その言葉に反論はしないでおく。

『おい……話と違うぞ……』『これで街は守れると思ったのに……』『英雄なんて嘘っぱちだったのか……』

 そう周囲の人間から声が聞こえる。

 そうだよそう……英雄だって万能ではないんだ。早くこの街を見捨てなさい……

「待つのだみんな。私も昔軍に所属していたからわかるが、重要な機密を漏らしたりはできない。新兵器の開発なんて、絶対に口外ないにきまっている」

 サボナは本気で言っているのか? いままでの発言を踏まえて考えると、本気のようには聞こえない。

「昔から、できないや無理は、この世界に存在しないのだ。やってみればできる事ばかりだ」

 なんだこの大昔の人間の言うような精神論は……

 これ、完全に俺に言っているな。

『敵が多いとか、戦力がないとかは関係ねぇ。やればできるもんだ』

 と言いたいのはよくわかる。こんな妄言に付き合ってられない。

「どこからその話が漏れたのでしょうか……?」

 ふとシィが言い出した。

 俺の様子を確認してから言ってる……どうやら何か考えがあるらしい。

「確かに『火薬』の製造を行っていますよ」

 シィの説明臭いくらいの言葉。

『火薬?』『なんだそれは……?』

 そう周囲から聞こえてくる。

 その昔の三大発明。火薬、羅針盤、活版印刷の三つ。羅針盤で遠洋航海が可能になった、活版印刷で、新聞などの情報媒体が広く広まった。

 そして、火薬。クロスボウでも触れたが、火薬を使って作られた銃によって、農夫でも騎士を殺すことができるようになり、これまでの力関係が逆転した。

 活版印刷はすでにフェリエが使っているし、羅針盤なんて、アイデアを教えればいつでも作れる。しかし、この国は内陸の国だ。

 羅針盤が必要になる事はないであろう。

 火薬は『ガンパウダー』とも呼ばれる、名前通り、銃の使われる薬だ。ガンパウダーがあるという事は『ガン』を作る事もできるはず。

 昔フェリエに教えたことがあったな……たぶんその時の事を覚えているのだろう。

『今はなりふり構ってはいられません』

 俺は火薬を作る事は反対だ。この国の制度が、思いっきりひっくり返るだろう。

 それを分かっているからこそ、シィは俺に向けてそう念話を送ってきたのだ。

 詳しいことは彼女から聞いてください。

 この事について、すでに議論は尽くされた。

 ガンパウダーの存在をどう使うかは? これから考える事にしよう。

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