意外な奴が
傭兵団といっても金でなんでもするというわけでもなさそうだ。
それともラルファル帝国を恐れているのだろうか? 命をいつでも捨てる覚悟を持つ傭兵団でも犬死には御免だろうからな。
フェリエの連れてきた営業マンの話では完全に取りつく島もないらしい。
『私がもっと早く話していれば』
さっきの件がひどく堪えているのだろうネリフスとは思えないような弱気な言葉が出てきた。
ここで俺が何を言っても皮肉になる。シィあたりがフォローを入れてくれることを願う。
シィもネリフスに対して好意を持っているはずもなく、ネリフスが落ち込むなら止める必要はないという感じだ。そうゆう感じになっているところが想像がつく。
シィもそういうところはシビアだ。
ネリフスには勝手に落ち込んでもらうとして。ん? ヒドいか? 俺の立場になってくれ俺からしたら、女王からあてがわれた迷惑な監視役兼形だけの花嫁だ。フェリエが嫉妬に狂うし俺の行動は父や女王に筒抜けになるし迷惑極まりない。
自分の考えとはいえ俺自身もこういう事にはシビアだな。
敵の大軍は今にもこの町に迫っている。
この街の人間は守らないといけない。
だが兵力が少ない。むしろ無い。
これはどう考えても、この町から尻尾を巻いて逃げ出すしか選択肢はない。この前小さな村に残ってみんなから怒られたし今になって思うと。
『何であそこで逃げださなかったんだ? あの村を見捨てるのは当然の判断だぞ』
とも思えてくる。
『あとになって、冷静になると、そう考えてくれるのですが』
シィの念話。どうしても言いたかったのだろう。俺だって損得のみで動ける人間じゃない。目の前の人は守りたいし。いかんいかん、こんな事を考えているとまた怒られる。
『自警団です。この町にはまだ自警団が』
ネリフスの必死の訴え。
「そんなものが作られていたのか」
いっても街の住人が仕事の合間に槍の扱いの触りの部分だけを覚えただけの集まりだろう。そんな者達に防衛能力なんて。
『自警団の奴らだったら、街のみんなを動かすことはできる。クロスボウのストックはあるんだろう? ドロランド』
ネリフスはフェリエの事を名前で呼ぶ勇気はないらしい。なんか久々に聞いた気がするな、フェリエの上の名前。
『しかし、ひっしになってくれるとこ悪いが、この町はもう終わりだぞ』
俺の念話を聞き悔しそうな声が聞こえてくる。だがしかし犠牲は必要かもしれない。町が一つ落とされたという事実くらいないと、民衆の危機感をあおる事はできないだろう。俺達の対応が遅すぎた事は俺の過失だろうが。
『なら、私をその町に連れていけ。私一人でも戦ってこの町を守る!』
ネリフスってホント無謀だな。勝手に戦ってくれるはいいかもしれない。
いやまて、それは非常にマズいぞ。
ネリフスは形上は、女王から俺に下賜をされた花嫁。それを見殺しにしたとなっちゃあ・
『今、ネリフスの顔がにやって』
あかん俺の頭の中の事をまだ読んでいたのか。
『シィ。デイナ。二人でネリフスを取り押さえて』
シィの魔法であればネリフスを組み伏せる事はできる。この街が完全につぶれるまでネリフスには眠ってもらおう。
「さて。帰るか」
俺はフェリエとフェリエのお付きの者達に向ける。そうするとみんな同意をしてうなずいた。
とりあえず、話を聞いた営業担当は俺の指示も待たずに自警団に向かっていった。帰ってくるのを待ってこの街から退散をする事にしよう。
「フェリエ様。色よい返事が」
営業担当の話は信じられないものだった。ラルファル帝国と一戦交えてくれるというのだ。
「いやいや、無理無理」
自警団なんてどんな規模か知らないが大したもんじゃないだろう。この街を守る気があるなら、敵がここに到着する前に、住民を避難させて全員の無事を確保するのが自警団の役目だ。この状況ではそれが最善である。
「味方の数は六万人です。それでも無理ですか?」
営業担当者のいう事に俺は首を傾げた。
何それ? この街の人口がそれくらいだった気がするけど。
「自警団の中にサボナという老人がいまして、村人たちを説得してしまっているようです」
あのじいさん。こんなとこにまで来ていたのか。
「あの村を守ったロドムエーリッヒが味方につくって話になっています。もう引き返せません」
無理無理。敵は全勢力で来ているんだぞ。村人が何人集まっても。
「それが。新聞を作っているのは、サボナも同じようで。ここで逃げたら、事実を他の村々に伝えると言っています」
「それはいかん」
俺はあのフェリエの新聞でヒーローになっている。
ここで街を見捨てて逃げ出したとなれば、フェリエの作った新聞で得た、俺のイメージが崩れるかも。
これではあんなに苦労して手に入れた民衆の支持もゆらぎかねない。とことんまでじゃましてくれるな。あのじいさん。
「顔を見せに行きます。どうにかしてこの街から人を逃がすんだ」
俺の意見に営業担当も胸をなでおろした感じだ。
これから戦争よりも厄介な戦いになるだろう。
そう考えると、俺は緊張をして自警団達の基地に向かっていた。




